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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
チート転生と、ゲームの裏事情あれこれ。
32/145

”元通り”よっ!!

「ふにゃぁ・・・・ふ、ふえっ?」


謎の鳴き声を上げながら、もそもそとアリスちゃんが起きてきた。


「あ、アリスちゃん起きましたの?」


「へ・・・。は、はいっ!!起きましたっ!!」


うん。元気そうね。

怪我も無いみたい。なら大丈夫。


「じゃあ早速、山越えをしましょうっ!!」


「はいっ!!・・・────って、えぇぇぇぇぇぇ!?山越えって何ですかぁっ!!って、その前にココは何処なのですかぁぁ!」


結局、第二王子を殺さずに、傲慢王ルシファー をどうこう出来そうなアイテムは無かった。

スキルの能力を増幅する装備アイテムはあれど、封じるアイテムは武器や毒や呪符関係オンリー。

そもそも、攻撃以外でスキル発動妨害する理由は無いもんね。

余程の縛りゲー好きではない限り、自分や味方のスキルを封じるアイテムが必要な場面が、思い浮かばない。

アイテムがあてに成らないので、ウルシュ君と話し合った結果、物理的な方法を取ることにしたのだ。


そう。単純に、王子の半径10Km圏内に、Lv4以下の(王子より弱い)人族が居なければ良いんだ。

そしたら、傲慢王の耳が常時発動していたとしても、拾える声が無いため、何の問題も無くなる。


そこで、スネイブル商会が持っていると言う、森林の商品素材の採取用に建てた山小屋に、行く事になりました。

その山小屋には素材採取を請け負っている、商会の職員さん達が数人居るそうですが

山で採取をしながら、生活をしていているだけあって、そこそこのLvが有るらしく、第二王子の読心は弾かれるだろう、と言うことでした。


アリスちゃんには”スキルの一つが常時発動し、暴走してしまう呪い”が第二王子にかけられていて

聴力強化系のスキルが暴走して、広範囲の色々な声を拾い上げてしまっている。

その所為で、第二王子の心が休まる時が無く、彼は疲れ切ってしまったのだと説明しておいた。


一人だけ、本当の事を知らせずにいるのは、申し訳ないけど

[読心ルシファー]の存在は、周囲に知られると不味いスキルではないかと考えた結果だ。

[読心]が出来ると知られる事により、色々な人達に利用されたり、逆に危険視されて命を狙われる可能性がある。

アリスちゃんに、本当の事を告白するかどうかは、第二王子本人や王家の関係者が決めるべきだ。


「ふぇ~。そうだったんですの。だから、人の少なくて静かな土地に移動するのですね。分かりましたっ!!山越えしますわっ!!」


そう。アリスちゃんには付いて来て貰わないといけない。

貴族らしさ皆無の私と、平民のウルシュ君では、第二王子みたいな高貴な立場、育ちの人と、どう接したら良いのかまるで分らないんだ。

貴族の子息子女の話題とか知らないから、何を話したら良いのかサッパリだよ。

山の中で過ごす間、王子への対応が出来そうなのは、アリスちゃんだけだからね。

それに、これを切っ掛けにアリスちゃんと第二王子が仲良くなれたら良いと思うの。

このメンバーで、真剣に第二王子の事を考えてあげられるのは、アリスちゃんだけだから、第二王子の心の癒しとして必要なんです。


「ところで、殿下を困らせている、呪いで暴走してしまったスキルは、何ていうスキルなのですか?」


「[地獄耳]よ。」


「ふぇぇ[地獄耳]・・・なんだか強そうです。」


「そうね、強いわよ。」


「イザベラ・・・。適当すぎるよぉ~。」


適当じゃないわよウルシュ君。魔王の一柱(ルシファー)の耳なんだから、地獄の耳と言っても、あながち間違ってないはず。

さらに、半径10Km範囲と言う、広範囲にわたって(心の声に限ってだけど)聞き取れるのだから、やっぱり[地獄耳]じゃない?


