表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
チート転生と、ゲームの裏事情あれこれ。
37/145

ソコからかぁっ!!

転々と茂みを回っていると、完全に夜が明けた。


「ふぇ~・・・疲れましたぁ・・もう歩けません・・足も痛いです。」


アリスちゃんが体力切れで動けなくなり、その場で倒れ込んだ。

よし、これからが本番だ。

HP枯渇を繰り返すと、HPって上がっていくよね。

あくまでゲームでの話しだけど。

それでも試して見る価値はある。

アリスちゃんの足の痛みを、治癒魔法で回復させて【クローゼット】からHP回復薬ポーションを取り出すと、アリスちゃんに手渡す。


「さぁアリスちゃんっ!!ポーションよっ!!これを飲んで回復したら、次行くよー!!」


「はひぃ・・頑張りますぅ・・・」


アリスちゃんは、ポーションを受けとると、蓋を開け、一口含んで盛大にむせた。


「げほっ!!・・ごほっ!!・・ふぐぅっ!!・・うぇぇえ・・苦いですぅ・・・辛いですぅ・・・飲めません~」


「頑張れ頑張れっ!!飲める飲めるっ!!諦めちゃ駄目だっ!!それイッキっ!!」


アリスちゃんからポーション瓶を奪い取ると、アリスちゃんを押さえつけ喉に流し込む。

アリスちゃんは、吐き出すわけにもいかず涙目で何とか飲み干した。

その様子を見ていたポールさんは驚き、感心して呟く。


「最近の令嬢は、気合いが入ってますね。ポーションの味って冒険者でも苦手な人が多いのに・・・」


令嬢の皆が皆、ポーション飲める訳じゃないから、最近の令嬢とひとくくりにされても困る。

でも確かにアリスちゃんは、気合で頑張ったと思います。


「うえぇ・・・ベラちゃん、酷いですぅ・・・口の中とお腹の中が気持ち悪いですわぁ・・ベラちゃんの鬼ぃ・・」


気合いでポーションを飲み干したアリスちゃんが、涙目のまま恨めし気に非難の声を上げた。


「でも回復できたね。じゃあ、正午までにレベル上げが間に合わないから、ガンガン続けて行くよっ!!」


「ふぇぇぇぇ・・・はい。」


アリスちゃんがフラフラしながらも立ち上がったので、平原の探索に戻る。


ふむ、日が昇ってしまったし、予想よりレベル上げが進んでいないわね。

もう少しスパルタで行こうかしら?


「アリスちゃん。体力づくりの為にも、走って移動しましょう。」


「そんなぁ~。無理ですわぁ・・・私、運動が苦手なのです。」


フルフルと首を横に振り、アリスちゃんはその場に立ち止まってしまった。

侯爵令嬢として淑女で在れと、お淑やかな振る舞いをするよう育てられているので、運動が苦手なのは分かる。

だけど、第二王子と寄り添って生きて行くつもりなら、レベル上げは避けては通れない。

第二王子がスキルを使いこなせる様に成るか、まだ分からないし、制御できたとしても体調不良とかで、スキルが暴走する事も考えられる。

その時の為に、心の声が聞かれない様に、一応の予防はしておいた方が良いと思う。

それに、傍にいる人の心の声を、勝手に聞いてしまわずに済むと言うのは、第二王子の安心にも繋がると思うのよね。

でも、アリスちゃんには第二王子のスキルについて、心を読むスキルだと説明していないから、なんて説得しよう?


どう説得しようか悩んでいると、ポールさんがアリスちゃんの傍に寄り、声をかけた。


「アマリリスお嬢様。第二王子が広範囲の声を拾うスキルを持っている事は、ご存知ですよね?そして、第二王子よりレベルが低いと、そのスキルの効果対象に成ると言う事も。」


「はい。知っていますわ。」


アリスちゃんは神妙な顔で頷く。

彼女もレベル上げの必要性については理解できているのだが、どうしても心と体が付いて来ないのだ。


「つまりですね?アマリリスお嬢様は、第二王子が目を覚ますまでにレベルを上げておかないと、第二王子に鼻歌や寝言、変なクシャミと言った、聞かれたくない物まで聞かれてしまうのですよ?」


