さぁ投げてっ!!
※虫注意※
「ふえぇぇぇぇっ!!ですとろぉぉぉいっ!!」
「アリスちゃんっ!!次っ!!2時方向っ!!来るよっ!!」
「ふえぇぇぇっ!!ベラちゃんっ!!『爆撃弾』と『遠距離操作式地雷』が残り30個位しかないですぅ!!」
「今来てるコレを何とかしたら、5分だけ”シールド”張るよっ!!その時に補充するから、その数で持ちこたえてっ!!」
平原は土煙に覆われ、視界がゼロ。
轟音に次ぐ轟音、そして、その中で響きわたる少女達の声。
それを街道の方に避難させられたポールは、呆然と立ち尽くし、土煙を眺めていた。
「中で何が起こっているんですかね?これ。」
・・・───────話は30分程前に遡る。
「何の理由も無く、一角ウサギが居なくなるとは思えないのよねぇ・・・。」
”火の無い所に煙は立たない”って言うし。あれ使い方違うかしら?
とにかく、いつもと違う何かが起きてるって言う事は、いつもと違う何か原因となる物が有る筈なのよ!!
せっかくアリスちゃんが殺る気を出しているんだから、何としても一角ウサギ狩りを開催したいっ!!
そこでスライムや一角ウサギを探していた時以上に、細かく、色々な角度、色々なスキルの組み合わせで原因を捜査する。
『気配察知』『魔力察知』『探索』『警戒』『索敵』広範囲で展開して、平原と近隣の山、林、森を調べる。
上空から『傲慢』で見下ろすのも忘れない。
・・・・。何も居ないんだけど。
ん、ちょっと待って。『警戒』に何か引っかかっている。
それも、意外と近い。
ん、ん~?でも上から見るに、何も周囲には居ないぞ?
・・・・・もしかして、下か?
ほら、地下に天然ガスが発生していて危険とか?
そう思って、上空の『傲慢』に『色欲』を重ね掛けして、平原全体の地中に危険が無いか捜索しtっ!!!
何かが地中で蠢いてるっ!!
「──っつあ?!なんか居るっ!!なんか居る!!」
突然上がった私の奇声に、アリスちゃんが小さく跳び上がる。
「ふぇっ!!何ですかっ?!ベラちゃん、何が居るんですか?!どこですかっ?!」
何が居るのか聞かれるが、良く分からないっ!!地中が暗くて、微妙に全体像が見えづら・・・あっ!!
ふと、思いついて、『傲慢』を解除し、『怠惰』を展開する。
「・・・っ!!づあっ!!」
「ベラちゃんっ?!」
見なきゃよかった!見なきゃよかったっ!!見なきゃよかったっ!!!
「ア、ア、アリスちゃん。落ち着いて聞いてね?・・・機関車サイズのミミズみたいなのが、地中に居る。3匹。」
「っ!!」
「・・・あと、もう少し小さいのが沢山いて、密集して・・塊に成ってる。多分、幼体か何かだと思う。」
ふぅぉぉぉぉぉっ!!きんもっーーーーーー!!何だコレェェェっ!!
いやっ!!分かるよっ!!何かは察しが付くよ?!
流石に乙女ゲーである『ラブ☆マジカル』には出て来なかったけど、ゲームとかに出て来る、モンスターのワームとか言う奴でしょ?
CGが発達した、リアルなゲーム映像でも気色悪かったけど、その比じゃないっ!!
ゲーム画面で見るのと、実際に足元の地中で蠢いてるのを見るのとでは、雲泥の差だよっ!!
なんか全体的に緑色なんだけど、光沢(?)が紫色って言うか・・・玉虫色?の巨大なミミズに、芋虫っぽい足が生えているって言うか・・・。
これ、R15にしたほうが良い?
とにかく、とにかくっ、キモイ。
あまりの気持ちの悪さに震えが来てる私と、衝撃に固まっているアリスちゃんに、ポールさんが冷静に提案する。
「それ、ワームですよね・・・そのサイズと数はどうにも出来ないので、そっと平原から撤退して、冒険者ギルドに報告を入れましょう。」
「ポールさん、ソレ、無理です。」
私の返答に、ポールさんは面食らう。
「え?無理って何でですか?」
「来るっ!!」
ポールさんを街道の方へと蹴り飛ばすと、アリスちゃんを抱きかかえて飛躍する。
次の瞬間、私達が立っていた地面が爆発するかのように噴き上がり、大きく口を開けたワームが地上に飛び出して来た。
間一髪っ!!ワームに気付かなかったら、あのまま丸呑みだったよっ!!
良かった!!地中に目を向けてっ!!
あと、慌てすぎて、ポールさんに身体強化をかける暇も無いまま、蹴り飛ばしちゃったよ!!
30M位飛んでいったけど、生きてるっ?!
よし、ポールさん立ち上がったっ!!生きてるっ!!
