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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
チート転生と、ゲームの裏事情あれこれ。
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これならすべて解決だよっ!!

ウルシュ君の作業場について、馬車を開けると

アリスちゃんと殿下入りの袋が、座席の下に転がっていた。


あれ?なんで2人共、座席に座らず、こんな所に寝てるんだろう?

馬車をキャッチした時の衝撃を和らげるために、横回転スピンさせたのが不味かった?

酔って、椅子から転げ落ちたのかな?

事前に聖属性魔法の身体強化を、2人にコッソリかけていたから、怪我は無いと思うけど・・・


とりあえず動かない2人を小脇に抱えて、ウルシュ君が居るだろう2階へと上がっていく。


私の身長だと、2人を上手く持ち上げられず、引きずってしまう。

2人の頭が階段にぶつかって、ゴッツンゴッツン音をたててるけど

強化魔法かけてるし、これが原因で怪我しても、後で治癒魔法で治したらセーフだよね?


ゆっくりと階段を上がっていると、物音を聞きつけたのか、上からウルシュ君が顔を出した。


「あれぇ?イザベラ、今日はお茶会じゃなかっ・・・『ソレ』なにっ!?」


「アリスちゃんと、第二王子入りの袋だよっ!!」


「・・・そっか。わかったぁ~。じゃあ、すぐに穴を掘るから、その死体を埋めたら、直ぐに荷物まとめて旅立とうかぁ。ここからだと、東に向かった方が国境が近いよねぇ?」


「ちょっ!死体じゃ無いよ?!2人とも死んでないよっ?殺して無いよっ?!」


ちょっ!!婚約者から、殺人か死体遺棄を疑われてるっ!!

確かに、袋詰めでピクリとも動かない第二王子は、死体っぽいけど!!

さらに一瞬で、死体遺棄の共犯者に成ることを決めて、一緒に逃亡する覚悟を決めるなんて

ウルシュ君てば、思いきりが良すぎるよ。


でも、ありがとう。

私と逃亡生活する事を、即決断してくれた事は一生忘れないよ。誤解だけど。


「そうなの?早合点しちゃったよ~。取り合えず、上に上がったらどういう事なのか詳しく聞かせてねぇ?」





「と言うわけで、慌てて第二王子を回収して来たんだけど・・・。上手くスキルの遮断が出来ないかなぁ?」


2階に上がり、気絶したアリスちゃんをソファに寝かせて、第二王子を袋から出して椅子に座らせた後、ウルシュ君に一連の流れを説明した。


第二王子、馬車から出す時も、運んでいる時も、ピクリとも動かないから

てっきりアリスちゃんと同じで、気絶しているんだと思っていたら

袋を開けた時に、あの死んだ目、薄笑いを浮かべた状態で、ユラリと出てきました。

正直、ゾッとした。


「何で、自分から『死亡フラグ?』とかいうのに突っ込んでいくのかなぁ~?」


ウルシュ君。癒しの笑顔で、黒いオーラ撒き散らすの止めてぇ~!!

怖いからっ!!怖いからっ!!

ただでさえ、薄笑いのゾンビみたいな男も居て怖いのに、恐怖を上乗せしないでっ!!


「さらに、見切り発車過ぎるよぉ~。何の予定も無しに、衝動だけで行動するのは、これから禁止だからねぇ?」


「で、でも。今すぐどうにかしないと、第二王子の精神状態が・・・。さすがに、見過ごせ無かったんだよ。」


それにアリスちゃんの恋も、応援したかったし。


「イザベラ~?ちょっと落ち着いて考えようねぇ?ゲーム開始は何歳の時?」


ゲーム開始は、魔術学院入学と同時だから・・・


「15歳です。」


「そこに第二王子はぁ?」


「ん?居るけど?」


「つまり、第二王子は15歳で学院に通って、授業を受けられるし、恋愛するような精神的余裕も、まだその時点で有るわけだよねぇ?」


あ、あれ?


「さて、今すぐ拐ってきて、どうにかしないと、いけなかったでしょうかぁ?」


もしかして、別に急ぐこと無かった?


「い、いや、でも、この状態を見てっ!!この全てに無反応で、口許だけ微笑んでいる、虚ろなこの状態をっ!!だいぶ参ってるよ?この子っ!!ステータスも状態異常で、『精神衰弱状態』だしっ!!」


ぶっちゃけ、見た感じだけで判断すると

『衰弱』を通り越して、別の世界に精神が旅立っている気がする。


「それ、『並列思考』で、精神を避難させている状態だと思うよぉ?分かりやすく言うと、”スキルを使ってまで現実逃避している状態”っていう所かなぁ。片方の思考で『読心』を受け流して、片方の思考で精神を休めてるんだぁ。『不眠』が重なっているから、更に気が遠くなっているねぇ。」


