うん。大丈夫。
『クリス様に死んでもらう必要があった。』
なぜウルシュ君に、そんな必要性があったのかは分からないけど、ウルシュ君が意図的にクリス様を殺したのであろう事には、気付いていた。
でも、私にとって問題なのは、ウルシュ君は『目的』も『行うこと』も私に何も言わないで実行に移した事だ。
多分ウルシュ君の事だから、何か問題が起きたときに、私を巻き込ま無いように何も知らせず、自分だけで何とか出来るよう、何かしらの準備をしていたのだろう。
こう言っちゃうとなんだけど、クリス様は王族だけど『呪いで狂っている』とされていて幽閉される予定だったのと、連れ出す事は王妃の承諾済みだったから、そのクリス様が子供同士での訓練の事故で死んだ場合と、普通の王族が同じように死んだ場合だと、現代日本と違い、与えられる罰に若干だが違いが出る可能性がある。
私の家は権力持ちすぎだから、問題になっても命は何とか成りそうだし、アリスちゃんも侯爵令嬢。
だから『平民』のウルシュ君が『貴族の子供達を危険にさらした』として、全ての責任を背負わされて罰を受ける可能性があるし、ウルシュ君もそうさせるつもりで用意していた可能性が高い。
だから、本当に、『反魂の首飾り』が発動してくれて何事も無くて本当に良かったと思った。
目的が何なのかは知らないけど、ウルシュ君が一人で罰を受けるような結果に成らなくて良かった。
「ウルシュ君がクリス様を死なせるつもりだったのは、何となく分かっていたけど、理由は・・・”目的”は何だったの?」
「クリス様がスキルを制御出来るように成っても、根本的な解決に成らないからだよぉ。」
ウルシュ君は私の耳に当てていた手を外して姿勢を戻して前を向く。
私は小さな声でも聞こえるように、ウルシュ君の方に寄っていき、膝を抱えて引っ付く。
別に小声で話すのに、引っ付く必要は無いんだけど、ウルシュ君がどこかに行ってしまいそうな気がして触れていたいと思った。
「根本的な解決?」
聞くとウルシュ君も私にピタリと引っ付いてきて、囁くように答える。
「イザベラ、クリス様が生き返った後の『ステータス』の変化を見たでしょ?僕とクリス様は、アレが目的だったんだぁ。」
確かに私はクリス様の『ステータス』を確認した。そしてステータスのとある変化に気付いていたけど・・・”あの変化”を狙ってやったというのか?
そして、その変化を起こす方法が反魂・・・って、ちょっと待て。
今、ウルシュ君は・・・・・・。
「”クリス様”とウルシュ君の目的だったって言った?と言う事は、クリス様は・・・」
「知ってるよぉ。僕たちは利害が一致した協力者どうしだからねぇ。もしもの時の為に、記録映像のマジックアイテムで遺言も残してもらってたんだぁ。これで、失敗しても一安心。」
クリス様ぁっ!!お前もグルかよっ!!
そして、クリス様が協力者でウッカリ死んじゃった時の為に遺言残してくれていたなら安心だね・・・って、それもどうなんだっ?!
クリス様、何考えてんのっ?何か良く分かんないけど、一か八かで死んでみたって事?!『よし、目的の為に、成功するかどうか分からないけど、いっぺん死んでみよう』って事?ちょっと理解できない!!自己防衛意識みたいなのが、欠けて無いか?どんな思考回路してんの?!なんでそう成ったの?
