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結局何なの?

大変お待たせしました。


これまでのあらすじ。

転生して大好きなサポートキャラのウルシュ君に出会ったイザベラは、初対面でプロポーズし婚約。

婚約した二人は、第二王子を誘拐したり、侯爵令嬢を爆弾魔にしたり、連続誘拐犯と街中でドンパチしたりしながら成長し、無事ゲームの舞台である魔術学院に入学を果たした。

入学してからも学院の大規模火災だとか、謎の禁書庫の発見とか事件に巻き込まれつつ、ようやく初授業となる。

その日、友人のギースのクラスメイトが連続誘拐事件の後、ダンジョン『ゼルバンダム』へと行ったきり所在がつかめていなかったギースの姉ルーシー、イザベラ兄トレヴァーと、ダンジョン内で会ったことがあると聞き、当時の話を聞くことになった。

「あれは、そうだな……。俺が八歳に成ってダンジョン内に、数ヵ月間放り込まれた時だったな」


ルーシーとトレヴァー兄様について聞いた私に、ラヴィがそう語りだした。


「普通ならよぉ、八歳に成ると護衛付きでダンジョンの二階層に入って、一ヵ月間ダンジョン内で生活するんだ。それを俺の親父が『お前なら出来る』とか言って、いきなり十階層スタートだったんだよ。普通なら二階層から順に降りて行くのに、初日から俺を連れて二日で十階層まで降りて、数人の護衛と俺を置きざりにしやがって、自分はとっとと地上に帰ってたんだ」


語りながら当時の事を思い出し、怒りが込み上げてきたのか、ラヴィは額に青筋を浮かべて歯ぎしりをした。


護衛の強さも、ダンジョン『ゼルバンダム』の十階層の危険度も分からないけど、とりあえず八歳児が足を踏み入れる場所じゃない事は予想できる。

ウチのダイモン兄様もスパルタだけど、流石に私をダンジョン内に数ヶ月置き去りと言う事は無かった。護衛を付けていてもどうかと思うよそれは。


当時のラヴィ君の苦労に内心同情していると、気を取り直したラヴィが話を続けた。


「で、一ヵ月位経って護衛が半分居なくなった頃だな、出口を見つけられねぇでダンジョン内で彷徨さまよってたら、俺よりも先にダンジョン内で活動していた年上の従兄妹達と合流できたわけよ」


なんで護衛が半分居なくなったのか聞きたい。話が脱線するのは分かっているけど、護衛が半分居なくなった原因が知りたい。聞きたい。

だけど好奇心を押さえつけて、ラヴィの話に耳を傾ける。


「でだ。新入り(ルーキー)の俺に良い所見せようと、はしゃいだ従兄弟の一人がドジ踏んでよぉ。ダンジョン内ランダム転移の罠をぶち抜いて、護衛も従兄妹達も全員ダンジョンのいたる所にバラバラにブッ飛ばされちまってよぉ。クッソ!! 今思い出してもマジ腹立つっ!!」


ラヴィが怒りで身体を跳ねさせ、テーブルと上に乗ったランチのお皿が音を立てて揺れた。

私もウルシュ君もほぼ食べ終わっていたので、お皿の中身が飛び出す事は無かったが、ギースの注文していたランチセットのスープと、ラヴィの注文していた飲み物がテーブルを濡らす。


うわぁ、だけどそれ、大変じゃないか……。


「えっと、全員バラバラって言う事は、ラビリンス君も護衛とはぐれてダンジョン内のどこかに、一人で飛ばされたって事? 同じところに一緒に飛ばされた仲間も無し? ダンジョン内に八歳で一人きり?」


「おぅ。一人で四十八階層までブッ飛ばされたんだよ。あの馬鹿にっ!!」


ラヴィはそう言いながら、今度は拳をテーブルに叩きつける。

その衝撃でテーブルのお皿が跳ねた。ちょっと食器を下げに行っても良いかな?


