これ、本当なの?
本日2回目更新。読む順番にお気を付け下さい。
最近、カラーズコレクター以外の別件でも、王都内は騒がしくなっているそうで、移動は馬車でするようお父様から強く言い聞かされていた為、素直に馬車でウルシュ君の作業場へと向かう。
もちろん、ヒロインのマリエタが住んで居ると言われている、集合住宅の前を通過する道順だ。
馬車の窓から、集合住宅やその周辺を見回すけど、それらしき女の子は見当たらない。
まぁ、近くを通ったからと言って都合よく、ヒロインの姿を確認できるとは限らないよね。
作業場に到着すると、ウルシュ君は私が来るのを見越して、お茶とお菓子の準備をしてくれていた。
実際に準備したのは、ポールさんらしいけど。
ポールさん曰く、ウルシュ君はお茶をビーカーで用意していたので、慌ててポールさんが入れ直したと。
「でも、本当にイザベラお嬢様が来るとは驚きですよ。私が今手紙を届けて来たばかりなのに、ウルシュ坊ちゃんは、”もうすぐイザベラが来ると思う”なんて言うもんだから・・・半信半疑でお茶の準備をしたんですが・・・・まぁ・・・本当に来ましたね。」
ポールさんは苦笑いをして、ウルシュ君の方を見る。
見られているウルシュ君は、しれっとした顔で
「イザベラなら、あの報告書を読んだらジッとしてないと思ったんだぁ。」
と、指摘した。
そうか、ウルシュ君には私の行動が全てお見通しなのか。
そんなに単純なのかな、私。
ちょっとへこむわー。
ここからは私とウルシュ君の『秘密会議』と言う事で、ポールさんには席を外してもらう。
「さて、僕の希望を先に言うとイザベラには出来れば、ヒロインことマリエタ嬢には接触しないでもらいたいんだぁ。」
「なるほど。理由を聞いても良い?」
「現時点では、マリエタ嬢は『転生者では無い』コレは確実。でもイザベラみたいに、ある日突然、前世の記憶が戻って来ないとは限らないよねぇ。」
それは分かる。
前世で読んだ転生物でも、学院に入学する直前に記憶を思い出す展開が多かったからね。
「でも、私が転生しているのは、ちゃんとした原因が有るからよね?じゃあ、ヒロインがこれから転生者に成るとして、原因は何?」
「さぁ?『転生者』とは限らず、何か他の『別物』の可能性も有るんだよねぇ・・・」
何か他の『別物』って何かしら・・・得体が知れない分、転生者よりも怖いんだけど。
「だってねぇ・・・あの男がイザベラを狙って前世に干渉したから、それが原因でイザベラの情報が出て来るゲームが有るのはまだ良いよぉ?でも、何で主役がマリエタ嬢なんだろう?って思ってねぇ。」
確かに。しかも私は、Ver1でサッサと退場するにもかかわらず、物語自体はVer3まで続いている。
マリエタ嬢を主役に。
「イザベラが前世で見たって言うゲーム。よくよく考えると、複雑にいろんな要素が組み合わさっているんじゃないかなぁ?って思い始めたんだぁ。その男の干渉だけでは無くねぇ。」
何それ、コワイ。
現時点で複雑で良く分かんないっていうのに、余計に複雑に成ってきてる。
「別の要因って、具体的に何?」
「流石にそこまでは分からないよぉ。何のヒントも無いからねぇ。イザベラに関しては、情報が届いていたから分かったけどぉ、ソレが無かったら全然分かんなかっただろうし。」
そうか、ウルシュ君でも分かんないのか。
”ウルシュ君でも分からない”っていうのが、余計に得体がしれなくて怖いよ。
乙女ゲームシナリオをそこまで気にしなくて大丈夫って、さっきまで思っていたけど、実は逆に警戒を強化しないといけない感じかな?
「そこで、僕が考えているのがねぇ。ヒルソン子爵令嬢達に、ディアナ王国に行って貰おうと思って。」
なるほどねー。ヒルソン子爵令嬢達にディアナ王国に行ってもらうのかー。
「・・・・いや、なんで?」
ウルシュ君。話の流れが全然分からないよ。
今のは絶対、私じゃなくても分かんないと思う。
「まず、子爵家なんだけど、前子爵の浪費癖でお金がなくて、今の奥さんの実家から援助して貰いながらやりくりしてるんだけどねぇ・・・」
「その、援助を受けている立場の子爵が、ヒロインの母親に援助している・・と。私が奥さんなら、子爵を灰皿で殴るな。それもガラス製の重いやつで。」
いくら政略婚といっても、奥さんの実家から援助して貰いながら、愛人養うって子爵さいてー。
「イザベラなら灰皿使わなくても、素手でオーバーキルだよねぇ。まぁ、僕はイザベラ以外に興味持てないから、そもそも浮気しないけどぉ。」
私ウルシュ君が相手なら、灰皿どころか、平手打ちすら出来ないかもしれないけど、黙っとこう。
「で、話を戻すけど子爵の奥さんは、それに対して怒るような性格じゃないんだぁ。」
「ん?怒って無いの?私はてっきり奥さんが怒り狂って、令嬢達と一緒にヒロインと母親を苛めてると思ったんだけど・・・」
「どちらかと言うと、子爵婦人は気弱で泣き暮らすタイプらしんだよねぇ。ショックで、もうずっと臥せっているらしいよぉ。それで子爵家の令嬢達は、ヒロイン親子が居なくなれば、母親が元の元気な母親に戻るって思っているみたいだねぇ。実際はそんな簡単な話じゃないんだけど。まぁ子供の考える事だからねぇ。」
ウルシュ君、君も子供だよっ!!
