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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
カラーズコレクターと七大罪スキル
50/145

何がしたかったの?

前話の訂正をしました。

×半径10Km

○直径10Km

子供3人の戦闘訓練に直径20Kmもいらないと思ったの。

流石に、第二王子が後宮で3週間も引きこもって、誰も姿を見ていないっていうのは、無理が有ったらしい。

ギースの誘拐騒ぎも在った事で、一度戻って無事な姿を見せる必要があるとの事。

むしろギースの誘拐騒ぎが有ったのに、3週間も山籠やまごもり出来たことが、驚きだよね。

今朝、戦闘訓練の為に平原へ向かおうと準備していると、ぞろっと近衛騎士と騎士をひきいて王妃が山小屋に現れた時には、本当にどうしようかと思ったよ。

第二王子、安全に過ごせてたとは言えないし。


第二王子が城に戻ると聞いて、戦闘訓練は取り止めようとしたのだけど、王妃が是非見学したいと言ったので、急遽きゅうきょ平原に王妃の観覧用のテントが設置された。

私は、アリスちゃんと対峙しながらチラリと横目でテントの方を伺う。

護衛に囲まれた王妃は面白がっているような表情でウルシュ君の創った防御壁を眺めていた。


「ですとろーいっ!!」


アリスちゃんの掛け声と共に、直径10kmの防御壁の内側上方に50個の、淡く薄紅色に輝く、茎の無い花が浮かぶ。

アリスちゃんの生み出した爆撃魔法の一つ、『浮遊爆華ふゆうばくか

花が開くまでに13秒。花が開くと1分間、回転しながら爆華弾を放出し続ける。

この『浮遊爆華』の爆撃自体は、そこまでの威力はないとはいえ、当たれば痛いし、土が舞い上がり視界が悪くなる。

ちなみに訓練の一環として、私だけ『視界クリアゴーグル』は着けていない。

花が開くまでの13秒の間に、どれだけの花を壊せるかで視界の確保が出来る。


「桜花五連閃光っ!!」


上空の花に向かって剣技を放つ。

今回手にしているのは、Ver2に登場する、東方から留学して来た攻略対象のイベントで出現する、アイテムガチャの『Sレア』。

日本刀によく似た『桜花風月おうかふうげつ』。ってかこれ日本刀だろ。

見る角度によって刀身とうしんに桜と風と月の模様が浮き上がる人気アイテム。私もお気に入り。

このアイテムをガチャで出すと、セットで剣技の『一閃』と『桜花五連閃光』を手に入れることが出来る。

ちなみに『桜花風月』は交換出来るけど、剣技は交換不可。

つまり、剣技が欲しければガチャぶん回して、自力で『Sレア』である『桜花風月』をゲットしなければいけない。運営、商魂たくましいな。

巨大ナイフより桜花風月の方が剣技を放つには良いので、最近はこればかり使っている。


残り時間3秒で30以上の『浮遊爆華』を叩き壊す。残りの20は放置で。

だって全然関係ない凄く遠い位置に有るんだもん。コレはアリスちゃんの悪い癖。

広範囲爆撃は良いけど、敵のいない所まで広く爆撃するのはMPの無駄撃ちだよね。

あと、私が放って置いても第二王子が練習がてら矢で打ち落とすからね。

私は痛いだけで済むけど、第二王子には当たると大怪我だから慎重になる様子。慎重なのは良いことだと思う。


「ですとろーいっ!!」


次は何だと花を見上げていた視線を戻すと、直径10kmの防御壁内側の地面”一面”に膨大ぼうだいな数の魔法陣で出来た絨毯じゅうたん

コレは『爆華野ばくかの』いわゆる地雷型の爆撃魔法だ。

この絨毯を踏むと魔法陣が爆発し、吹き飛ぶ。私は平気だけど、第二王子は大怪我です。一般人なら即死。

13秒で直径10Kmを埋め尽くすほど用意できる様に成るなんて、アリスちゃん驚きの成長したね・・・。

ただ、子供2人狙うのに10Km全部を魔法陣で埋め尽くす必要無いよねっ?!


「無駄が多いっ!!」


そうっ!!無駄が多いっ・・って今の誰の声っ!?