「えっ?!ちょっ!!どういうことっ!?じゃ・・・じゃあアリスちゃんは?アリスちゃんも?」
「アマリリス嬢には、『僕は』言ってないよぉ~。だから知っているのかいないのかは分からないねぇ。予想じゃ知らないと思うけど・・・どうだろぉ?考えてみれば、ちょっとピンポイントでクリス様に当たりすぎてたかなぁ?と、いう気もしてきたかなぁ。」
えっと、ひとまずウルシュ君自身はアリスちゃんに協力を求めて無いって言う事ね。
そして、クリス様が協力を求めた可能性が有るかも知れないけど、その辺りはウルシュ君も分からないと言う事で・・・
「ウルシュ君、私はもう、何が何だか良く分からないから、順を追って説明してくれないかな?根本的解決に成らないとか、その辺りからもう良く分からないんだけど。」
「順を追って説明すると、最低でも、この国が建国された800年位前に話が戻るんだけどぉ。」
「そんな遡るっ!?なんでっ!?」
なんか話が大きく壮大になってない?
「う~ん。これはある男から聞いた話なんだけどねぇ。その男の言うことを信じるなら、クリス様が持っていた『傲慢王の耳』といった『◯◯王の◯』っていうスキルは、元となったスキルに追加で”ある物”を組み合わせて作られた、”人工スキル”なんだってぇ。そうして出来上がったスキルが『大罪王の欠片』それが出現したのが、大体1000~800年位前らしいんだけど、その”ある物”には『組み込む』というか『固定する』というか、そんな作用も含まれているんだよねぇ。その作用で”特定の血族の人間”にスキルが発現するように、その”一族”に『固定』もしくは”血”に『組み込んで』いるんじゃないかなぁ?経緯は知らないけどぉ。」
「その情報をウルシュ君に教えてくれた人は、何でそんな事を知っているの?信用できる人なの?」
そこまで詳しい事情を知っている人がいるのなら、クリス様が『傲慢王の耳』を『心の病』や『幻聴』だと思って苦しむ必要は無かったんじゃないかな。
「僕はその男、死ぬほど嫌いだから、信用する気がないんだよねぇ。でも、聞かされた内容を検証していくと今の所は本当なんだよねぇ・・・。イザベラもその男に会った事が有るよぉ。」
ウルシュ君が死ぬほど嫌いで、私も会った事がある人?誰だ?
「まぁ、その男の事は置いといてぇ・・・。その『大罪王の欠片』スキルに”一度、組み込まれた、ある物”を、後からわざわざ抽出したのが、『七大罪の魔眼』ってイザベラが呼んでいるスキルだよぉ。”元”の”ある物”じゃなくて、『大罪王の欠片』を作るために、一度組み込まれた”ある物”だからねぇ?その辺りは間違えないでねぇ。」
ん?『大罪王の欠片』スキルから、わざわざ”ある物”だけを抽出?・・・・って言う事は。
「『七大罪の魔眼』を抽出した人がどこかに居て、その人は『大罪王の欠片』スキルを持つ7人全員に接触した事が有るっていう事かな?」
「そうだねぇ。そして、その男はイザベラの前世に遡って、抽出した七つ全てをイザベラの『魂』に『組み込んだ』んだよぉ。」
は?
え?どういう事?
私の前世に遡った?
私がチート転生したのは、”イザベラの前世”である私に、来世からスキルを埋め込みに来た人が居るからって事?
「え~と・・・・。色々聞きたい事が有るんだけど・・・とりあえず・・・何故?」
「イザベラの魂がたまたま7つ全てを組み込むのに適していたかららしいよぉ?大概の人は3つが限度だってさ~。まぁ、他にも7つ組み込める魂を持つ人は探せば居るらしいんだけど、イザベラは、その男が観測するのに適していた年代で、活動範囲がその男と被っているって事で、観察するのに良い条件に当てはまっていたから実験体として選ばれた訳。」
「実験体っ?!観測っ?!ちょっと待ってっ!!そいつ誰っ?!その頭のオカシイ男は誰っ?!」
思わぬ情報に、引っ付いている状態から、更にウルシュ君に詰め寄る。
クリス様を殺した理由を聞いていたハズなのに、ガッツリ私が話に関係して来ている!!何だコレっ!!
