表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/145

私のお尻で鼻骨が折れた?!

これまでのあらすじ。


転生して大好きなサポートキャラのウルシュ君に出会ったイザベラは、初対面でプロポーズし婚約。

婚約した二人は、第二王子を誘拐したり、侯爵令嬢を爆弾魔にしたり、連続誘拐犯と街中でドンパチしたりしながら成長し、無事ゲームの舞台である魔術学院に入学を果たした。

入学してからも学院の大規模火災だとか、謎の禁書庫の発見とか事件に巻き込まれつつ、ようやく初授業となる。

食堂でルーシーとトレヴァーについての情報を手に入れたイザベラ達は、錬金術科の学科棟へと移動した。


※注意 : 今回はラッキースケベ(?)回 

さて。午後から初の錬金術科の授業だ!! 顔合わせだ!! と勇んで錬金術科の学科棟に移動すると、新入生は『地上』にある校舎の方に通された。


火災で燃えた校舎は、外観だけは元通りになっていたけど、中に入ると体育館のような広い空間になっていて、水耕栽培で薬草が大量に育てられていた。

どうやらイベントごとに破壊される校舎なので、完全に復元させずにハリボテの校舎で良いだろう。という事で職員会議で話がまとまったらしい。

他の学科もハリボテとして外観だけ復元しているとのこと。


「燃える前も、ウルシュ君が校舎を吹き飛ばしちゃったもんね。でも、この薬草畑化は予想外」


横に立つウルシュ君にコッソリ話しかける。ウルシュ君はめぼしい薬草を収穫して、ローブの内側のポケットに詰め込みながら答えた。


「魔法戦士科の校舎の中は、戦士科の生徒が自作した巨大なアスレチックを置いてるらしいよぉ」


「いや、待ってウルシュ君… なに勝手に収穫してるの? 大丈夫なの? って他の生徒も収穫してる?!」


ウルシュ君の薬草泥棒に驚きながら、そっと周囲を見渡すと、他の一部の生徒もせっせと薬草泥棒にいそしんでた。


「イザベラも手伝ってくれる? あの辺の白い葡萄みたいな形の花を咲かせてるの、貴重な薬草なんだよねぇ… 栽培している土台ごとクローゼットに回収してくれるかなぁ?」


当然のように薬草泥棒を手伝わせようとするウルシュ君に驚きつつも、ウルシュ君がする事にはきっと意味があるのだろう。素直に従って、指定された薬草を水耕栽培の土台ごとクローゼットに収納していく。


どうも、こんにちわ。婚約者に指示されて、学校の薬草を設備ごと窃盗する、悪役令嬢のイザベラさんです。


「って、え? あの… ウルシュ君? 手伝うけど、手伝っているけども、なんでか教えてくれる?」


「イベントごとに他の学科から襲撃されて破壊されるんだよねぇ…。この学校の学科棟」


めっちゃ急いで薬草泥棒した。

指示されていない薬草と設備も、慌ててクローゼットに収納した。

よく状況を理解していない新入生達も、頭に疑問符を浮かべた表情で、首を傾げながらも手伝ってくれた。

良い子達だね。でも、なんか騙されやすそうだから将来気を付けて。


校舎内はガランとした体育館のような状態に変わった。すると直ぐに、校舎の外から砲撃音が聞こえ地響きが伝わってきた。

どうやら危機一髪、薬草は守られた(?)ようだ。

新入生歓迎会の大騒ぎリターンズが開幕された様子に、集まっていた新入生達はざわめきだした。


混乱が広がって、新入生が挙動不審になり始めた時、ようやく『地下』の校舎から先輩が数人飛び出してきた。


「くっそ! もう『新人戦』が始まりやがった! 戦士科や魔術師科と違って、こっちの新入生は即戦力になりゃしねぇってのに、容赦ねぇなあいつら!!」


「っていうか薬草の回収はやっ!! 機材ごと無ぇぞ?!」


なんか先輩の言っている『新人戦』は、私の知ってる『新人戦』とは違う気がする。っていうか絶対違う。

あと、機材ごと薬草回収したの、ほぼ私です。ごめんなさい。


そんな中、新入生の避難誘導が始まった。

二手に分かれて、地下校舎へと次々と降りていく。片方は階段通路。もう片方は梯子かポールで降りる通路だった。実は前から有ったようだけど、私は階段の通路しか知らなかった。


これ、ポールで降りる方が、出動する消防士さんみたいで楽しそう。

迷わずポールの通路を選んで並んだ所で、ウルシュ君からスカートのすそをベルトで縛られてしまった。

ある意味バルーンスカートみたいになったスカートを見て、困惑しながらウルシュ君を見上げた。

するとウルシュ君は苦笑いをしながら、スカートを縛った理由を説明する。


「スカートのままポールで滑り降りたら、下に居る人からスカートの中が見えるかもしれないでしょぉ? 僕が先に降りるから、その後降りてきてねぇ。地下1階の所で僕が引き寄せるから、着地の心配はしなくて良いよぉ」


「え…ウルシュ君、これ縛られて動きづらい… と言うか、ポールに足を絡められないんだけど…」


「大丈夫だよ。イザベラなら腕力だけでポールに捕まって降りられるからぁ。あとポールに足を巻き付けられると、刺激が強くて僕が夜眠れなくなるから、やめてねぇ」


刺激が強いってなんだ? 衝撃の事かな? ポールに振動が伝わって、ウルシュ君が降り辛いってこと?