子爵令嬢の姉の方は、私達より一つ年上だよっ!!
「でも、それを聞いちゃうと、虐めを行っている子爵令嬢達を一方的に責めるのは良くないわね。彼女達は自分の母親の心を守ろうと考えて、実行している訳でしょ?」
人の数だけ正義が有るって言う様に、彼女達は彼女達の正義の為に行動しているのだ。方法は決して褒められたものじゃないけど。
「そうだねぇ。そして、ヒロインもそれが分かっているから、黙って虐めに耐えているみたいだねぇ。」
そうなのか、ヒロイン・・・・。
どうしたら良いんだ、コレは・・・。
誰を責めたら良いんだ・・・まぁ、子爵はギルティだけど。
あとは、ヒロイン母がなぁ・・・この辺も事情を聞かなきゃ何ともなぁ。
平民と貴族と言う立場上、どうにも出来なかった事情が有るかも知れないし。詳しい話を聞いてみなきゃ判断出来ないわね。
「そこでねぇ、子爵夫人の実家である商家がウチの商会の傘下なんだけど、今回調べた事実を実家が知っているのか確認を取ってみたんだよねぇ。どうも子爵夫人は実家に心配かけない様に隠していたみたいで、実家はその事知らなかったらしいんだぁ。貴族と繋がりを持つために行った政略結婚だけど、”娘婿の愛人の援助までやってられるかっ!!たかだか官職の法服貴族のクセして舐め腐りおってっ!!”って、もう父親がカンカン。あっはっは~。」
ウルシュ君、何か楽しそうね。
喋りながら笑い出す姿なんて、初めて見たわ。
ウルシュ君が楽しそうで何よりです。
「それで、子爵夫人の実家って言うのが、薬草や薬の素材を扱っている老舗の問屋でねぇ。取引しているディアナ王国の薬草専門の貿易会社に、子爵夫人の幼馴染が勤めて居るらしいんだぁ。彼は子爵夫人に片思いしていたらしくてねぇ、今でも諦めきれずに独り身でいるんだってさぁ。その貿易会社に勤めているのも、いつか子爵夫人の実家に認めて貰って、子爵夫人と結ばれる機会を手に入れようと、虎視眈々と狙っていたからって訳。だから子爵夫人には離縁して貰って、その幼馴染に嫁いで行って貰おうかなって。」
なんだろう・・・。
貴族に取られてしまった幼馴染を諦めきれない、一途な男の話なのに、ウルシュ君の言い方のせいで、ヤバイ男にしか聞こえない。
多分、ウルシュ君が”虎視眈々”って言ったせいだな。
あと、子爵夫人の意見が何処にもないよ、この計画。
それにしても、ディアナ王国かぁ・・・・
お姉様がお嫁に行った国だな。
ディアナ王国はロゼリアル王国の北側に位置する隣国だ。
ロゼリアル王国が『魔術師』の育成に力を入れているとするなら、ディアナ王国が力を入れているのは『医者』や『治癒術師』『薬師』といった、医術系の人材の育成だ。
元々、薬草や薬の素材に成る物がよく取れる地で、そうした素材の輸出や、医術系の人材の派遣を主要外交にしている。
「子爵夫人と子爵令嬢が幸せに成れるのなら、それで良いんだけど・・・後はどうする予定なの?ヒロイン親子が、子爵家に入るの?」
私の疑問に、ウルシュ君はニヤリと笑う。
「子爵夫人と令嬢はそれで幸せに成るよぉ。むしろ、直ぐにヒルソン家を出ないと不幸に成るねぇ。あと、ヒロイン親子は子爵家には絶対に入らないよぉ。何故なら、これからヒロイン母が怒り狂うような事実が発覚するからねぇ。」
「え・・・なんだろう。聞くのが怖いけど・・・一応聞くね。なんで?」
ウルシュ君は椅子から立ち上がり、作業机の引き出しから何かの書類を取り出すと、私の方へ持って来る。
書類を受け取って、ウルシュ君に視線で問うと、ウルシュ君は黒い笑顔で書類を指し示した。
「答えは、ここに書いてあるよぉ。読んでみてぇ。」
ウルシュ君に言われて、報告書に目を通す。
読んでいくうちに、みるみる全身から血の気が引いて行くのが分かった。
耳の奥で、自分の鼓動が響く・・・・
「これ、本当なの?」
「何度も確認を取らせて、証拠も沢山掴んでいるよぉ。」
自信満々で答えるウルシュ君に、この報告書の内容が事実なのだと確信する。
「ギース様の誘拐事件の黒幕、カラーズコレクターの正体は、ヒルソン子爵なんだぁ。」
だからか、だからカラーズコレクターは物語の最後まで、頑なに豚の頭を脱ぐ事はせず、ヒロインに素顔を見せなかったのか。
そして倒された後も、正体が明かされずに終わるのは・・・・
主人公の実の父親だから。