声のした方に視線を向けると、王妃様が仁王立ちしていた。


「派手さを求めず、最小威力で確実にれっ!!じゃなくてだな・・・おりなさいっ!!」


王妃様・・・どこから突っ込んだら良いですか?

とりあえず、重要な所だけ突っ込んでおこう。

これ、戦闘『訓練』だから殺っちゃ駄目だろ。この場合、殺られ役私だし。貴女の息子だって居るんだし。

っていうか、あなたは今日『A級冒険者』としてではなく『王妃』としてこの場に来ている事、忘れないで発言してーーっ!!


まぁ発言内容の前半は、アリスちゃんの性質と真逆だけど、激しく同意。

最小威力で一撃必殺。地味だが強い。それこそ奥義。


そんな荒ぶっている王妃をガン無視で、第二王子は着々と『爆華野』に矢を撃ち込み誤爆させては自分の行動範囲を広げ、足場を確保すると更に矢を放っていく。


って、あれ?矢が消え・・・。


「どわぁっ!!危なっ!!」


慌てて自分に向かって来た矢を桜花風月で叩き落とす。


「光学迷彩っ?!」


そう消える魔球・・・じゃなくて消える魔”矢”の正体は光学迷彩に有り・・・。

第二王子・・・矢に『風魔法』だけじゃなく『水魔法』と『光魔法』を組み合わせて光学迷彩を作り出しおったっ!!

矢を水で覆って、光を屈曲させて矢を隠す。君は斜め上の進化を遂げて行くね。

そして、派手さを求めず、最小威力で確実に殺りに来てるよね。暗殺者かっ!!

ただ、まだ『光魔法』の精密操作が出来て無いせいで、若干チカチカ光っているから矢が来ているのが分かっちゃうんだよね。

これが上手に矢を消せるように成ったら、末恐ろしい物が有るわ。

アリスちゃんと第二王子の二人を足して、2で割れば・・・うん。どちらにしても正義の味方っぽくないな。

誰かどこかで二人の軌道修正をお願いしたい。っていうか丸投げしたい。

私には無理だコレ。どうしてこうなったんだろう?私の所為でもあると思うけど、全ての原因が私に有るとも思えないんだ。


私が矢を全て叩き落とすと同時に、第二王子は私の周囲の『爆華野』を次々と射ぬくと誤爆させる。

地面がえぐれ、飛び散る土砂で視界が悪いなか飛んでくる矢を叩き落とし、移動していく。

移動しながら、ふと疑問に思う。


「何で第二王子の矢が尽きないんだろ?」


開始直後に見た時、第二王子が背負っていた矢は10本。

だけど第二王子は既に50本は射っている。

アリスちゃんは、爆撃魔法の無駄使いでMPをかなり消費しているから、もう撃てる魔法攻撃は少ないはず。

派手さを求めなければ、爆撃魔法の残数は30位かな。

ちなみに、アリスちゃんは一週間前に爆撃アイテムを使い切っていて、もう持っていない。

だけど第二王子の残数が分からない。所持している矢と実際に使っている矢の数が合わないんだ。


嫌な予感を感じて第二王子の装備アイテムを[強欲王かんてい]する。


・・・・・・。何だアレ。


あんなアイテムを渡した覚えはないし、あの機能を持ったアイテムは『ラブ☆マジカル』には無かったぞ。

そもそも『ラブ☆マジカル』に、あの機能アイテムは必要ないんだ。

だってゲームには【クローゼット】が標準装備だからね。

と言う事は、アレはきっとウルシュ君が創った物だ。

第二王子の身に付けている、あのウエストポーチは。


『亜空間ポーチ』

内部に1立法メートル分の空間拡張魔法が組み込まれたウエストポーチ。


つまり、あれは俗に言う『マジックボックス』もしくは『マジックバック』。

それにしても、1立法メートルか・・・。

弓矢が何本入るだろう・・・。

え~と。10本の束で確かこの位だから、幅・奥行き・高さが1メートルの箱の中に大体・・・・


分からんっ!!

弓矢の残数が、さっぱり分からんっ!!

もう面倒くせぇっ!!奪っちまえアレっ!!


