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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
カラーズコレクターと七大罪スキル
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でも、凄く広い場所だったよ。

「手がかりと言われても、これといって思い付かないんだけど・・・」


知っている事があれば、すでに伝えているはずなんだけど、とウルシュ君を見つめると、笑顔をかえされる。


「イザベラが手がかりだと思って無いだけかもしれないでしょ? ほら、あの豚マスクがヒルソン子爵へ繋がる手がかりに成ったように、何気ない事が重要な情報かもしれないよぉ」


成る程。私が知っているゲームの情報と、ウルシュ君が知っている、この街の情報を合わせる事によって、手がかりに繋がる情報に変わると。


でも、どの情報が手がかりに変わるんだろう?


考え込んでいると、クリス様が周囲をキョロキョロと見渡して提案する。


「・・・・話の続き・・・トレヴァーのいる馬車で・・・しよう。・・・周りバタバタしてる・・・し、アンデッドが来るから」


言われて周囲を見ると、残って私達の会話を一緒に聞きながら、騒ぎを引き起こした豚マスクの人物について話あっている騎士と、新たに寄ってきたアンデッドを倒している冒険者達で、ざわざわしていた。

クリス様と面識のある騎士さんに一言声をかけ、お兄様がネックレスを調べている馬車へと向かう。


馬車の扉をウルシュ君が開くと、中に居たトレヴァー兄様が振り返る。


「あぁ・・・ウルシュ君、こっちに追いついたん・・・イザベラっ!!」


ウルシュ君に話しかけながら、こちらに視線を向けたトレヴァー兄様は、私の姿に気が付くと転がる様にして馬車から降りて来た。


「イザベラ・・・無事だったんだね? お前はダイモンに鍛えられていたから、きっと大丈夫だろうという思いも有ったんだけど、それでもやっぱり誘拐されたと聞いて心配で仕方が無かったんだよ・・・良かった、無事で本当に良かった」


そう言ってトレヴァー兄様は私を抱きしめた。


「お兄様、心配させてしまって申し訳ありません。この通り、私は無事ですわ」


そう言ってお兄様の背中を、ポンポンと叩いてお兄様が落ち着くのを待つ。

しばらくして落ち着きを取り戻したお兄様は、私の肩に手を置いて気まずそうに口を開いた。


「その・・・私の婚約者のルーシーが、・・・お前に危害を加えたようで申し訳ない。悪かった。私の方から謝罪させてくれ。・・・・ところで今、ルーシーはどこに?」


「ルーシーでしたら、私が放った雷魔法に巻き込まれて、重傷を負っていますわ。今は駆けつけた騎士団に囚われていると思います。命は無事ですから安心して下さいませ」


私の話を聞いたトレヴァー兄様は、オロオロと視線を彷徨わせた後、ガックリと項垂れた。


「そうか・・・とりあえず、今のこの街の状況を考えると、騎士団に囚われている方が安全かも知れないな。この騒ぎが起こった時に街中に居なかった証拠にもなるし・・・彼女との話し合いは騒ぎが片付いてからにしよう」


そう言ってため息をついたトレヴァー兄様は、ゆっくりと立ち上がり、フラフラと馬車の中に戻って行く。

その後ろを私達もついて馬車に乗り込むと、扉を閉めた。


しばらく沈黙していた馬車内だったが、トレヴァー兄様がネックレスの入ったトレーを取り出して膝に置くと、自分はこのネックレスの解析を急いで進めないといけないから、君達は君達のする事をしていて良いと言うと、ネックレスを前に自分の思考の海に潜ってしまったので、アリスちゃんとクリス様は武器の手入れと、二人で戦う時の戦術や合図について相談を始めた。

