妖怪サトリ計画
第二王子を、幽閉させずに済むであろう令嬢候補の中に
自分の名前が含まれている事に、目を輝かせたアマリリス嬢は、その場で立ち上がり宣言した。
「私っ!!クリストファー殿下の妻に成りますっ!私は、クリストファー殿下を、ずっと傍で支え続けますっ!!」
アマリリス嬢は、キラキラした夢見がちな乙女の表情だったけど、その中に強い信念と覚悟が見えた。
周囲の大人達から見れば、事情なんて何も分かっていない幼い少女の、
夢見がちな恋心の末の戯言だと、軽くあしらわれるかも知れない。
でも私は、ゲームの展開を知っている。
この子の想いは、大人になっても変わらず第二王子へと向かっているのを知っている。
よし、アマリリス嬢に、全面協力しようじゃないですか。
それも、アマリリス嬢が将来、今の決断を後悔する様な事が無いように、二人が幸せになれる様に、全力を尽くしますよっ!!
アマリリス嬢は、私の破滅フラグを折ってくれるのですから、その位のお返しはするべきよねっ!!
第二王子の気持ちは、知った事ないけどっ!!
献身的な可愛い女の子の純粋な思いの為にっ!!
そして、私とウルシュ君の、幸せ商人夫婦生活の為にっ!!
なら、まずやるべきは、第二王子であるクリストファー殿下の、状態を見る事だよね。
正直、まだ情報の収集は足りて無い気がするんだけど、アマリリス嬢の為に急ごう。
多分、お茶会が終わる前に、アマリリス嬢の”第二王子に嫁に行く宣言”が王妃の耳に入る筈。
アマリリス嬢の想いは応援したいんだけど、正直、呪いや心の病とかを傍で支えて行くのは、それなりの苦労的なものが有ると思うんだ。
まぁ、それを苦労だと思わない人もいるだろうけど、第二王子の場合、貴族的なシガラミまで重なるから、少しでもアマリリス嬢の人生の波風を軽減しておきたい。
じゃないと、なんか私の破滅フラグをアマリリス嬢に押し付けたような気分で、スッキリしないし。
と、いう訳で、発動ですよっ!!
進化を遂げた《強欲》改め、《強欲王》様っ!!
いざっ!!クリストファー殿下のステータスチェック!!
《ステータス》
人族:クリストファー・ロン・ロゼリアル(6) Lv:4
HP:1/3
MP:56/60
【*状態異常* ・精神衰弱 ・体力低下 ・不眠 】
身分:
ロゼリアル王国 王家 第4子
ロゼリアル王国 第二王子
《職業スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[剣士の卵Ⅴ][魔術師の卵Ⅳ]
《継承特殊スキル》
[傲慢王の耳]▽
【*常時発動型スキル* 現在、半径5Km範囲でスキル展開中】
※《嫉妬》 発動可能。
《特殊スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[宣誓魔法Ⅰ]
《固有スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[HP消費緩和Ⅱ]※発動中
[並列思考Ⅲ]※発動中
[聖属性魔法Ⅰ][封印魔法Ⅰ]
《スキル》 *レベル最大:Ⅹ
[火属性魔法Ⅰ][水属性魔法Ⅰ][風属性魔法Ⅱ][光属性魔法Ⅰ]
[火属性耐性Ⅰ][水属性耐性Ⅰ][風属性耐性Ⅰ][闇属性耐性Ⅰ]
[毒耐性Ⅲ][魅了耐性Ⅱ]
[忍耐Ⅷ]※発動中
※[忍耐Ⅷ]に対し《嫉妬》 発動可能。
・・・・・・。
ご・・・傲慢王の・・・・・み、『耳』だとっ?!
『眼』じゃ無いのっ?!
攻略対象のキャラだし、何かしらのスキルは有ると思ったんだよっ!!
そしてそれは、《継承特殊スキル》で『大罪王スキル』なんだろう。と予想していたよっ!!
『大罪王スキル』以外に《継承特殊スキル》が有るのかどうかは知らないけどっ!!