「その男って言うのは、僕に、この話を教えた男なんだけどぉ・・・。僕はそいつに協力する気は無いっていうか、むしろソイツの邪魔する気でいるんだよねぇ・・・。多分、イザベラはこれから先、その男に会う事は無いから安心して良いよぉ。」
もう会う事ないのっ?!でも気に成るんだけどっ!!誰なの?教えてよウルシュ君っ!!
しつこく聞くがウルシュ君は全然教えてくれる気が無い、肩を掴んで揺すっても笑うばかりで全然口を割らないウルシュ君に、私は根負けして聞き出す事を最終的に諦めた。
「まぁ、僕はその男が嫌いだけど、今のイザベラと出会えた事はその男のお蔭だから、唯一その点に関しては感謝しているかなぁ。で、話の続きだけどねぇ・・・『七大罪の魔眼』を『魂』に組み込んで、『大罪王の欠片スキル』と混ぜたら、『大罪王スキル』に進化する。ただし、『七大罪の魔眼』を魂に組み込むためには、そのスキルの”レシピ”を持った状態で”一度死ぬ”必要があるんだぁ。と、言うより”レシピ”を持って死ぬ事により『七大罪の魔眼』が完成されるって言っても良いかなぁ?イザベラが前世で”レシピ”を持って死んで、今世に『七大罪の魔眼』を持って生まれ変わって来たように。それを、今回クリス様で、疑似的に同じ事をやってみたんだよぉ。”レシピ”を持たせて、一度殺して復活させる事によって。」
「なんか話が難しく成って来たんだけど・・・。でも、ウルシュ君、クリス様に渡した”レシピ”はどこで手に入れたの?」
「山小屋に来た初日かなぁ?イザベラ達がワームを殲滅している間に、眠っているクリス様から”レシピ”を抽出してみたんだぁ。あの男に出来て、僕に出来ない筈が無いからねぇ。抽出している間にクリス様が起きて来てしまったんだけどねぇ。」
あぁ、そう言えば初日の朝、ウルシュ君は私とアリスちゃんがレベル上げしている間に、クリス様に山小屋に居る理由や、『幻聴』の正体が『傲慢王の耳』スキルに有る事などを説明してくれていたんだっけ。
「で、起きて来たクリス様に現状を説明した所でぇ・・・会った事の無い大叔母が、死ぬまで塔に幽閉されていた理由が『呪い』でも『心の病』でも無かったって言う事を知ったクリス様から、泣きながら協力して欲しいって言われたんだよねぇ。」
『・・・・大叔母さんや、それより前に塔に閉じ込められていた祖先達と同じ苦しみを、・・・ボク達の孫やその子供達が感じる事が無い様に、・・・・・ここで、ボクで終わらせる協力をしてくれないかな?こんな思いをするのは、ボクまででいい。そこから先の人達はこんな苦しみは知らなくて良い。・・・君は、この力を封じられるアイテムを創れるのだから、この力そのものを消す手伝いをしてくれないかな?』
『その為に、命かけられる?』
『・・・・いくらでもかけるよ。ボクは苦しんでいる人を助ける事に決めたんだ。・・・だから自分の子孫達だって助けたいんだ。・・・・それすら出来ない男に、他の沢山の人達を救う事なんて、出来る訳無いよ・・・。』
「”根本的解決”って言うのはねぇ・・・。クリス様がスキルを制御出来たとしても、次に継承した人が制御出来るかどうか分からないでしょ?それどころか、次のスキル継承者に正しく情報が伝えられるかも分からないからねぇ。人の思考を読むなんて厄介な能力だから、スキルの存在自体を隠蔽されて、再び『呪い』だと聞かされるかもねぇ。つまり、継承されて行く『傲慢王の耳』と言うスキルの存在自体をどうにかしないと、自分の様に苦しむ子孫が居るだろうってクリス様は考えたわけだよぉ。」
そこでウルシュ君は、抽出した”レシピ”をクリス様に渡す事に決めたらしい。
後は、一度クリス様に死んで貰って、復活させる方法を探すだけ。
それが成功すれば、『傲慢王の耳』に『傲慢』が合わさる事で『傲慢王』に進化し・・・・・。
『クリス様の”魂”』にスキルが固定される。
そう、『七大罪の魔眼』が魂に組み込まれている為に、それに合わさって進化した『大罪王』も魂に組み込まれる、と。
「それで、そうする事によって『大罪王の欠片』が王家に継承されなくなるって言うのも、その男の人に聞いたの?」
「イザベラは、『強欲王の眼』が『強欲王』に成ってから、僕のステータスを鑑定した事ないよねぇ?なんで?」
え?なんだ急に?