私とウルシュ君は先程の話に戻る事にする。


とりあえず、私は一体何を思い出せば良いのか分からずに、ウルシュ君に指示を求めた。


「ウルシュ君。具体的にどんな所を思い出したら良いかな?」


「まずは、誘拐の実行犯や、カラーズコレクターが登場する前後のシーンかなぁ」


そう言われて、必死に関係のありそうなシーンを記憶の奥底から引っ張り出す。

ギースやマリエタが誘拐されそうになって撃退するイベントって、けっこう多いのよね。

思い出せるだけのシーンを語っていったなか、一つだけウルシュ君が食いついたシーンが有った。

Ver3のギースルートの終盤。カラーズコレクターとの最終決戦イベントへと進むシーンだ。


主人公ヒロインのマリエタがギースと約束していたお弁当を作るために、いつもより早く起きるの・・・・」


朝早く起きて、手のこもったお弁当を作り終わった所で、いつも家を出る時間より、少し早く用意が済んでしまう。

そこで、このギースルート最後の分岐点とも呼べる、選択肢が現れる。


・少し時間が余ったから、家を出る時間までお茶にしよう

・楽しみで待ちきれないから、いつもより早いけど家を出よう

・早起きして眠たいから、時間まで少しうたた寝をしよう


ちなみに正解は、いつもより早く家を出て、誘拐される事だ。

家を出る時間までお茶をすると、ギースの方が誘拐されて死亡のバットエンド。

うたた寝を選ぶと、昼過ぎまで寝過ごして約束を守れず、好感度が下がるしイベントも起きない為、攻略失敗だ。

それまでどれだけ苦労して好感度を上げていても、最後の最後ですべてひっくり返される選択肢だ。

けっこう簡単な選択肢だから、失敗する人は少ないんだけど。


誘拐犯から気絶させられ、意識を失っていたマリエタだったが、抱えられて運ばれる中、一瞬意識を取り戻す。

暗くて自分を担いでいる犯人の姿もはっきり見えない中、マリエタが身に付けていた髪飾りが通路に落ちてしまう。

ギースが身を守る魔法をかけてプレゼントしてくれた、大切な髪飾りだ。

落ちてしまった大切な髪飾りに向かって手を伸ばすが、意識を僅かに取り戻しただけの身体は、こわばり身動きが取れず、運ばれて行くマリエタの手に髪飾りは届かない。

真っ直ぐ伸びる暗い通路の先で、遠くなって行く髪飾りの光を見つめながら、再びマリエタは意識を失う。

意識を失う瞬間に、『ギース・・・』と呟きながら。


その呟きが聞こえたかの様に、学院へと向かう為馬車に乗り込もうとしていたギースは『マリエタ?』と言いながら振り返る。


嫌な予感に襲われたギースは、学校に行く途中でマリエタの家に寄るが、マリエタは既に家を出ている事を知る。

それなら学校でマリエタに会おうとするが、彼女はまだ来ていない。

寄り道でもしているのかと、マリエタが来るのを待つが彼女は中々現れず、焦燥感に襲われているギースに気付いた他の攻略対象に声をかけられ、事情を知った攻略対象達と協力し合ってマリエタを探す。


このゲームは、他の攻略対象との好感度も攻略に反映する為、攻略対象全員と一定の好感度を上げていなくてはいけない。

このイベントでは、好感度の高い五人の攻略対象が、協力してくれる事に成り、そのままカラーズコレクター戦での戦力となる。

この『攻略キャラ全員と一定の好感度を上げないといけない』というシステムの結果、イザベラがライバルキャラでも無いブライアンルートでも、Ver1の終盤でイザベラが断罪される事になるんだけど・・・。


「最終的に、マリエタが落とした髪飾りの魔力を辿って、連れ去られたルートを見つけるの」


「ふ~ん。成るほどねぇ。ちなみにヒロインが見つかるのは何時ごろ?」


「え~ 時間までは分からないよ」


「あー・・・そうだよねぇ。都合よく時間が分かったりしないかぁ。じゃあ、日が高いとか夜になっていたとかは?」


う~ん。マリエタが見つかった時に、日が高かったかどうか・・・・


「多分なんだけど、マリエタ発見時はまだ日が高かったんじゃないかなぁ? カラーズコレクターを倒して救出された後、夕焼けに赤く染まる町の中、ギースと二人で座って『遅くなっちゃったけど』って言ってお弁当を取り出して約束通り食べるシーンが有るから」


「『多分』って言う事は、カラーズコレクターと戦っている場所は外の様子が見えない所? 屋外だったら昼間かどうかは分かるよねぇ?」


ウルシュ君の指摘通り、カラーズコレクターとの最終決戦は屋外では無い。屋内だ。

でも、窓とか無かった気がするから、やっぱり外の時間や外の風景が分からないんだよね

場所の特定が出来る様な情報には、弱くないかな?


「う~ん。ごめんねウルシュ君。窓の無い屋内だから、やっぱり時間がいつ頃か分からないや。でも、凄く広い場所だったよ。カラーズコレクターの弾幕みたいな魔法を炸裂させる事が出来る位だし」


私がそう言って、大した情報を持ってなくてごめんと謝ると、ウルシュ君はニヤリと笑った。


「ううん。今の情報で充分だよイザベラ。ウチの商会が中々見つけられなかった王都内の奴らのアジトが、今ようやくどこに在るのかが分かったよぉ」



もうすぐカラーズコレクター編が終わります。

その後は、時間が飛んで学院編へと話が飛ぶ予定です。



(あくまで予定)コソッ

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