そう思案していると、通りかかった見知らぬ生徒が私とウルシュ君の食器を静かに回収していった。いや、今の誰だ。


食器を下げていく生徒を、私とギースが困惑しつつ目で追っている中、ウルシュ君は何事もなかったかのようにラヴィに話の続きを促す。


「ねぇ、その話、一体いつルーシーとトレヴァー義兄さんが出てくるのぉ? 休憩が終わっちゃうから急いでくれないかなぁ。正直当時の君の状況はどうでも良いんだよねぇ。イザベラが知りたがってるのはお兄さんのことなんだぁ」


ウルシュ君…。確かにそうなんだけど、この短気そうな少年相手にぶっちゃけすぎじゃないかな。また怒り始めなきゃいいけど…。


だけど私の心配は不要だったようで、ラヴィは何事もなく話を続け始めた。


「んぁ? あぁ、そうだったな…。飛ばされたその四十八階層っていうのが原生林みたいなところだったんだけどよ……」


ラヴィが語り始めるとウルシュ君はローブのポケットからメモ帳を取り出し、記録をつけ始めた。


「なるほどぉ。ダンジョンの『ゼルバンダム』の四十八階層は原生林タイプっと。レアな薬草とかありそうだねぇ」


普段地上じゃお目にかかれない、レアな魔獣や魔物も居そうだね。


「あぁ、原生林風の階層だったんだが、俺がぶっ飛ばされたのがちょうど鉄蟻アイアンアンツの目の前でよ、咄嗟に駆け出したんだが流石に大型の昆虫型の魔物は馬鹿みてぇに速いんだよな」


「鉄蟻は小型でも1Mはあるからねぇ。八歳前後の子供の足じゃまず逃げ切れないねぇ。イザベラ以外」


「そんなに昆虫型の魔物って速い?」


「普通サイズの昆虫ですら中々速いからねぇ。ただの昆虫を巨大化させただけだったら、自分の重さで多少動きが遅くなるかもしれないけどぉ、魔物だからねぇ。重力とか言った物理的な計算を無視した動きするから、大型の昆虫型の魔物は凄く速いし、種類によっては硬いよぉ。鉄蟻アイアンアンツだと、硬いし速いし群れるしで、A級冒険者のパーティーでも苦戦するねぇ」


ラヴィはそんな魔物に追いかけられて、よく生き延びたな。

って、また話が脱線しちゃったよ。ラヴィに続きを促す。


「まぁ、その時に遭遇したのは単体だったんだ。で、追いつかれそうになった時に、男を肩車しながら飛び出してきた女が、鉄蟻を横から蹴り飛ばしたんだ」


……ん?


急に状況が分からなくなって来たぞ?

ちょっと意味が分からない。


「………なんて? 追いついてきた鉄蟻を、誰がどうしたって?」


「だから、男を肩車した女があらわれて、鉄蟻を横から蹴り飛ばしたんだよ。スピード上げて直進してた鉄蟻は、いい具合にぶっ飛んでひっくり返ったんだ。起き上がるまでわずかに時間が稼げるから、そのままその女と並走して逃げたんだけどよ…」


その言葉に、ウルシュ君は頷いて同意する。


「スピード上げると、その分、接地面が減るからねぇ。若干浮いた状態になるから踏ん張りが利かないんだよねぇ。タイミングさえ掴めれば、横方向からの物理攻撃は有効だよねぇ。まぁ鉄蟻を倒すならイザベラ並みの脚力が必要だけどぉ」


待って。着眼点が違う。そこじゃない。もっと気にするべきところが、今の話には合った。


このままじゃ、ツッコミどころにツッコミが入らず話が進んでしまう。私が突っ込んでいかねば。


「その前に、助けてくれた女の人は、男の人を肩車してたの? どういう状況?」


「それが、お前が聞きたがってた、ルーシーって奴と、お前の兄貴だ」


いやいやいや……。

まぁ、その二人の話を聞いていたわけだから、その二人が話に登場するんだろうけど、登場の仕方が斜め上だった。

つまりなんだ。

鉄蟻を蹴り飛ばしたのが、ギースの姉であるルーシー。

そしてそのルーシーに肩車されたのが、我が兄トレヴァー、と。


え? 何してんの二人とも。なんでそんな状況に?