「え~と?次の日にはウルシュ君、自分のステータスを見る事が出来る様に成っていたでしょ?それからはスキルやレベルが上がるたびに、私に教えてくれていたから見る必要が無かったのと、好きな人のステータスは、かえって見づらいっていうか・・・。度々チェックしていると、なんか婚約者の監視しているみたいで感じが悪いかなぁ?って。」
他のどうでも良い人達は見ても気に成らないんだけどね。
前世で例えると、彼氏の携帯を黙ってチェックする彼女みたいな感じで、良くないかなぁ・・・って。
ウルシュ君に気付かれて、嫌われたくないって言うのも有るし。
「じゃあ、試しに今、僕のステータスを鑑定して見てぇ?」
「え・・・あ、うん?分かった。」
ウルシュ君に言われて[強欲王]する。
ウルシュ君の作業場で、ウルシュ君に鑑定を頼まれてしてから、3週間ぶりの鑑定かな?
《ステータス》
人族:ウルシュ・スネイブル(6) Lv:35
HP:54/54
MP:590/607
身分:
ロゼリアル王国 スネイブル家 第2子
ロゼリアル王国 スネイブル商会 次男
ロゼリアル王国 錬金術師
《職業スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[錬金術師Ⅹ][鍛冶師Ⅴ][商人Ⅳ][魔術師Ⅳ]
[薬師Ⅲ][毒術師Ⅲ][呪術師Ⅲ][賢者Ⅲ]
[縫術師Ⅱ][治癒士Ⅱ][神官Ⅰ][調香師Ⅰ]
《継承特殊スキル》
※このスキルは条件を満たしたため、継承性が消失。[絶対鑑定]へ変換され《特殊スキル》へと移行しました。
《特殊スキル》
[絶対鑑定][経験値上昇][スキル取得率上昇]
《固有スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[MP消費緩和Ⅹ][魔改造Ⅹ][魔力付与Ⅹ][魔術付与Ⅹ]
[HP消費緩和Ⅷ][魔術発動妨害Ⅶ]
[魔術瞬間発動Ⅵ][並列思考Ⅵ]
[雷属性魔法Ⅴ][封印魔法Ⅲ]
[聖属性魔法Ⅱ][闇属性魔法Ⅱ][空間魔法Ⅱ]
《スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[状態異常無効]※レベル無し。
[火属性魔法Ⅵ][水属性魔法Ⅶ][風属性魔法Ⅷ][土属性魔法Ⅹ]
[光属性魔法Ⅹ][全属性耐性Ⅹ][自動回復Ⅶ]
[武器強化Ⅶ][魔力強化Ⅷ][気配察知Ⅵ][気配遮断Ⅹ]
[魔力察知Ⅵ][魔力遮断Ⅷ][品種改良Ⅷ][武器改良Ⅷ]
[応急処置Ⅸ][情報操作Ⅳ][採取Ⅷ][採掘Ⅲ][探索Ⅶ]
[解錠Ⅸ][索敵Ⅵ][追跡Ⅶ][隠密Ⅵ][感知Ⅳ][直感Ⅹ]
[隠蔽Ⅷ][偽装Ⅵ][複製Ⅸ][修正Ⅶ][収集Ⅹ][精製Ⅹ]
[調合Ⅸ][料理Ⅱ][細工Ⅷ][分解Ⅸ][解体Ⅴ][抽出Ⅲ]
《称号》
[創造者]
・・・・・・・・・・。前回の鑑定結果をメモしていないから、他がどう変わっているのか分からないけど、確実に変わっている事が分かるものが有る。
《継承特殊スキル》の[強欲王の眼]が消えて、[絶対鑑定Ⅹ]って言うのに変わっている。
「なんで?なんで『強欲王の眼』が消えてるの?」
「多分だけど、『強欲王の眼』は『強欲王の”欠片”』だからだと思うんだぁ。”欠片”を使って、完全なる『強欲王』が誕生したから、欠片はもう無いんだと思う。多分、この[絶対鑑定]っていうスキルに”ある物”を組み合わせて作られたのが『強欲王の眼』スキルだねぇ。その”ある物”がスキルを血か一族に固定していた訳だから、それが消えた事で継承性も消えたんだぁ。もう、スネイブル家に『強欲王の眼』を持つ者は生まれて来ない。便利なスキルだけど仕方が無いねぇ。」