「アリスちゃんっ!!一角ウサギ狩りは中止っ!!今からワームの殲滅作業に入るよっ!!」
「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「何とかポールさんの避難を成功させられたけど、もう平原から出るのは難しいのっ!!完全にロックオンされてるし、街道寄りの地中に、幼体のワームがビッシリ居るのっ!!アレが全部出てきたら、流石に数の暴力すぎて街道まで抜けられないっ!!」
って言うか、スライム狩りで気付いたんだけど、小型のモンスターを相手するのは、私には向いて無いっぽい。
大型モンスターなら、的が大きいからHPまかせの、キックやパンチを入れられる。
でも小さいのにワラワラと寄られたら、立ち回り方が分からないのよね。
つまり、幼体のワーム集団との戦闘は、私には厳しい。
ステータスの高さの割には、私の戦闘技術がダメダメなのは
『ラブ☆マジカル』が画面を見ながら、指先の操作でするゲームだから。
これが、MMOとかのバーチャルリアリティー系のゲームなら、戦い方がもう少し分かったかもしれない。
くっ!!ステータスやレベルが高くても、技術が足りないっ!!どう動いたら良いのかサッパリだよ!!
そんな事を考えながら、アリスちゃんを横抱きのまま平原を疾走する。
後ろから凄い勢いで追い駆けて来るワーム。
背後から蒸気機関車並みの物体が、追い駆けて来るのは、マジで恐怖っ!!
そしてアレが追い駆けて来るから、戦闘態勢を整えられないんだけどっ!!
何か、あの巨体の動きを止められる物っ!!何かないか?何かないか?!
「ふぇっ・・・ですとろーい。」
私に抱きかかえられている半泣きのアリスちゃんが、ポケットから『眠り玉』を取り出し、背後の巨大ワームに向かって、ポイっと投げた。
破裂し眠り薬を噴出した『眠り玉』だが、その威力は、あの巨体には効かないっ!!
でも、アリスちゃんGJっ!!それだっ!!
「アリスちゃんっ!!私の両手が塞がっているから、代わりにコレをワームに向かって投げてっ!!」
【クローゼット】からアリスちゃんのお腹の上に、ポトンと『眠り香弾』を落とす。
「ひぇぇぇぇぇっ!!これ、ウルシュ様が、私達も目が覚めなくなるって言ってた、危険な奴じゃ無いですかぁ!!」
「ココは室内じゃないから大丈夫っ!!さぁ投げてっ!!」
涙目で『眠り香弾』を掴むと、アリスちゃんはワームに向かって投げつける。
投げられた『眠り香弾』は、大口を開けて迫って来るワームの口の中に、吸い込まれて行った。
それを横目で確認した後、ガチガチに『身体強化』スキルで全身を覆い、アリスちゃんには聖属性魔法の『身体強化』と『状態異常耐性』を強力にかけると加速する。
次の瞬間、背後から閃光が走り、僅かに甘い香りが漂ってくる。
そして、突き進むスピードのまま地面に叩き付けられる、巨大ワーム。
止まり切れず、滑走するワームは、数メートル進んだ所で止まり、そのまま沈黙した。
だが、まだ倒せていない。眠っているだけだ。
アリスちゃんを地面に立たせると、沈黙するワームに向きあう。
「アリスちゃん。今から沢山アイテムを渡すから、受け取って。残数が減ってきたら、すぐに教えてね。」
「ワームが、やっつけられるアイテムですかぁ?」
「ううん。そう言うのも有るけど、レベルやスキルを上げたいから、巨大ワームの動きを止める程度の物しか渡さない。動きが止まったら、私がアレを3枚おろし・・・まではしなくて良いか。開きにするから、アリスちゃんが、魔核をフォークで一撃にする流れで。」
「ふぇ~。了解です。」
アリスちゃんは私に向かって、ロゼリアル軍隊式の敬礼をする。
初めと比べて、随分と余裕が出て来たね、アリスちゃん。
【クローゼット】から、手の平サイズのアイテムを取り出す。ケースに100個入りの爆撃系アイテム。
それを2種類。まずはコレで良いでしょう。
そして、爆発時に巻き上がった破片や土が目に入らない様に、『視界クリアゴーグル』を2つ取り出すと、一つは自分で装着し、もう一つは爆撃アイテムと一緒に、アリスちゃんに手渡す。
もう一度【クローゼット】を開くと、中身を確認する。確か私はアレを持っていた筈。
実は、『ジャイアントフロッグ大量発生ハーベストイベント』の最高得点の景品アイテム、『巨大フォーク』には、ある意味、対と呼べる武器が有る。
そのアイテムは景品では無く、そのイベント時に出る、500円ガチャの”Sレア”アイテム。
そう『フォーク』と来れば、『ナイフ』でしょ?
さて、まずは目の前の、巨大ワームを捌く事から始めましょうか。
【クローゼット】から、『巨大ナイフ』を取り出すと片手で振り回したり、回転させたりして使い勝手を確認する。
うん。使える。
「じゃあ、お昼ご飯までには、ワーム駆除を終わらせるよっ!せーの」
「「ですとろーいっ!!」」
R15タグと、残酷な描写ありタグ。要りますかね?
ちょっと心配になってきて・・・。