考えるのが面倒になって、第二王子のポーチを奪おうと接近しようとするも、第二王子はチョロチョロ良く動くし、放たれた矢は追尾型なうえ、光学迷彩だし、アリスちゃんは何か巨大な魔法陣を上空に組み立ててるし・・・・ってっ?!


何だアノ巨大魔法陣っ!!


アリスちゃんっ!!アレ何っ!?

初めて見るよ?!待ってっ!!なんか嫌な予感しかしないんだけどっ!!

待て待て待て待て!第二王子よりアリスちゃんが先だっ!!あの爆撃狂を先に何とかしなきゃっ!!


慌てているうちに巨大魔法陣は完成したようだ。

『陣』自体は白く光っているが、周囲が薄い紫色のオーラで覆われているので、いかにも『魔法陣です。』って雰囲気で結構好きなんだけど、威力が分からなすぎて怖い。


最悪、王妃の目の前で第二王子が”死んで復活”っていう出来事が起こりかねない。

ヤバイヤバイヤバイ・・・

アリスちゃんっ!!正気に戻ってーーーっ!!


「ですと・・・」


わぁぁぁぁぁっ!!駄目だっ!!


[暴食かいしゅう]っ!!」


魔法陣を何とかしなければとパニックに陥った私は、『実体を持たない魔法陣』に対して[暴食グーラ]を発動させる。

【クローゼット】には実体の無いエフェクト等は収納出来ない事から、今回[暴食(グーラ)]を発動させても意味はないんだけど・・・・・・。


[暴食グーラ]さん。良い仕事しますね。[暴食]さんは便利スキルだと思っていたら、チートスキル様だったでござる。

上空に在った『魔法陣』は、竜巻の様に渦巻きながら、私の片眼に吸い込まれて行った。

[暴食]さん。視界に捕らえられたら、魔法にも有効なんかーい!!

でも、【クローゼット】には入って無いぞい。どこに行ったんだっ?!怖いっ!!これ怖いっ!!

もしかして、良く探したら【クローゼット】から消えていた、実体を持たない『エフェクトアイテム』も、どこかに有るっていう事かっ?!やだ怖いっ!!

私の人間離れが深刻なんだけどっ!!


アリスちゃんは、残っていたMPを巨大魔法陣に全て注ぎ込んでいたらしく、その場でMP切れで倒れて戦闘不能。脱落した。

アリスちゃんが倒れても、『爆華野』はまだまだ広範囲に残っているし、第二王子の矢も尽きてはいない。


ここで、試してみたい事が出来た。

暴食グーラ』なんだけど・・・・・

他人の所有物や装備は回収できるのか?って事。だってチートスキルだよ?

他人の所持品でも視界に入っていれば、回収もとい、奪う事が出来るんじゃない?


と言う事で、第二王子のウエストポーチをロックオンっ!!


「[暴食(かいしゅう)]っ!!」


っ!?


「「「「「「・・・・・・・・・・・。」」」」」


「・・・・・わぁ・・・・・」


周囲の皆は沈黙し、第二王子は無表情で驚いた後、立ち尽くす。

ゴメン。本当はポーチだけを奪うつもりだったんだ。


ズボンまで一緒に奪うつもりは無かったんだっ!!


第二王子、ポーチのベルト部分を、ズボンのベルト通しに通していたんだね。

そして、腰に着けているポーチを遠くから見ると、ズボンも一緒に視界に入るよねっ!!

ポーチとズボンが繋げられていて、一緒に視界に入っているんじゃ、そりゃセットで回収される事態も起こり得るわっ!!


なんで予測が付かなかったんだ、私・・・・

第二王子を地雷型爆撃魔法が広がる平原の真ん中で、パンツ丸出しにさせてしまうなんてっ!!

