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留学してきた先輩はいたよ

まず、ローブを受け取った日に禁書庫に迷い込んだ時の状況説明をした。

そして禁書庫には、七つのロックコードを解除しなければ閲覧する事の出来ない『最重要文書』というものがあること。

その『最重要文書』はおそらく【虚言王】が隠したとされる【魔王の手記】ではないかと睨んでいる事を説明した。


その説明を聞きながら、ウルシュ君はいくつかの確認を繰り返す。


「ふーん、なるほどぉ…… そしてそのロックコードが、イザベラが前世で暮らしていた国の言語の【日本語】だったってことなんだねぇ? そして禁書庫に入るために解読する異世界文字も【日本語】だったんだねぇ? 」


「そうそう。この世界の『桜花列島連合国』と『日本』の文字や言葉は似ているところがあるんだけど、明らかに【日本語】だし、内容も前世の私が生きていた時代前後の文化に関係していたんだよね」


そこでウルシュ君と色々意見交換を始めた。

ロックコードの一つが【異世界転移】である事から、確実に日本からこの世界に渡ってきた人がいる。

その人物と同一人物かは分からないが、禁書庫に日本に関りを持つ人物が関与している。

『桜花列島連合国』の文字や言葉が『日本』に似ている事も、もしかしたら関係あるかもしれないけど、そこまで話を広げると収拾がつかないから、とりあえず置いておこうという話になった。

ただ、それについてウルシュ君は一つ気になる点をあげた。


「イザベラの【クローゼット】に入っていた、ゲームウルシュが創ったっていう『桜花風月』だけどぉ、テーマが『桜花列島連合国』だよねぇ。もしゲームウルシュが数ある平行世界の大賢者の誰かと同一人物ならぁ、なにかしら理由で『桜花列島連合国』の文化に触れたって事だよねぇ? 」


「そうだね。でも『桜花列島連合国』だけじゃなくて、『牙楼帝国』とか『ザハール王国』テーマのアイテムもあるから、なんら不思議はないと思うけど」


「おなじ大陸ならまだ分かるよぉ。でも、一番安全な入国方法が転移門しかない島国の技術を、わざわざ学びに行ったのかなぁ? 転移門は古代魔道具だから使用許可の審査はかなり厳しいんだぁ。壊れた時の修復方法も確立されてないから年単位で稼働スケジュールが組まれているしぃ」


「交易で渡ってきた物とか資料で独学で学んだとか? 」


「そういう技術系の資料は渡って来ないんだぁ。この国の工房とかお店とかでも『門外不出』の技術ってあるでしょ? 特に『桜花列島連合国』は、そういう技法を国外には出さないんだぁ。だって『連合国』だからねぇ。複数の島国の集まりだから、それぞれの島国で外交に対する意見が分かれるからねぇ」


「あー…… つまり、一部の島国が輸出しても良いって思ったアイテムがあっても、同じような技法や技術を持った他の島国が輸出を嫌がったりして意見が一致しなかったら却下されるって言う事? 」


「そうだよぉ『桜花列島連合国』は、連合会議で満場一致しないと駄目なんだぁ」


「それだと、ほぼなにも輸出されない気がするんだけど…… 」


「イザベラは食べ物関係以外で『桜花列島連合国』産の商品を見かける機会はある? 」


「食器とか…… あ、これも食べ物関係かな。民族衣装は……『桜花列島連合国の人』が着ているものしか見た事ないし、武器も同じく。織物は王族や貴族が手に入れた物しか見てないし……。あれ? ほとんど見ないね」


「『桜花列島連合国』風のアクセサリーとか小物は市場にあるにはあるけどぉ、本物の『桜花列島連合国』産の商品は殆ど手に入らないんだぁ。各国の王侯貴族しか手に入れられない希少品なんだよぉ」


「それを考えると本当に疑問ね。どうやってゲームウルシュ君は『桜花列島連合国』の刀の創り方を学んだの? 」


「この大陸では文化や技術が知られていないからぁ、興味を持つのは分かるよぉ? でも、その謎技術を習得するには、実際に渡る必要があると思うんだけどぉ、正直ゲームウルシュにそんな暇はないと思うんだよねぇ? 手続きもすごく複雑だからぁ、僕達みたいに卒業して結婚したら世界一周しながら行商しようっていう夢や目的が無いのなら、『僕だったら』わざわざ刀創る技術を学ぶため『だけに』行かないよぉ。そこまでして創りたいようなアイテムでも無いしぃ」


「わざわざ複雑な手続きをしてまで、『桜花列島連合国』に行く必要があったんじゃない? 知らないけど」


「なにが目的だったのかなぁ? 」


「少なくともゲーム本編に、ウルシュ君が『桜花列島連合国』に技術習得の為に留学していたっていう話は出なかったね。まぁメインキャラじゃないから当然だけど……。 あ、でもVr2の攻略対象に『桜花列島連合国』と思われる国から留学してきた先輩はいたよ」


「思われる国ってどういうことぉ? 」


「厳密には東方から留学してきたっていう設定だったからね。そのイベントで貰えるアイテムが『桜花風月』だから、あの先輩はほぼ間違いなく『桜花列島連合国』出身だと思ってるよ」


「ちなみにその先輩の身分は? 」


「え? 身分? 武士っぽい感じだったけど、具体的な身分は覚えてないよ。武士だったんじゃないかな? 正直攻略対象に興味なかったし」


全ルートクリア後に解放される隠しキャラがウルシュ君である事に一縷の望みをかけて、ストーリーをほぼ読み飛ばす勢いで進めていったから記憶に残っていない。

ちなみに完全スキップしなかったのは、ストーリーやセリフの合間に重大な攻略ポイントとなるヒントが紛れ込んでいたりするからだ。スキップしてそのヒントをつかみ損ねると詰むゲームだ『ラブ☆マジカル』という乙女ゲームは。

