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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
カラーズコレクターと七大罪スキル
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女神と思われちゃうかな?

「それでブライアンが、騎士の人に僕の付き添いを頼んじゃったから、彼等と一緒にイザベラの所まで来たんだぁ」


馬車を走らせるウルシュ君の隣に座ると、ウルシュ君の方では何が起きていたのかを教えて貰えた。

とりあえず、トレヴァーお兄様が巻き込まれた事は、よく分かった。


普段なかなか屋敷に帰ってこず、顔を会わせる機会が少ないトレヴァーお兄様だったけど、会えた時はとても甘やかしてくれる優しい人だ。いつも何故か疲れきっているけど。

どちらかと言えば、文官タイプで戦闘力のないトレヴァーお兄様に、アリスちゃん達のストッパー役は荷が重いかもしれない。

早く駆けつけないと、トレヴァーお兄様が倒れるな。


「ところでウルシュ君。深夜にも関わらず、ココから見える街の方がかなり明るいんだけど・・・街、燃えてないよね?」


「うーーん。燃えてる明るさじゃないよねぇ。焦げ臭くもないしぃ。」


灯りの元を探ろうと、御者台に立つと千里眼(元傲慢)を使って街の様子を見る。


「ウルシュ君。街の上空に鬼ごっこの時に見た、スネイブル商会の円盤型照明が浮いてるんだけど、今回もウルシュ君ところの商会が協力してるの?」


「うん? 打ち上げ式の野外放電灯の事? 商会が協力するなんて話は聞いてないなぁ。あの照明は騎士団がいくつか購入してくれたからぁ、それじゃない?」


成る程、騎士団が野外放電灯を打ち上げたのか。


いや、なんで?


もしかして、今度はアリスちゃんチームVS騎士団チームで、鬼ごっこでもしてるのか?

だったら騎士団には、是非ともトレヴァーお兄様を捕獲、保護して頂きたい。

うっかりトレヴァーお兄様がアリスちゃんの爆撃魔法に巻き込まれたら、必ず死ぬから。


そんな事を呑気に考えながら、街に近付いて行くが、徐々に街の様子がおかしい事に気が付く。

軍馬で走り回りながら、住民に向かって大きな声で指示を飛ばす騎士団。

完全武装で班ごとに分かれ、走り回る騎士隊に魔術師、そして冒険者。

2階の窓から、心配そうに外を見ている住民達。

街の至るところで、魔法が発動する音が聞こえ、騎士や冒険者が武器を振るい戦っている様子が見える。


そんな彼等が戦っているのは・・・


『建物から出ないで下さい!! 建物から出ないで下さい!! 2階以上の建物に住んでいる住民の方は出来るだけ上の階へと上がり、部屋の入り口をしっかりと閉め、出来れば家具などで扉を塞いでくださいっ!! 』


『平屋に住んでいる、もしくは一階から移動できない住民の方は、部屋の入り口をしっかりと閉め、扉と窓を家具などで塞ぎ、窓から離れて下さい!!』


『外に出ている住民の方は、ただちに建物内へと避難するか、放電灯の光の下にて待機してください!! 神官スキルをお持ちの方でアンデッド系の魔物の討伐経験のある方は、巡回中の憲兵の荷馬車が通った際に名乗り出て馬車に乗るか、王都の大広場に集まって下さい!!』


『アンデッドに噛まれた、もしくは引っかかれた方や、そう言った人を見かけた方は迅速に巡回中の衛兵にお知らせ下さい!! 治療、浄化できる者をすぐに駆け付けさせます!!』


何故か、王都内に大発生しているアンデッド。

スケルトン系じゃ無くて、ゾンビ系。

それらと戦う騎士団や、魔術師、冒険者達。

この世界、いつの間に乙女ゲームから、生物災害バイオハザード系ゲームの世界に変わったんだ?


呆然と御者台に立って大騒ぎの街中を見ていると、ウルシュ君に引っ張られ御者台に腰を下ろす。


「イザベラ、ちょっと馬車のスピードを上げるよぉ」


そう言うと、ウルシュ君は馬車をとばして、ゾンビをはねとばした。


凄いよウルシュ君!! 一切の迷いも無くゾンビに向かって馬を走らせてるよっ!!

馬車のスピードを落とすどころか、ぐんぐんスピード上げて、ゾンビと戦っている人達まで逃げまどっているよ!!

いや、待ってっ!! ちょっと待って!!

私、全然展開について行けて無いっ!!


「う、ウルシュ君!! ウルシュ君!! 何でこの短時間の間に、街なかにアンデッドが発生してるのっ?!」


「分かんないっ!!」


なんてこったい!! ウルシュ君にも分からないって、本当にどうしてこうなったっ!!