「えっ?!それって、私がスネイブル家から『強欲王の眼』を奪っちゃったって事?!ゴメンっ!!ウルシュ君、スネイブル家の皆さんゴメンっ!!」
クリス様の『傲慢王の耳』に比べて、『強欲王の眼』は、商人であるスネイブル家にとって、かなり重要なスキルだったはずだ。
それを私が『強欲王』を手に入れる過程で、奪ってしまったのなら申し訳なさすぎるっ!!
「こうなるって知らなかったんだから、気にする事ないよぉイザベラ。むしろ僕が謝らないといけないよ。僕も方法は知らなかったけど、『強欲』が『強欲王』に進化するって言う事は知っていたんだぁ。だから僕の方が予測して無ければいけなかったんだよぉ。『強欲王の眼』を『嫉妬』する様言ったのは僕だしねぇ。でも、その結果、進化の条件が分かったんだぁ。」
なるほど、『強欲王』の進化過程と、それによる『大罪王の欠片』の消失を経験したから、それを元にクリス様の『傲慢王の耳』スキルの継承性の消去が出来たのか。
「ちなみに、イザベラは『強欲王』を手に入れてから、自分のステータスも確認しなくなったよねぇ?」
「あぁ~。『強欲王』を持った後、ゲームの仕様から外れてMPとHPがウルシュ君が見ているのと同じ見やすい物に変わったじゃない?でも、レベルが上がり切っているから、もはやあまり自分のステータスを細かくチェックする必要性も感じなくて・・・。さらに言うと、自分の”身分”の所が気持ち悪い変化してるから、あまり見たくないのも理由かな・・・。」
ゲームでも、レベルを一生懸命上げている時は、こまめにチェックしていたけど、カンストした後は全然ステータスの成長具合を見て無かったしね。
そして、それ以上に『強欲』が『強欲王』に変わった時から、私のステータスが一部、ちょっと気持ちの悪い変化をしていて、あまり見たくなかったんだよね。
なんかじっと見ていると、ゾッとする様な、精神崩壊しそうな、何か精神的に不安になる感じがするのよね~。
他のスキルはちゃんと見えていて、前より分かりやすくて助かっているけど。
しかも、その時、おかしくなったステータスを見たウルシュ君から、忠告を受けていたので、余計に大変な事かも?って少し不安でね。
『イザベラ、もし明日のお茶会で、他の『大罪王スキル』を持った人達を見つけても、絶対に『嫉妬』しちゃ駄目だよ?安全性が確認できないからねぇ?』
だから、ウルシュ君の忠告に従って、クリス様のステータスをチェックした時に、『傲慢王の耳』が『嫉妬』可能と鑑定されていたけど、手に入れる事はしなかった。
これ以上、自分のステータスが気持ち悪く成ったら怖いって言う気持ちも有ったし・・・・。
そして、私と同じ変化をしている人が居る。
ウルシュ君との計画で、無事『傲慢王の耳』を『傲慢王』に進化させる事に”成功した”クリス様だ。
「だから、イザベラは自分のステータスから、『傲慢』が消えた事に気付いてないんだねぇ。もっと確認をしておいた方が良いよぉ・・・。」
「へっ?!『傲慢』が消えてるっ?!でも、その後も私『傲慢』を使ってたよ?」
ウルシュ君の言葉に、慌てて自分のスキルチェックを行う。
《ステーたス〝〟
膩n;;く:イざベラ・アリー・ろッテンシュタイン (6)Lv26⑤
HP:67800/67805
∑P:10770/10770
身ぶん:
ロぜリアル王國 ロッってんんんシュタイン家 第■???子
ろゼリ唖;;;;;; 彊ガ‰ァぁ嬢??
