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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
カラーズコレクターと七大罪スキル
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全身コーデを任せて頂戴!!

わらわらと起き上がってくるネックレスアンデッド。

浄化魔法を放とうにも、豚マスクにMPプレゼントするようなものだから、魔法が使えない。

さっきみたいに浄化魔法の効果対象を『ネックレス着けたアンデッドを対象に浄化』みたいに限定して発動しようにも、余波が豚マスクに行きそうだよなぁ。


とか考えていたら、ネックレスアンデッド達が一斉に魔法を発動。

それも何故か矛先が全て私。なんでよ!!

アリスちゃんが狙われるより、全然良いけどさっ!!


ネックレスアンデッド達の魔法攻撃を避けて、立体機動スキルで壁面を駆け登る。

その私を追いかけるように、攻撃魔法が次々と壁面に着弾し弾ける。

炸裂する攻撃魔法に潜んで、接近してくる長身豚マスク男と交戦しながら、地下空間を駆け回る。

駆け回るっていうか、ほぼ空中戦。


交戦している間も、ネックレスアンデッドの放つ魔法攻撃が降り注ぎ、長身男にも当たっているが、奴はものともしない。

豚マスクが、味方への誤爆(フレンドリ ファイア)を有利に働かせているようだ。

本当にあのアイテムは厄介っ!!


私を執拗に攻撃してくる豚マスクは、長身の男が一人。

ん? 他の四人の豚マスクは何をしているんだ? アリスちゃんが相手しているのだろうか?

長身男が強くて、視線を外すと命取りになるから、アリスちゃんの方が確認出来ないのだけど、無事だろうか?


「アリスちゃんっ!! 無事?!」


長身豚マスク男から目を放さないまま、アリスちゃんへ声をかける。

すると、さっきと違い落ち着きを取り戻した様子の、アリスちゃんの穏やかな声が返ってきた。


「はぁいベラちゃん。なんとか無事ですわぁ。さて・・・ですとろーーい!!」


アリスちゃんの掛け声とともに、下から爆音が炸裂する。

どうやら、私への攻撃に夢中になっていたアンデッドの足下に、『爆華野』を滑り込ませ爆破したようだ。

それと同時に、私に降り注いでいた攻撃魔法が減る。どうやらアンデッド組が脱落した模様。


多分、今のアリスちゃんの攻撃で残っているのは、手練れの長身男を含めた、五人の豚マスクを被った人達だろう。

向こうからの魔法攻撃は効くけど、こちらからの魔法攻撃は効かない上に、MPをとられる状況。

だからもう、アリスちゃんは爆撃魔法を攻撃に使えない。


ピンチ・・・・なんだろうなぁ。普通なら。


だけど、私達にはコレがあるのよね。


「アリスちゃんっ!! パス!!」


【クローゼット】から取り出したアイテムを、アリスちゃんに投げる。

魔法攻撃が駄目なら、物理攻撃。


アイテムをキャッチしたアリスちゃんが、歓喜の声を上げる。


「ふわぁ!! ベラちゃんっ!! もうコレを使っても良いんですかぁ! 嬉しいですぅ!!」


取り出したるは、お懐かしの爆撃アイテム『爆撃弾』。

しかしコレは、ワームを倒した時の物とは違い、ウルシュ君が創り手を加えた物です。

私達は事前に、敵が豚マスクを所持していることも、その効果も知っているんだよ。対策しない訳がない。

ウルシュ君いわく、勝敗を分けるのは、どれだけ敵の情報を持っているのかと、どれだけ準備が出来ているか、だからね。


従来の爆撃アイテムは、爆撃魔法を付与されていた『マジックアイテム』でございました。

豚マスクには、ソレじゃ効かない。

だから新たにウルシュ君が創ったのは・・・

今までマジックアイテムが主流で、この世界では創られていなかった科学兵器・・・いえ、魔法を使っていないタイプの爆撃アイテムです。はい。

ぶっちゃけ、マジックアイテムよりコストが高いにもかかわらず、威力はマジックアイテムとほぼ変わらないか、僅かに低い残念な代物。

だけどコレは今回の戦いには必須なので、ウルシュ君が沢山創ってくれました。

しかも、この作戦のため直前に


「ですとろーーい☆」


アリスちゃんが、さっそく爆撃アイテムを地下空間に、全部ぶちまけた。


それはそれは、とても幸せそうな満面の笑みでぶちまけた。

ぶちまけた物が爆撃アイテムでなければ、とても微笑ましく素敵な光景だっただろう。

その素敵に爆撃アイテムをぶちまける姿は、私にはスローモーションのように見えた。


―――ってアリスちゃん、まだ許可も合図出してないよっ?!