そもそもSAN値回復アイテムがあって、連続誘拐犯の弾幕攻撃をかいくぐるような乙女ゲームだぞ? 油断なんて出来ない。


「うーん。その先輩、引っ掛かるなぁ。その先輩をクリアするとどうなるの? 」


「マリエタは先輩と一緒に『桜花列島連合国』に渡って行って、『桜の聖女』になって先輩と結婚するよ。厳密には『東方にある先輩の母国に』だけどね」


ときどき完全に『桜花列島連合国』と決めつけて話しちゃうけど、ゲーム設定上は『東方の国』だ。

っていうか『桜の聖女』っていう身分にも『桜』って付いてるから、ほぼ確定でしょうね。

ピンク色の髪のマリエタだから、『桜の聖女』って似合うよね。どんな役割か知らないけど『桜の聖女』


「今度、マリエタ嬢に桜の聖女になった時があったか、あったとしたらその時のことを覚えているか聞いて貰って良いかなぁ? 」


「そう言えば、これまでマリエタとの会話で、あの先輩の話題が出た事ないね。聞いておくね」


もしかしたら受け取ったノートに書いてあるかもしれないけど。


「ところでウルシュ君はどうしてその先輩が気になるの? 」


「これまで話していた『桜花列島連合国』の印象からぁ、ただの一般人が留学に来れると思う? 」


「……。来られなさそう。っていうか現実でも過去に『桜花列島連合国』から留学生が来たっていう話聞いたことないかな」


「ゲームの設定とやらでも『東方からの留学生』って出身国をぼかしているのも気になるよねぇ」


ちなみにロゼリアル王国の東北側から、北にある隣国ディアナ王国の東から北にかけて海がある。その海を東方向に渡ると『桜花列島連合国』があるとされる。


ディアナ王国の北側の海を北方向に渡るとゴーゴニャス大陸があるとされている。正しくは北西方向だけどそれは置いとく。


まあ何が言いたいかと言うと、ロゼリアル王国は東北側しか海に面していない。

ロゼリアル王国はガルファシア大陸の最東端ではないのだ。同盟国としては最東に位置するけど、大陸全土からみたら最東ではない。ロゼリアル王国の東側にそびえる山脈を隔てて隣国があり、そのまたもう一つ先の国が最東端だ。ロゼリアル王国には陸続きの国が東側に二つ存在する。最東端の国はロゼリアル王国からみて東南に位置するけども、細かいことはいいんだよ。ガルファシア大陸の最東端はその国。


つまり『東方からの留学生』の設定が指す東方の国が『桜花列島連合国』を指しているとは限らない……んだけども、文化的に考えてもまぁ間違いなく『桜花列島連合国』で合ってると思う。

山脈の向こうの東の隣国は、マヤ文明とかなんかそんな感じの遺跡っぽいっていうかジャングルっぽいっていうかピラミッド的な何かこう…… なんかこう、こう…… もう雰囲気で察して。

山脈隔ててるし同盟組んでないしであまり交流が無いから詳しくなくて、とにかくよく知らないから説明が難しいのよ。前世のマヤ文明についても詳しく知らないから、正直雰囲気で例えに出したし。


そのまた向こうの最東端の国はサウザード国の隣国でもあって、文化的にサウザード国に近い感じ。


つまり大陸を同じくする東の二国は、『桜花風月』や武士風の攻略対象の先輩とは印象が一致しない。

正直バレバレなのに、なんで東方の国ってぼかして出身国を明言しないのか。


指摘されて考えてみれば、ウルシュ君が引っかかるのも無理はない。確かに不審。

武士っぽいキャラだから武士だと思い込んでいたけど、武士なら騎士学校に行きなさいよ、なんで魔術学院なのよっていう疑問も感じるよね。

さらに思い返してみると、先輩を武士だと思い込んでいたのには、ブライアン以上に魔法使っている印象が残って無いのも原因の一つだ。武士っぽいのに魔法使って戦うんかーい!! って言うようなギャップ設定があったら流石に記憶に残っているはず。


確かに魔法戦士科という科はあるよ? でもわざわざ複雑な手続きを踏んでまで魔術学院に留学させるなら、刀振り回す武士キャラじゃなくて陰陽師系のキャラじゃないの? ここ魔術学院ぞ? 魔術寄りの生徒を優先して留学させなくてどうすんのよ。


あれ? 考えれば考えるほど怪しいわ。


考え込んでしまった私に、ウルシュ君は声をかける。


「まぁ、今回の禁書庫とは違う問題だからぁ、この疑問は後日にまわそうかぁ。答え合わせも現状では出来ないからねぇ」


「そうだね。マリエタの話を聞かないと情報足りないし、今考えてもしかたないね」


「ただ、ゲームウルシュか平行世界の大賢者が『桜花列島連合国』に何かしらの関心を持っていた可能性を考えていた方が良いかもねぇ」


頭の隅に置いておこう。ゲームウルシュ君とは言え、ウルシュ君関連の情報だから、多分忘れないと思いたい。

正直、本物のウルシュ君情報じゃないから、覚えておく自信はちょっとしか無いけど。


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― 新着の感想 ―
[一言] 物凄く面白かったです。 一気に読みました。 続きがすごく気になります。 待ってます。応援してます。
[良い点] 非常に興味深い、素晴らしいプロットとキャラクターがあります。 [気になる点] もっとウルチくん目線で書いた方がいいよ。 [一言] この素晴らしい物語をありがとう、続きを待っています
[一言] 続きを正座待機でお待ちしておりまーーーーす!!!!!!!
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