《しょくぎょうすきる》*レベル最大Ⅹ
[魔術師Ⅹ][剣士Ⅹ][暗殺しゃⅩ][狩人Ⅷ]
[料理人Ⅳ][治癒士Ⅴ][神官Ⅳ]
《特殊スキル》
[クローゼット][強欲王][憤怒]
[暴食][嫉妬]
[色欲][怠惰]
[千里眼]
※レベル無し。
・・・・・以下略。
よく見ると、おかしくなってるの”身分”だけじゃないわ・・・。
あと、[傲慢]が[千里眼]に変わってる・・・・。普通に使えてていたから、気付かなかった。
「これ、『傲慢』が消えている理由って・・・。」
「『傲慢王』をクリス様が手に入れたからだろうねぇ。イザベラも気付いていただろうけど、クリス様のステータスも『傲慢王』を手に入れてから”身分”の所が狂っているよねぇ・・・種族の所もだけど・・・。イザベラが『傲慢王』を手に入れなくて良かったよぉ。そしたら、イザベラのステータスがもっと狂っていただろうからねぇ。」
ちなみに、最後に見た時の、クリス様のステータスが確かこんな感じ。
《ステータス》
邇んんん;;;:クリスとファー・ロン・ろzeりある(6) Lv:2Ⅱ
HⓅ:20/20
MⓅ:70/70
ミブン:
ロぜりアrrrr國 王家 第4死
◇ゼリあァァァァァァァァァァ ヴヶ///;/子
《職業スキル』 *レベル最大:Ⅹ
[剣士Ⅱ][魔術師Ⅳ][狙撃手Ⅴ][狩人Ⅲ][???の卵Ⅰ]
《継承特殊スキル》
※こ゚のスキルは条件を満タシタタめ、継承性ガ消失。[傲慢王]へ進化シ《特殊スキル》へと移行シマシタ。
《特殊スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[宣誓魔法Ⅰ]
[傲慢王]※レベル無し。
※[傲慢王]に対シ、《嫉妬》の発動不可能。
中略
《称号》
[黄泉返り]
「イザベラ、これから先も絶対に他の『大罪王スキル』に手を出しちゃ駄目だよぉ?今回、クリス様が『傲慢王』を引き受けてくれたから、イザベラが七つ全ての大罪王を揃えてしまう事態を防ぐ事が出来たけど、それでも複数持つ事によってイザベラの身体や体質にどんな変化が起きるか分からないからねぇ?」
「そう言えば、ウルシュ君とクリス様の”利害が一致した”って言っていたけど、もしかしてウルシュ君の目的って言うのは・・・・。」
「イザベラが大罪王の全てを手に入れない様に、『傲慢王』を他の誰かに押し付ける事だよぉ?僕の判断ミスで、イザベラに『強欲王』を渡してしまったからねぇ・・・。イザベラ、ごめんね?僕の所為でイザベラのステータスに異常が出てしまったね。コレが今現在イザベラにどう影響しているかは分からないけど、あまり良くないのは想像つくよ。ゴメンねイザベラ・・・。」
ウルシュ君は謝りながら、私をギュッと抱きしめた。
・・・・・・・・・・・・・・。
ふおぉぉぉぉぉっ?!抱きしめられてるっ?!