だけど、私は勝手に『大罪王スキル』シリーズが『七大罪の魔眼』スキルの上位版だと思っていたから
『大罪王スキル』も『眼』に関するスキルだと思い込んでいたわ。
そっかぁー。耳かぁ・・・・。
これ、もしかして『〇〇王の右腕』とか、『〇〇王の口』とかでシリーズ構成されているのかなぁ・・・。
でも、これで簡単に分かったね。
王家の呪いである『幻聴』の正体は、この、傲慢王の『耳』に有るな。
常時発動型スキルかぁ・・・・。
これ、ウルシュ君から聞いていた筈なのになぁ・・・・。
[強欲王の眼]が、常時発動型スキルだった、って。
つまり、他の『大罪王スキル』も同じように、常時発動型スキルの可能性が高い訳だ。
うん?・・・・と、言う事は・・・・。
これ、ウルシュ君と同じように、精密操作が出来るように成れば、常時発動を遮断出来るんじゃないの?
っていうか、この[傲慢王の耳]って、半径5Km範囲で発動しているみたいだけど、どういうスキルなんだ?
あ、▽マーク有ったわ。詳細確認しておこう。
[傲慢王の耳]▽
傲慢王の前には、下民に一切の偽証、秘匿は能わず。
その心の内すら、傲慢王の物である。
※最大距離10Km圏内に居る、人族の『読心』が可能。ただし自分より低Lvの者に限る。
圏内であれば、『読心』に物理的な距離・障害物は意味をなさず、聞く事が可能。
えぇーーと・・・。
つまり、”半径5Kmにいる、自分より低Lvの人達の心の声が、24時間途絶える事無く、聞こえ続けている”って言う事よね?
しかも、距離とか、壁とかの障害物が意味が無いんでしょ?
大勢が一斉に、耳元で喋り続けている状況よね?
そんな状態じゃ誰でも病むわっ!!!
むしろ現時点で、『精神衰弱』と『不眠』だけで済んでいる事が凄いよっ!!
あっ!!だから、6歳にして『忍耐』と『並列思考』のスキルレベルが、こんなに高いのか・・・。
今はまだ、ギリギリ耐えているみたいだけど、第二王子の心が折れるのも、時間の問題よねぇ・・・
スキルの常時発動をこのまま放置して行けば、第二王子の経験値が上がってしまう。
第二王子の経験値が上がれば、当然Lvも上がり、聞こえる心の声が増える。
悪循環やぁ・・・・。
その代わり第二王子が、このスキルを使いこなせるように成れば、大団円!!
すべてが丸く収まるわけですよっ!!
アマリリス嬢は王子が病んでいくのを見ずに済むし
主人公も幽閉されずに済むっ!!
ちなみに、第二王子がこの能力を使いこなせれば、悪役転生物でテンプレの
”やってもいない虐めの、濡れ衣を着せられちゃうイベント”も不可能になるわけですよっ!!
タイムリミットは、第二王子の心が折れるまでか、Lvが上がるまでっていう所かしら?
うわっ!!残り時間が分かりづらっ!!
直ぐに始めようっ!!今から始めようっ!!
名付けて『第二王子:妖怪サトリ計画っ!!』
ウルシュ君が『妖怪ぬらりひょん』だから、妖怪繋がりで安直にネーミングしたけど、分かりやすくて良いよね?
ちなみに、計画は単純明快っ!!
『大罪王スキル』の常時発動を既に制しているウルシュ君に、第二王子を弟子入りさせるだけの簡単なお仕事ですっ!!
勝手に相談なく、ウルシュ君を巻き込むのは申し訳ないけど
他に『大罪王スキル』に詳しい人なんて、知らないもん。
まずは平和的にお茶会から王子を連れ出し、ウルシュ君に面会させよう。そうしよう。
正式な第二王子の外出許可を取るには、時間が勿体無いっていうか、間に合わないかもしれないから、非公式な外出になるけど
そこはホラっ!!協力してくれそうな人は、既に3人はいるしっ!!何とかなるでしょうっ!!
では、始めましょう。
レッツ☆第二王子 誘拐っ!!
※妖怪サトリ:漢字で書くと「覚」←諸説あり。
日本の妖怪のひとつ。人の心を見透かす妖怪。色が黒く毛が長い姿をしていると言われ、害をなさないとも、次々に考えを言い当て隙を見て取って食おうとするとも言われている。