「さて、せっかくイザベラに、第二王子を2階まで運んでもらった訳だけど、今度は下に降ろさなくちゃいけないねぇ~。」


「ずっと、[並列思考]と[忍耐]を使い続けるのも負担に成るだろうから、静かな土地に着くまで、眠って貰った方が良いんじゃない?体力もあまり無いみたいだし、移動時間を休息にあてるとか。」


色々理由を付けてみたけど、正直言うと、この薄ら笑いのマネキンみたいなのを運びたくないのよね。

なんか、今の第二王子、呪いの人形みたいで、触るのが怖いの。

それなら、意識無くして重たくなるとは言え、眠っている人を運んだ方が良いわ。


「イザベラは何か、眠り薬系のアイテムを持ってる?」


「まかせてっ!!『眠り香弾』、コレを敵にぶつけると眠り薬の煙が炸裂して、巨大なニーズヘッグでさえ一時的に目を回す位に強力よっ!!」


「ふぇ・・・ニーズヘッグが何なのか、分かりませんわぁ・・・」


「ニーズヘッグはユグドラジルの根元の湖に住んでいて、ユグドラシルの三本目の根を齧っている黒い大蛇の事ですわ。」


「その『眠り香弾』。多分、この部屋で炸裂させたら、イザベラ以外は一生覚めない眠りにつくだろうねぇ~。早くその兵器を仕舞いなさい。」


ウルシュ君に真顔で指示された。

いつも伸びている語尾すら伸びてなかった。怖い。


「も~、ウルシュ君。そもそも、誘拐犯じゃないんだから、子供を安全に眠らせる薬なんて、公爵令嬢の私が持っている筈が無いじゃない・・・。他にあるのも、『眠り薬』とは名ばかりの、魔物を昏倒させる使用目的の物ばかりよ。」


元は、乙女ゲームのアイテムなんだから、主人公プレイヤーが対人用の『眠り薬』なんて所持出来たらおかしいのよ。

一体、乙女ゲームで『対人用の眠り薬』なんてどう使うというのだ。

攻略対象者を眠らせて、誘拐したり、既成事実作ったりと言った、陥れる使い方しか思いつかないわ。

それ、もはや乙女ゲームじゃ無くて、別ゲームだから。


「なんで、ベラちゃん・・・魔物をこんとう?させるお薬を、いっぱい持ってるんですかぁぁ」


「淑女としてのたしなみですわ。アリスちゃんも、これから何個か持っておいた方が良いわよ。沢山持っているから2~3個差し上げますわね。コレは『眠り玉』ですわ。通常のオーク位なら、直撃すれば1個で戦闘不能になるから、その間に逃げられるわ。でもジェネラルオークやキングオークは1個じゃ駄目。4個全部投げつけても、逃げられるかどうかは運しだいよ。そのドレス、ポケット付いているかしら?」


「ほえ?・・ポケットなら、確かスカートの方に・・・」


「あぁ、有るわね、4個入りそうね。4個あげるわ。使い方は簡単よ。敵に叩き付けるだけ。ただ、叩き付けた衝撃で破裂するから、至近距離の敵に投げつけると自分も怪我するわよ。2~3Mは離れて使うのよ?」


まぁ、これから行く山小屋は、端の方とはいえ王都内だし

アリスちゃんの家の領地も王都に近いらしいから、オークやゴブリンと言った魔物と、遭遇する機会が有るとは思えないけど

持ってて困る物じゃないから、念のために渡しておこう。


『眠り香弾』や『眠り玉』も、ドロップアイテムだから在庫も多いし、

ゲームウルシュ君の作った、課金アイテムと言ったチート品ではないから、所持していても大丈夫でしょう。


「僕は、淑女教育とかそんなのは全然詳しくないけどぉ、『眠り玉』をポケットに詰めておくことが淑女の嗜みじゃ無い事くらいは、分かるよぉ?他所様のお嬢さんに、変なアイテム与えるのは、その位にしておこうねぇ?」


ウルシュ君に釘を刺されました。

えーーーー。メッチャ死蔵に成っている『魅力を上げるドレス』シリーズも、アリスちゃんに横流ししたかったのに!!

『魅了スキル』持ちのアリスちゃんが、『魅力を上げるドレス』を着たら、鬼に金棒じゃんっ!!

第二王子とか、メロメロのイチコロだよっ!!