私は、長身豚マスク男の攻撃を慌ててかわすと、急いで身をひるがえし、アリスちゃんに体当たりをするように回収。

アリスちゃんを、お姫様抱っこしたまま地下空間から飛び出し、地下通路へと転がり込んだ。

と、同時にウルシュ君が防御壁で地下空間の出入り口をふさぐ。


その直後、ぶちまけられ宙を舞っていた爆撃アイテムが地面に着地。

着地した衝撃で、次々と爆発する科学兵・・・爆撃アイテム。

防御壁越しに、轟音と空気を揺さぶる衝撃が届く。


そして、先ほどはアリスちゃんのせいで語りそびれたが、あの爆撃アイテムには今回の作戦のため、直前に閃光が放たれる効果を追加していた。


防御壁を挟んで、地下空間側から溢れだす閃光を背に、私達三人は出口に向かって通路を駆け抜ける。

駆け抜けながら、アリスちゃんが高らかに言い放つ。


「ですとろーーい!!」


実はさっき、アリスちゃんがアイテムをぶちまけた時の『ですとろーーい☆』の掛け声は、爆撃魔法の魔法陣を展開させる為の掛け声だ。

そして今の掛け声は、爆撃アイテムの閃光に紛れ込ませた、地下空間の天井部分に展開した、金色に光る魔法陣を発動させる為のもの。


アリスちゃんの合図で魔法陣が作動し、私達が走っている地下通路まで激しい振動が襲う。

多分今頃、地下空間の天井部分が崩落し、地上では廃工場が地盤沈下で崩れているだろう。


ほら、言ったでしょ?

爆撃魔法を使用して天井を崩落させたら、それは魔法攻撃じゃなくて、物理攻撃だって。

豚マスクがMPを溜め込んでいるから、かなり強力な身体強化の魔法や、防御魔法が使えるはず。

だから爆撃アイテムだけじゃ、倒せるか不安だったのよね。

だから科学兵器と崩落してくる天井の二段構えで、倒せなくてもせめて溜め込んでいるMPの枯渇、もしくは豚マスクの破壊が出きれば良いなぁ・・・と。

豚マスクって頭のてっぺんに魔核が在るらしいからね。

落ちてきた天井が魔核にクリティカルヒットしてくれたら嬉しい。


いやぁ、ここの地下空間の真上が住宅地とかじゃなくて、廃工場で良かった・・・

住宅地だったところで、地下で繰り返し行われていた呪術から来る淀んだ瘴気によって、上の工場みたいに訳アリ物件と化して、廃墟になっていたかも知れないけど・・・


長い地下通路を駆け抜けながら、爆撃アイテム(コレはマジックアイテム)を撒いていたアリスちゃんが、進行方向を見ながら声を上げる。


「ベラちゃん!! もうすぐ出口ですわぁ」


地下通路の出口には、囚われていた人達と先に脱出していたクリス様が、明かりを持ち、手を振りながら立っていた。


クリス様は、私達が侵入する際に舞い上がっていた土煙と、アリスちゃんの『浮遊爆華』から放出され炸裂する『爆華弾』によって視界が悪くなっている間に、囚われていた五人のうちギースとブライアンを叩き起こし、『光学迷彩』を使いながら、他に囚われていた三人を連れて、地下空間から先に脱出していたのだ。


ようやく地上に帰りつき、クリス様と合流すると、アリスちゃんは笑顔で爆撃アイテムのスイッチを入れる。


「うふふぅ・・・ですとろーい」


大きな地響きをたてながら、地下通路は崩れ落ち、完全に封鎖された。

それを確認すると、私はクリス様に向き直る。


「さて・・・クリス様。豚マスクの人達は、どうなっているでしょうか? 確認できますか?」


「・・・・ボクが今、読心出来るのは・・・・二人。・・・でも三人分の鼓動が聞こえるから・・・・三人生きてる・・・・し、地上に向かって上がって来ている・・・・みたい」


二人脱落したみたいだけど、粗悪品の『反魂の首飾り』を持っていたかも知れない。

アンデッド化していたら、鼓動が無く、クリス様レーダーに引っかからないだろうから、油断は禁物。


「ふえぇ・・・さっきの爆発じゃ、仕留めきれなかったんですの? 残念ですぅ」


アリスちゃんは不服そうに言うが、もし豚マスクの魔核を破壊出来ていれば成功だ。上出来だろう。


「逃げられると面倒だからぁ・・・直ぐに廃工場が在った場所に向かって、地上に出て来る彼らを迎え撃つよぉ。準備はいい? 補助アイテムの交換が必要な物とか無いか、直ぐに確認してねぇ?」


ウルシュ君の言葉に、私達はそれぞれ装備品の確認をし、交換が必要そうな物は新しいものと交換する。


そう言えば、私とアリスちゃんの着ているドレスがボロボロだな。

私は囮捜査の為、平民だけど裕福そうなお嬢さん風の、動きやすいドレスを着ているけど、アリスちゃんは王宮で第二王子であるクリス様とお茶会をしていたので、高級かつ若干動きづらそうなドレスだ。

どちらのドレスも度重なる戦闘行為と爆撃の所為で、ビリビリに破れて、ゾンビプリンセスのコスプレみたいになっているけど。


でも着替えとか持って来てないしなぁ・・・・ん? 着替え?


有るじゃん、着替えなら【クローゼット】の中に、ゲームガチャのノーマル品のドレスが沢山。

その中の戦闘向きな、動きやすいデザインのドレスを選べば良くないか?


「アリスちゃん、流石にドレスがボロボロだし、今から地下空間よりも広い地上での戦闘に成るから、動きやすい服に着替えない?」


「でもベラちゃん。私、着替えを持って来ていませんわぁ」


「大丈夫よ、私が持っているから。うふふ、だから全身コーデを任せて頂戴!!」



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