それで、こんなに隙だらけを通り超した、不気味な状態に成っているんだ・・・。


「そして、無意識での行動だろうけど、第二王子は自分の現状がスキルの所為だと分かっていない状態でも、着実にスキルを制御して行っているねぇ~。」


「えっ?!そうなの?」


「”最大発動距離”が半径10Kmの常時発動スキルが、半径5Kmでしか発動していないの、おかしいと思わなかったぁ?操作が全く出来ないなら、最大で発動しているハズなんだよねぇ。」


・・・・・。

そんな所まで、真剣に見て無かった。


「うん。見てなかったんだねぇ・・・。まぁ自力で、原因が分からないまま、手探りで制御していくのは、ココが限度かなぁ。」


その後、ウルシュ君と話し合った結果

第二王子には『呪い』の正体が『スキル』で有る事を認識させて

それをふまえて、これからどうしたいのか「第二王子自身の意志」を確認してから、先の行動を考える事にしました。


ぶっちゃけ、ここまで、本人の意志は無視して事を進めて来たからね。

そろそろ本人の意見を聞かなきゃね。


「でも、第二王子と、どうやって意思の疎通を図るかが問題よね?」


「一時的にでも、こちらの世界に戻って来て欲しいけどねぇ・・・。あぁ、でも戻ったら戻ったで、『読心』で聞こえて来る声がうるさくて、会話にならないかもねぇ。」


そうよねぇ、常にガヤガヤしている雑踏に居る様な状態の人と、会話するのは難しいかも。


「とりあえず、会話が可能かどうかは置いといて、こちらに意識を向けて貰わないと話にならないわね。意識が、こちらに向きさえすれば”筆談”って言う手も有るし。」


そこでウルシュ君と一緒に、肩を叩いてみたり揺さぶったりして、第二王子の意識をこちらに向けさせようと頑張るが、全く上手く行かない。


「なかなか、しぶといよねぇ・・・イザベラ、何か無い?こちらに意識を向けさせられそうな物。」


「う~ん?何かって言われても・・・悪口言ってみたりする?」


「え?悪口?」


「やぁーーーーーいっ!!お前の髪の毛、メタリックーーっ!!」


「・・・・凄いブーメランだねぇ?第二王子とイザベラ、髪質も色もほぼ同じだからねぇ?」


そうだった・・・。

私の髪の毛、元王女のお母様譲りの、まるで金属みたいな髪色だ。

ちなみにロゼリアル王家の血筋には、この、超合金みたいな金髪が多いのよね。

超合金みたいな色味に反して、軟らかいネコっ毛だけど。


「今日から、フルメタル・レディって呼んでくれる?」


「呼ばないよぉ・・・。あと、僕が言いたかった『何か』って言うのは、【クローゼット】にレモネードみたいな、状態異常やこの状況をどうにか出来そうなアイテムがないかな?って事なんだけどぉ。正直ゲームの僕にお願いするみたいで、複雑だけど。」


あ・・・。最近全然【クローゼット】を使ってないから、存在自体を忘れてたわ。

アイテム使う機会が無かったし、いつか売りさばこうと思っていたから、仕舞い込んでいたのよ。


何が有ったかしら?

飲み食い系は、本人の意識がほぼ無い事で摂取させられないから、装備系かな?


「えーと、回復力UPのブレスレットだと、この『体力低下』に良さそうね。回復できる数値と回数の限度が有るけど、沢山在庫が有るし、結構良いかも。回数制限付きで状態異常無効の効果がある、お守りや髪飾りが有るけど、状態異常の原因が外的な物じゃなくて、自分のスキルによる物だから効果は期待できないわねぇ・・・」


「状態異常の原因に成っている、このスキルをどうにかしない事には、どうしようもないねぇ。」


「あっ!!ウルシュ君っ!!良いのが有ったよっ!!」


「ん?使えそうなのがあったぁ?」


「うんっ!!これならすべて解決だよっ!!『ダッタン人の矢』これで攻撃すれば、敵は一時的にすべてのスキルが封じられて、発動しなくなるんだよっ!!第二王子のLvなら、最高7日間はスキルを封じられるはずっ!!」


7日間もスキルを封じる事が出来れば、話し合いも出来るし、第二王子はスキルに邪魔されずにぐっすり眠れて体力も回復っ!!不眠も解消!!そしたら、精神衰弱状態からも浮上できるってもんですよっ!!


「却下。」


「なんでっ!?」


「なんでって・・・・。第二王子のLvだと、その矢で射られたら死ぬでしょ。却下。」

※ダッタン人:北アジアのモンゴル高原辺りから、東ヨーロッパのリトアニアにかけての広い地域で活動した、様々な民族を指す民族名称。

子供の頃、『ダッタン人の矢は早い』って言う話を聞いた事が有る。真偽は不明。(調べても出て来ない)

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― 新着の感想 ―
『ダッタン(韃靼)人の矢よりも速く』の出典(とゆー表現で良いのかは不明ですが)は、ガラスの仮面で主人公が真夏の夜の夢のパック役を演じる際の台詞として出て来てました。「自分、こんだけ速いんだぞー」って自…
[良い点] 暴走列車イザベラ!ウルシュ君のがんばり! [一言] 楽しい……読み進めていて大変楽しいですありがとうございます!
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