「これ、アリスちゃん達は」


「アンデッドの発生には、アリス様達は関係無いと思うよぉ?」


「いや、原因がアリスちゃん達に有るなんて、私も思って無いよ?! そうじゃ無くてアリスちゃん達は無事かな?」


アリスちゃん達は年齢の割に実力あるし、ちょっとやそっとでは負けない気がするけど、私と同じで経験が足りない。

ウッカリ何かミスして、大怪我とかしたら・・・・


「僕はむしろ、アリス様がゾンビもろとも王都を爆破しないか心配だなぁ」


ウルシュ君の言葉に、アリスちゃんの『爆撃狂ボマー』という称号を思い出した。

あぁ、ゾンビに向かって思う存分、爆撃魔法を炸裂させるアリスちゃんの姿が目に浮かぶ。


「あ、うん。そっちの心配の方が深刻かもしれないね・・・」


トレヴァー兄様とクリス様、爆発に巻き込まれて無ければいいけど・・・・

今回は『反魂の首飾り』をクリス様に渡してないので、アリスちゃんが欲望のまま爆撃して、うっかりクリス様を爆死させると、クリス様は死ぬ。

いや、爆死したら死ぬのは当然なんだけど、って言うか爆死した時点で死んでいるんだけど、ってなんか意味分かんなくなって来た。ああああああ。


「実は僕ねぇ、さっきから遠くで爆撃魔法らしき音が聞こえてくるのが、気になってしょうがないんだよねぇ・・・」


ウルシュ君に言われて、我に返る。

耳を澄ましてみると、怒号や色々な所から聞こえる攻撃魔法の発動音に紛れて、少し抑えたような爆発音が遠くから聞こえる。


「多分これ、アリスちゃんの地雷型爆撃魔法の『爆華野』だ。アリスちゃん、今のところ控えめに爆撃してる!!」


凄い!! コレが王妃様の教育の賜物なのだろうか?

アリスちゃんが広範囲に、むやみやたらに爆破して無いっ!! 


「とりあえず、爆撃音のする方向に馬車を走らせるからぁ、イザベラは道すがら浄化魔法をかけて行ってくれるかなぁ?」


「あ、そうだね!! ボケっとしてた。私聖属性魔法と神官スキル持っているから、浄化が出来るんだった」


攻撃魔法は威力がヤバくて使えたもんじゃないけど、治癒魔法と浄化魔法は威力がヤバくても問題になる事は無いだろう。


王都の外壁内を全部浄化しても良い位じゃないかな?

いや、一応ウルシュ君に確認しよう。


「ウルシュ君。王都の外壁内を全部、一気に浄化しても大丈夫?」


「それしたら、イザベラは女神か何かとして崇められてぇ、商人の身分しかない僕のお嫁さんには成れなくなるけどぉ・・・それ、僕は嫌だなぁ。浄化、やっぱりしなくて良いよぉ」


よし!! 外壁内全域の浄化は、やめよう。

私は女神にも正義の味方にも成りたくはない。

私はウルシュ君の嫁に成りたい。

騎士団や冒険者の皆様も居る事だし、私が自分の人生縛ってまで出しゃばる必要は無いだろう。うん。

私は聖人じゃないから、自分の幸せを追い求めさせてもらうよ。


「ウルシュ君。私、程々に浄化できるように、全身全霊を持って威力を落とすよ・・・」


「・・・・うん。全身全霊のかけ方が普通と逆だけどぉ、それでお願い。」


それから私は、前世含めて過去にない位の集中力を発揮し、限界まで浄化威力と範囲を抑え込んで発動した。

おぉっ!! やれば出来るじゃない、私!!

ほらっ!! 浄化魔法の効果範囲が、直径30メートル位に抑えられてる!!


──ってまだ、広いわっ!!


「イザベラ・・・・範囲を落とすのも大事だけどぉ、威力も落とそう? 浄化魔法の光が触れた瞬間に、アンデッドが塵も残らず一瞬で消失しているせいで、消滅したのか瞬間移動したのか皆判断に困ってるよぉ」


そう、ウルシュ君が指摘するように、何とか効果範囲は狭く(?)出来ているんだけど、威力がまだ強いようで・・・

アンデッドが浄化の光に触れた瞬間、パッと消える。

転移したのか? 瞬間移動したのか? って言う感じで、本当に塵も残さずパッと消える。

そのアンデッドと戦っていた騎士や冒険者が、「えっ?!」って一瞬動きを止めて二度見するくらいにパッと消える。

仰々(ぎょうぎょう)しく断末魔の叫びを上げながら燃えつきるか、灰に成り崩れ落ちるかしたら分かりやすいんだけど、残念!! パッと消える。


なんだこれ・・・。

いまいちアンデッドを倒している感が無くて、モヤモヤ感が残るんだけど・・・・


「ウルシュ君、私・・・女神と思われちゃうかな?」


「う~ん。奇跡の御業みわざと言うより、謎の現象っぽくなってるからぁ・・・大丈夫じゃない? あ、爆撃音がそろそろ近いよぉ?」


ウルシュ君に言われて、浄化を止め前方を見ると、懐かしいアリスちゃんの爆撃魔法の輝きが見えた。


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