混乱している私を余所に、ラヴィは話を続けた。


「で、並走して走って逃げてる最中に、走る女の肩の上でグラグラ揺られながら、お前の兄貴が俺にドライフラワーの束みたいなのを差し出して叫ぶんだよ『早く!! この腰ミノを着けるんだっ!!』つって」


「ごめん、なんて? ウチの兄様がなんて?」


「だから急に、ドライフラワーの腰ミノを俺に向けて差し出しながら、この腰ミノを着けろって強要してきたんだよ。キモイから速攻で断った」


…いや、分かるけどさ。

女性に肩車されて並走してくる男から、急に腰ミノ着けろって言われたら、困惑するし怖い。私でも意味が分からなさ過ぎて断る。


「そしたら、色が気に入らねぇのか、今は人気色の青と赤は手持ちにないから、この黄色ベースので我慢しろって、斜め上の説得してくんだよ」


うん。斜め上だよね。それじゃあ腰ミノの必要性が何一つ理解できないよね。


「その腰ミノって結局何なの?」


「なんかお前の兄貴も混乱しててよぉ、中々会話が噛み合わなかったんだけど早い話が、腰ミノはお前の兄貴が作った、その階層の虫除けの効果がある植物を組み合わせて作ったアイテムみてぇなもんだったんだよ。だったら初めからそれを言えって話だ」


それを聞いて、よくよく観察すると、ルーシーとトレヴァー兄様も色違いの腰ミノを着けていたらしい。


そこにウルシュ君が、首をかしげて疑問を口にする。


「その間、ルーシーは何も言わなかったのぉ?」


「あ? あぁ女のほうな。走りながら延々と、何かの肉の串焼きを喰ってたな」


元伯爵令嬢のルーシーが野生児みたいになってる……。


「なんでウチの兄様は、肩車されてたの?」


「お前の兄貴は、どっちかというと文官系だったんだろ? 後々聞いた話だと研究職だったんだろ? デスクワークばっかりしてた男が、原生林の中上手く走れるかよ」


そういえば兄様は研究室に泊まり込んで、ゴソゴソしてるタイプだった。

ダンジョン内を駆け回れるはずが無い。

むしろ、魔術師団長を輩出するような一族の当主になろうと、血反吐を吐くような努力をしてたルーシーのほうが、体力や戦闘力があると思う。


兄様……。ぶっちゃけ足手まといになってない?

いや、精神面での支えくらいには……なって……たら良いなぁ…。


「その後、ダンジョン踏破の為に組まれた隊の本拠地に連れてかれたんだよ。で、補充部隊が五十階層の転移魔法陣から地上に戻るっていうから、それにくっついて無事地上に帰って来れたんだ。だから、その時は二人は生きてたな。その後は知らねぇ」


降りたんだ…。更に二階層下に降りたんだ…。


確か、当時の段階では四十六階層までしか足を踏み入れられてなかったんじゃなかったかな。

その状況で、五十階層まで行くのは凄いなぁ。

ちなみに現在は六十三階層まで進んでいるらしい。一体『ゼルバンダム』は何階層まであるんだろう。

最下層まで行く気はないけど、ちょっとだけ見に行ってみたい気もする。


そこまで話したところで、時間切れが来て、午後の授業を受けるためにラヴィとギースの二人とは別れた。

ウルシュ君と一緒に錬金術科の学科棟へと向かう。

さて、これから錬金術科の初授業だ。


いろいろあって、まだまだ亀更新です。

待っていて下さっている方々には、本当にご迷惑をおかけします。

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