不敬罪で捕まるかも・・・・と思って、チラリと王妃様の方を窺うと


王妃は椅子から転げ落ちて、声も出ない位、大笑いしていた。


もう王妃様、ノリが脳筋系の女冒険者か無法者アウトロー系だよね。

いや、実際、女冒険者なんだけど。

お茶会の時の、第二王子の首根っこ捕まえて、袋に詰め込んだ行動の辺りで、息子の扱いが雑すぎるとは思っていたけど、流石に平原ど真ん中でパンツ丸出しの息子を指さして笑うのは止めてさしあげて。


第二王子は精神的なダメージで、戦闘不能。脱落した。




さて、ウルシュ君と平原の地雷型爆撃魔法を撤去した後は、馬車に乗り込んで王都に帰還します。


傷心の第二王子は、王妃から『正義の味方に成りたいって?それなのに、あの程度の精神攻撃で戦闘不能になるなんて、気合が足りない。全裸に成ろうと最後まで戦え。』と無茶振りされて、王妃の実家であるランバート家での修業を勧められながら、馬車に詰め込まれていた。

王妃・・・ダンジョンに第二王子を放り込むのは止めてあげてね。


アリスちゃんも、第二王子と王妃の乗る馬車に、王妃によって詰め込まれていました。

私は王妃に、アリスちゃんを広範囲爆撃好きに変えてしまった事を白状し、これから先のアリスちゃんの訓練方法の事を相談する。

アリスちゃんを馬車に詰め込みながら、王妃は『アマリリス嬢のあの性質は根っからの物だから、素人に矯正できる物じゃないわよ。後の教育は私達・・に任せなさい。ブルネスト家も、この手の馬鹿の矯正には慣れている筈だし。』と、引き受けてくれた。


ブルネスト家って、ブルネスト侯爵家だよね・・・。

アリスちゃんの家だよね?なんで慣れているんだろう・・・。


私とウルシュ君も王妃達と一緒の馬車に誘われたけど、丁寧にお断りする。

いくら王家の馬車と言っても、従者も含めて6人は流石に狭いだろうし。

あと、一つ。私はウルシュ君に確認しておく事が有るから、出来ればウルシュ君と二人に成りたい。

と、言う事で私とウルシュ君は、王妃達とは別に、乗って来たスネイブル家の馬車で帰ります。


王妃達の乗った馬車が先に出発するので、ウルシュ君と並んでお見送りをする。

すると、馬車の窓から第二王子が顔を出したので、ウルシュ君と手を振る。


「第二王子、またお会いしましょう。」


「第二王子、もうスキル制御は上手く行くはずですよぉ。操作練習を頑張って下さいねぇ?」


すると、第二王子は少し困った表情で首をかしげると、私達に疑問をぶつける。


「・・・・・・・・なんで・・・ずっとボクを『第二王子』って呼ぶの?・・・・」


「「・・・・・・・・」」


貴方が攻略対象キャラで、万が一、貴方が私の婚約者に成ると破滅フラグが建つから、あまり親しく成らない為です。


「・・・・・仲良くしたいのに・・・・それがずっと寂しかった・・・・」


捨てられた子犬みたいな目で見つめられて、たじろぐ私とウルシュ君。

え~と。傷付けていたみたいで、なんか本当にごめんなさい。


「「で、では、クリストファー殿下で・・・」」


私とウルシュ君は声を揃えて、名前を呼んでみる。

すると、クリストファー殿下は馬車の窓を両手でチョコンと掴むと、フルフルと首を横に振る。

なんだ、何がお気に召さないんだ。


「・・・・・『アリスちゃん』みたいな・・・仲間みたいな呼び方が良い・・・・」


ニックネームが御望みですか・・・。


「「クリス様?」」


すると、またクリス様は首を横に振る。お気に召さないらしい。


「・・・・・・『様』は・・・なんかヤダ・・・」


『なんかヤダ』と言われましても・・・。

困っているとウルシュ君がクリス様を諭す。


「クリス様、流石に平民の僕がこれ以上クリス様を気安く呼ぶのは無理です。あと、イザベラは僕という婚約者が居るので、他の男性を気安く呼ぶ事は出来ません。」


うん。そうだよね。

だから、そんな寂しそうな目でこれ以上見ないで。


ウルシュ君と二人、クリス様の悲し気な視線攻撃に困っていると、王妃がクリス様の頭を掴んで窓から引き離す。


「初めての友達に浮かれるのは良いけど、その友達を困らせるんじゃないよ。では、お二人とも、ウチの息子が世話になったわね。この子を、こんなに普通に会話が出来る様にして貰って、本当に感謝しているわ。もし困った事が有れば、私と王家、ランバート家が力に成るから何でも言って頂戴。それでは、ごきげんよう」


王妃が言い終わり親指を立てると動き出した馬車に、ウルシュ君と手を振る。

クリス様は再び窓から顔を出すと、手を振り返してくれた。

アリスちゃんは、まだ魔力切れで気絶している様子。

来た時はクリス様が寝ていて、帰るときはアリスちゃんが寝ているのが、なんか可笑しい。

目が覚めて、王妃とクリス様と一緒の馬車に乗っている事に気付いたら、ビックリするんじゃないかな?