ただ、『魅力を上げるドレス』はゲームウルシュ君が創ったガチャアイテム(課金品)だから、現実世界このせかいで、どの程度の効力を発揮するのか分からなくて、怖いけど。

うん。やっぱりこのまま死蔵させておこう。

これ、世に出したらヤバい気がしてきたわ。


「話が横にそれて、第二王子をどうするかの話が進まないから、この辺で真面目に考えようねぇ?」


「もう、面倒だから、私が殴って気絶させるよっ!!」


「────?!・・っふぇぇぇぇぇ?!」


「僕、今、”真面目に考えよう”って言ったよねぇ?イザベラが殴ると、第二王子の頭と体が永遠の別れ(エターナルグッバイ)だからねぇ?」


永遠の別れ(エターナルグッバイ)って、何それカッコイイ!!良いよそれっ!!」


「ふぇぇぇぇぇぇぇっ!!駄目ですぅっ!!良くないですぅっ!!!」


「大丈夫よっ!!殴っても、治癒魔法で治せば”元通り”よっ!!」


「うぇぇぇぇぇぇぇっ?!」


「イザベラが何をもってして、”元通り”と言っているのかサッパリ分からないけど、駄目だからねぇ?仕方ないから、僕が何とかするよぉ・・・・。イザベラ、さっきの『回復力UPのブレスレット』を複数持っているなら、第二王子に重ね付けしてくれる?」


指示されるままに、第二王子の腕に『回復力UPのブレスレット』を両腕に5本ずつ重ね付けする。

第二王子のHPを考えると、必要以上に着けた気がするけど、ウルシュ君が何をするつもりなのか分からない為、念のために多めに付けておいた。


準備が出来てウルシュ君を振り返ると、ウルシュ君は手に、漆塗りみたいな黒くて艶々した棒を持っていた。

ちょうど、タピオカ入りドリンクを飲むときに使う、ストローみたいな太さだ。

それを口にくわえると・・・・


「────っふ」


息を吹き込んだ。

棒の先端から、黒い針が飛び、第二王子の首に刺さる。

その瞬間、第二王子の身体が傾き、椅子から崩れ落ちた。


「・・・・・・・。」


「っ?!・・ふぇぇぇぇ!!でっ殿下ぁ!!」


慌ててアリスちゃんが、第二王子を抱き起す。

第二王子は・・・・・・・ちゃんと息をしている。

どうやら、眠っている様だ。


「ウルシュ君、今の何?」


「ダンジョン蟻の毒で創った、麻酔針だよぉ~。大人でも一瞬で昏倒するから、第二王子の体力とLvじゃ、ギリギリの賭けだったんだけどねぇ。王子に[毒耐性Ⅲ]があるのと、ブレスレットのお蔭で、上手く行って良かったよぉ~。ただこれ、まだ改良中の試作品だから、あまり使いたくなかったんだよねぇ。」


まだ試作段階の麻酔針を、第二王子に使いおった!!


「試作段階って、完成品はどうなる予定なの?コレ。」


「ん~。出来れば、対象者のLvや体力ごとに、薬の効果が安全な用量で、自動で増減するようにしたいんだぁ。乳幼児から大人の軍人や冒険者まで、どのような相手でも対応できるようにねぇ。」


なぁんだ。てっきり完成品は、腕時計から針が発射されるのかと思ったよ。


「ふぇぇぇ。殿下は無事なのですかぁ?眠っているだけですかぁ?」


「うん、そうだよぉ。やすらかに眠っているよ~。」


「ふぇぇ?!その言い方だと、永遠に目が覚めない感じだよぉっ!!」


RIP第二王子。ここに眠る。


おふざけは置いといて、アリスちゃんを宥めていると、ウルシュ君が突然声を上げた。


「あっ!!」


「どうしたの?ウルシュ君。」


「僕、今ので経験値が上がって、Lvが一つ上がったよぉ~。」


ウルシュ君、第二王子を吹き矢で昏倒させ、経験値を得たのか。

多分、王族で経験値ゲット出来るのは、暗殺者とウルシュ君だけだと思う。


ん?あれ?


「ウルシュ君、自分の【ステータス】を見れるようになったの?」


「うん。昨日イザベラが帰った後に、[強欲王マモンの眼]を応用して、色々試していたら、出来る様に成ったんだぁ。」


私が帰った後、[強欲王マモンの眼]の応用で、【ステータス】を再現出来たの?!

あれ、[強欲王かんてい]スキルとは、全く別物のスキルの筈っ!!

あれ、スキルって言うより、【ゲームシステム】だから、スキル一覧にも入っていない様な代物しろものなんだよっ?!