アリスちゃんの顔から、血の気が引いて行くのが分かった。

好きな人に寝言や、思わず出てしまったオッサン臭いクシャミ等を聞かれてしまうのを、想像した様だ。

しかし、ポールさんは更に追い打ちをかける様に続ける。


「それだけなら、まだ良いでしょうけど、他にもトイレで気張っている時の声とか、ゲップだとか、第二王子が聞きたくない様な物まで、耳に入れてしまう可能性も有るのですが・・・・」


「ひぃっ!!」


そんな事態を具体的に想像したらしいアリスちゃんは、ダラダラと冷や汗をかきながら、ブルブルと震え出した。

それはそれは、とても早く小刻みに、高速で震えているっ!!

凄いよアリスちゃんっ!!まるでマナーモードみたいだよっ!!

そしてポールさん、グッジョブだけどトイレの話はヤメレ。

アリスちゃんは私と違って、正真正銘の令嬢なんだからデリカシーを持って接してあげてっ!!

そんな私の内心の非難をよそに、ポールさんはアリスちゃんに念を押していく。


「どうでしょう?アマリリスお嬢様。レベル上げ、続けますか?」


「つっつつつつつ続けまう・・続けましゅわっ!!」


動揺の余り噛んでしまい、言い直したにもかかわらず噛んでいる。

アリスちゃん、動揺しすぎだよ。

ゲップが聞かれてしまう事が有っても良いさ。人間だもの。


しかし、ポールさんの脅し・・・いや、説得がかなり効いたのか、それからのアリスちゃんは鬼気迫る様子で頑張った。


平原を全力疾走で移動してHP枯渇で力尽きて倒れては、差し出されたHP回復薬ポーションを一気に飲み干し、更に全力疾走。

時々、肉離れを起こして倒れても、治癒魔法で回復した瞬間には全力疾走。


ひたすら駆けずり回っては、キノコや薬草を採取し続けるアリスちゃんに、朝食を兼ねた休憩を提案した頃には、既に回復薬が12本空いていた。


「うえぇぇぇ。お腹がチャプチャプでご飯が入りませんわぁ・・・」


小さな瓶に入っているとは言え、ポーション12本も飲んだら、現実ではそうなるよね。

むしろ良く12本も飲んだ上で、走り回れたわ。

ふふふ。まだまだ、在庫は有るから安心してね?


「日が昇って時間が経つので、そろそろスライムや一角ウサギが、平原で活動を始める頃ですね。くれぐれも気を付けて下さいね。」


ポールさんは、私が【クローゼット】から取り出した、ジャイアントフロッグのホットサンドを食べながら、注意を呼びかける。

全然スライムの姿が見えないと思っていたけど、どうやら出現しやすい時間帯が有るらしい。


「アリスちゃん。一応もしもの時の為に、お守りを渡しておくね。」


アリスちゃんに、物理攻撃耐性強化の指輪と、毒耐性強化のブレスレットを渡す。

どちらも、200円ガチャのノーマル品で【クローゼット】にかなり在庫ダブリを抱えている品だけど、スライムや一角ウサギ位の攻撃なら、余裕で弾く。

つまり、こちらはダメージを一切受ける事無く、一方的に攻撃が可能っ!!

ふははははは。これは戦いでは無い、一方的な殺戮だっ!!


「だからアリスちゃんが、一角ウサギを逃がさない様に、追いつく事が出来れば、正午までに一角ウサギを単独で狩る事も不可能じゃないよっ!!」


「ふぇ?で、でも。追いつけたとして、どうやって狩るんですの?」


「「・・・・・。」」


そうだった。アリスちゃん、攻撃手段を持っていなかった。


「あ、いやっ、待って。アリスちゃん水属性魔法を持っているよね?あと風属性魔法も。」


キョトンと首を傾げるアリスちゃん。


「ふぇ?私、水と風の魔法を持っているんですの?」


「───っ、ソコからかぁっ!!」


そう言えば、スキルと魔力の集団チェックは10歳からだった!!

貴族はもっと早いかも知れないけど、6歳のアリスちゃんがまだ自分のスキルを全て把握していなくても不思議じゃないわ。

でも、今から魔法の練習しても遅いから、何か攻撃手段を考えないと・・・。

スライムや一角ウサギまで行けなかった・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 無駄に超加速でも発動したのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