姿が見えなくなるまで、手を振ってくれたクリス様の乗った馬車を見送った後、私達はスネイブル家の荷馬車に乗り込む。

御者は行きと同じくポールさん。

荷台に私とウルシュ君が並んで座ると、今回の山小屋での出来事を二人で話す。


馬車が道中の半ばに差し掛かった頃、ウルシュ君に気になっていた事、確認したかった事について問いただす。


「ねぇ、ウルシュ君。」


緊張気味に声をかける私に、ウルシュ君は首をかしげてフニャリと笑う。


「なぁに?イザベラ。」


「なんでクリス様にぶつかったの?」


私の質問に、ウルシュ君は笑顔のまま動きを止めた。

あぁ、その反応。やっぱりアレは意図的だったのか。


「う~ん。『ぶつかった』っていつの事かなぁ?」


分からない。といった風に質問を返して来るウルシュ君に、もう一度問いかける。


「クリス様の一回目の『反魂』、『黄泉返り』の時だよ。ウルシュ君、あの時ワザとクリス様にぶつかって行ったでしょう?」


ウルシュ君から笑顔が消える。


「なんで、そう思ったのかなぁ?」


今日の戦闘訓練では、あれだけの爆撃魔法を展開するほどに成長していたアリスちゃんだけど、初めから10km全域をカバー出来るほどの爆撃魔法を展開できていた訳では無い。

つまり当初は、爆撃は防御壁から遠い平原の真ん中、主に戦闘場所周辺に落ちていたんだ。


そして、あの出来事は、爆撃弾の流れ弾や衝撃波で、防御壁がよく壊れていた本当に初期の頃。

ウルシュ君は防御壁の修理の為走っていて、クリス様は爆撃を避けつつ、弓矢で私を狙う為走っていた。

ウルシュ君は防御壁に用が有るんだから、壁周辺である端の方を走っているのが普通なのに、爆撃弾が次々と降って来て視界が悪くなっている、ど真ん中を突っ切っているのは不自然。

しかも、偶然にもクリス様と激突って、色々怪しい。


「いくら視界が悪くても、直径10kmの中で、違う意図で走り回る子供2人がぶつかって転ぶ確率は少ないよ。例え、それが偶然だったとしても、その後がおかしいもの。」


「ふ~ん。その後ってぇ?」


ウルシュ君はうっすら微笑むと、話の先をうながす。


「偶然、ウルシュ君とぶつかって転んだクリス様に、偶然、アリスちゃんの爆撃魔法が直撃。偶然、クリス様が身に着けていた大量のアイテムが作動せずに即死。偶然にもウルシュ君は無傷」


これだけ偶然が続けば、それはもう必然だよ。

とくにアイテムが作動せずに、クリス様が即死しているのがおかしい。

だって、2回目の時は全部壊されたとはいえ、流れ弾で怪我しないようちゃんと作動していた。

護身用のアイテムが全部壊れてしまったから、2回目の時は、爆撃に巻き込まれて死んだのだ。

だけど、あの時は物理耐性に魔法攻撃耐性、防御魔法に自動回復。他にも色々な効果のあるアイテムを、悪趣味なほどに身に着けていたのに、一撃の爆撃弾で即死?有り得ない。


「そっかぁ~。そうだよねぇ。流石に無理があったよねぇ」


「ウルシュ君の目的が何なのか良く分からなかったから、その後は防御壁の内側での作業は禁止にさせて貰ったんだけど・・・。何がしたかったの?ウルシュ君。」


ウルシュ君は困ったように笑うと、私の耳に手を添えて、内緒話を打ち明ける様にして囁く。


「実はね。あそこで、クリス様に死んで貰う必要があったんだぁ」


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