「ふおぉ・・・。凄いっ!!おめでとうっ!!ウルシュ君っ!!昨日の今日でアッサリ出来る様に成るなんて、やっぱりウルシュ君は凄いよっ!!頼もしいよ!!」


「・・・え、えぇ~。そんな事ないよぉ・・。」


照れてるっ!!なんとっ!!ウルシュ君が照れてるっ!!

後ろに、手を組んで少しモジモジしてるっ!!

普段が黒いから、ギャップが凄まじいよっ!!なんだか愛おしいよっ!!


「っコホン。じゃあ、早速、第二王子を下へと運ぼうかぁ・・・。イザベラ、第二王子を運んでくれる?」


「了解っ!!」


再び、第二王子を袋に詰めると、今度はお姫様抱っこで王子を持ち上げます。

すると、アリスちゃんがキョトンとして、私とウルシュ君を交互に見始めた。


「ふぇ?・・・えっ?・・・・えっ?!ベラちゃんが殿下を運ぶのですか?」


「あ、僕に運べって言ってるぅ?無理だよ?同年代の男の子抱えて、階段を降りるなんて芸当、僕には出来ないよぉ?」


「え・・・で、でも、ベラちゃん・・・。」


アリスちゃん的には、女の私が第二王子を抱えられて、男のウルシュ君が抱えられないのが、納得いかないらしい。

でも、アリスちゃん。無理な物は無理なんだ・・・。

私が力技担当で、ウルシュ君が頭脳担当と、役割が分かれているのよ。


「どうしても、僕に王子を下に移動させろって言うならぁ・・・第二王子を階段から蹴り落とす方法しか取れないけどぉ・・・良い?」


「ふぇぇぇぇぇぇぇっ?!危なすぎますぅっ!!」


「大丈夫よっ!!アリスちゃんっ!!下で私が治癒魔法で治せば”元通り”よっ!!」


「”元通り”って、一体、何なんですかぁぁぁぁ?!」


結局、私が第二王子を下まで運んでいきました。

移動は、スネイブル商会の荷馬車を持って来て貰い、それで移動します。




今回のやり取りで、アリスちゃんは私達2人に任せていると、第二王子の命が危ないと思ったらしく

自分が王子を守ろうと、心に深く誓ったそうです。


ニーズヘッグ:ニ-ドヘッグ、ニードホッグ、ニドヘグとも言う。

ユグドラジルの根元の湖に住み、3本目の根を齧っている黒い大蛇またはドラゴン。名前は「怒りに燃えてうずくまる者」の意。

ユグドラシル:北欧神話に登場する1本の架空の木。世界を体現する巨大な木であり

世界樹、宇宙樹。世界を内包する、または世界そのものの巨大な樹。

オーク:”この話の場合は”海とは関係ない豚頭人の方。鱗もない。亜人ではなく魔物として登場します。

豚頭人、もしくは豚のように醜い頭の人型種族。エルフが魔術によって変質させられたものとも、エルフが退化したものとも。

(オークは作品によっては、必ずしも悪い物では無く、善き存在として描かれ、創造の情熱と活力を体現した存在であるとされる事も有るので、他の作品ではこの説明は当てはまらない事が有ります。ご了承ください。)

オークキング・オークジェネラル:オークの上位種。進化したもの。

ゴブリン:ガブリンとも言う。妖精、亜人(この作品では”魔物”として登場します。)ヨーロッパの民間伝承やその流れを汲む、ファンタジー作品に登場する伝説の生物。悪戯好きな妖精、小鬼。主に緑色の肌を持つ小人。残虐性、嫉妬心が強い。

RIP:英語圏のお墓に刻まれる文字。意味は「安らかに眠る」「冥福を祈る」みたいな意味です。


前回の後書きで「ダッタン人の矢」について、説明が足りず申し訳ないですっ!!

千の仮面を持つ少女も、シェイクスピアの作品も知っているのですが

「真偽不明・調べても出て来ない」のは、「果たして、ダッタン人の射る”矢”は本当に速いのか否か。」

と言う所でした。

「ダッタン人の矢よりも早く」と引き合いに出されているけど、そんなに早いのか?ダッタン人にも個人差が有るんじゃないか?統計は取ったのか?と、いう意味でした(笑)

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