抱きしめられてるッスよ、奥さんっ!!私、ウルシュ君にギュって抱きしめられていますよっ!!
よっし、OK分かったっ!!
「ウルシュ君は全然悪くないけど、謝ってるし、よく分かんないけど、許そうっ!!」
謝る必要ないよって言ったところで、ウルシュ君納得しそうにないから、怒ってないんだし許しちゃえば解決よねっ!!
「イザベラ・・・ゴメンね。僕、イザベラに他にも言って無い事が有るんだ。でも、それはまだ僕の決心がつかなくて、言えそうにない。」
他にも有るのかぁ・・・。
でも、何となくだけど、その件について、ウルシュ君は直接関係ない様な気がするんだよね。
悪くないのに、自分が悪いって責任感じて謝っていると予想。これ、女の勘。多分当たる気がする。
「そっか、うん。言える様に成ったらで良いよ。ウルシュ君が言える様に成るまで待っているから。あと、その件がどんな話か分からないけど、多分、許しちゃうと思うから、思いつめなくても良いよ。」
「うん。有難うイザベラ。」
ウルシュ君は私の首のあたりに顔を埋める様にして呟く。
弱気なウルシュ君が珍しくて、そんなに思いつめる何かを持っているウルシュ君の事が心配に成る。
少しでも、ウルシュ君が落ち付ける様にと、抱きしめ返す片手を、ウルシュ君の頭に回して、後頭部を優しく撫でる。
ふかふかした髪が撫でる手に合わせて、沈んだり浮いたりしている。
しばらく黙って撫でられていたウルシュ君だったけど、落ち着いて来たのか、今言える事だけ伝えておくよと、そのままポツポツと話し始める。
「クリス様に試した、疑似的な方法で『七大罪の魔眼』を魂に植え付けられるのは、2つが限度なんだってぇ。」
「それは、ウルシュ君が嫌いだって言ってた男に聞いたの?」
顔を埋めたままのウルシュ君に、優しく静かに問いかける。
「うん。・・・その男は色々試した結果、7つ全てを魂に組み込むためには、魂が『肉体』を得る前に”レシピ”を適合者に植え付ける必要が有る事に気が付いたんだぁ。」
それで、前世まで遡って来たのか・・・・。来世の身体をまだ持たない状態で植え付けたら確実だと。
でも、何で7つ全てを一人に植え付ける必要が有ったのかな?
「イザベラに組み込んだ『七大罪』を全て、『大罪王』に進化させたら、イザベラは『七大罪の王』に成る。それはもはや人間では無いんだ。」
でしょうね。『七大罪の魔眼』だけでも人間離れしている感じなのに、それがすべて進化したら、確実に人間を辞める事に成る。
「その男はね・・・、たまたま見つけた、実験体として条件の良いイザベラを材料に、人工的に創り出そうとしたんだ。・・・・・『魔王』を。」
おい。どこのどいつだ、その男。一発ぶん殴らせろ。
人間離れどころか、魔王に成るところだったでござる。・・・まじか。
ウルシュ君・・・本当に止めてくれてありがとう。
そして、傲慢王を引き受けてくれたクリス様も有難う。
「僕、その男が大嫌いだ。僕のイザベラを実験体になんてするもんか。イザベラを『魔王』になんてしない。そんな狂った実験なんて邪魔してやる。」
ウルシュ君、私達気が合うね。私も嫌いだよ、その男。
「うん。大丈夫。私が成るのは『魔王』じゃ無くて『ウルシュ君のお嫁さん』だよ。」
悪役令嬢どころか、魔王か・・・・。
私、絶対、庶民に嫁ぎます。
そんで、ウルシュ君とのんびり行商に出るんだ。絶対。
小学生男子(低学年)って「命かける?」って、よく約束で命かけたがるよね。懐かしい。