良く分かんないけど、腕力だけで降りられるっていうのは間違いないし、まぁ良いかな。


順番が回って来て、ポールまでピョンピョンと飛び跳ねて移動すると、ウルシュ君の後にポールに掴まりポールを伝って下に降りる。

勢いをつけすぎて地下2階まで降りそうになったけど、約束通りウルシュ君が引き寄せてくれたので、無事に1階に着地することが出来た。


二人並んで、次に降りてくる人の邪魔に成らないようにとポールから離れていると、既に地下一階に降りて待機していた生徒が数人駆け寄ってきた。


「あ、ウルシュさん。学科長が探していましたよ。ゴーレムの起動と、外への搬出に関することで用事があるとかで、一番下の階で待っているらしいです」


「そうなの? もうそろそろ自分達で何とかして欲しいんだけどねぇ。イザベラごめんね、ちょっと話だけ聞いてくるよぉ。すぐ戻ってくるから待っててねぇ」


そう言ってウルシュ君はポールの上を覗き込むと、上から降りてくる人がいないことを確認して滑り降りていく。


う~ん。待ってるように言われたけど、もう少しウルシュ君と一緒に居たいんだよね。

学科長との話を邪魔しなかったら、近くに居ても良いんじゃないかな? ついて行っちゃおう。


「待ってウルシュ君。私も一緒に行く」


ピョンピョンと慌ててウルシュ君を追いかけて、ポールで滑り降りる。


あれ? そういえば、錬金術科の校舎って地下何階までだっけ?

一番下の階って、どこまで降りればいいんだろう?


とりあえず、下に居るウルシュ君に足が当たらないように、足を上にあげてスルスルと降りていく。

ウルシュ君が、どうやら上から私が降りてきている事に気づいたようで、声をあげた。


「え? イザベラ? あっ!! 待って!! ストップ!!」


ウルシュ君からストップをかけられたが、少し間に合わず、お尻が『なにか』にポフンと着地した。

いや、現実逃避してちゃ駄目だね。

『なにか』じゃ無い。確実に『ウルシュ君の頭』だ。


やらかしたぁぁぁぁっ!! ウルシュ君の頭に、私のお尻が着地した!!


腹黒系ピュア男子と言う、訳わかんない属性持ちのウルシュ君の頭にお尻が乗った!!

そのままウルシュ君の頭にお尻を乗せるという恥ずべき体制で、シュルシュルと下の階に辿り着いた。


後から冷静に考えれば、腕力に物を言わせてポールの途中で止まり、ウルシュ君の頭からお尻を離脱させれば良かった。だけど、その時の私はパニックに陥っていたようで、そこまで思い至らず、ウルシュ君の頭にお尻を乗せたまま、下まで滑り降りてしまった。


無言のまま一番下の階に到着したウルシュ君は、着地した瞬間ガクリとひざまついた。


慌ててウルシュ君の横に着地して、ウルシュ君の横に膝立ちになり様子を伺う。

ウルシュ君は耳を真っ赤にして、俯いて片手で顔面を押さえていた。


「あの、ごめんウルシュ君!! スピード落とせなくて、頭に着地してゴメン!!」


すると、工具を持った先輩達がワラワラと近寄って来て、衝撃的な真実を語った。


「うっひっひ。若奥さんが着地してたの、ウルシュ坊ちゃんの頭じゃなくて顔面だったぜ」


「ウルシュ坊ちゃんが上を見上げた瞬間、その顔面にポスーンって若奥さんのお尻がっ!!」


爆笑する先輩達の足元で、ウルシュ君がどんどん丸まっていく!! 小さくコンパクトになっていく!!

ごめんウルシュ君!! 本当にごめん!!


誰か今すぐシャベルかツルハシを寄こしてぇぇぇ!! 私は今すぐ埋まるための穴を掘らなければっ!!


あとウルシュ君、錬金術科の校舎内だとラッキースケベ遭遇率がアップする呪いでもかけられてるの?!

いや、ごめん。今回のは私の不徳の致すところ!!


「ごごごごごめん、ウルシュ君!! 私がちゃんと下を確認しなかったから」


ウルシュ君の様子を見ようと覗き込むと、鼻の辺りを押さえた手の隙間から血液が垂れていた。


「ウルシュ君っ!! 鼻から血がっ!! ごめん!! 顔面の打ちどころが悪かった?! もしかして私のお尻で鼻骨びこつが折れた?!」


「若奥さん、それ多分スケベ心で頭に血が上って出た鼻血だから、気にしなくて良いぜ」



ウルシュ君が婚約者大好きの思春期男子という事はイザベラも理解しているが、まさかイザベラがポールに足を絡ませている姿だけで夜も眠れなくなるくらいの衝撃を受けるとは、思ってもいなかった。

そんなウルシュ君だからこそ、今回の事はポールうんぬんとか言う問題じゃなくなっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もう、早いとこやっちゃえよw ぷふーw
[一言] 久々に覗きに来てよかった!!!!! 本当に良かったー!!!!!! 幸せ…♡ 次の更新も楽しみにしてます!
[良い点] おーひーさーしーぶーりーでーすー!! 更新待ってました。 ポールに足を絡ませるだけで、寝れなくなるとは…純情すぎてw これからどうなるのやら楽しみです。 色々やらかしつつも先輩達と仲良くや…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