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ウサギは鳴かないから静かだもんね。

クラスごとに廊下に出て整列する。今から新入生に学院内の施設を案内、説明してくれるらしい。

この世界の学校は、日本の学校みたいに背の順で並んだり、出席番号順で並んだりといったルールが無いので、皆好き勝手にガヤガヤ言いながら並んでいます。

国中から魔力を持った子達が集まっている上に、他国からの留学生も居るから、ぶっちゃけまとまりが無いです。

まぁ今年ようやく十五歳っていう子供から大人に変わるような、不安定かつ何でも楽しい時期なので騒がしくても仕方が無いね。

コレが三年生になる頃には、クラス、そして学科ごとで一致団結するらしいので、ちょっと今から色んな意味でドキドキが止まらない。この動物園みたいな状況から一致団結するって余程だよ? 

やっぱり魔物討伐遠征合宿とか、学科対抗戦みたいな運動会や文化祭で、一致団結しなくては生き残れないような目に遭うのだろうか……。


ちなみに皆さん!! この学院、一学年に二十四クラスあるにも関わらず、私はウルシュ君と同じクラスになりましたよっ!!

と言っても、婚約者同士は基本的に同じクラスに振り分けられるらしいから、当然と言えば当然なんだけど。ちなみにハント先輩みたいに複数の婚約者が居る場合、同じクラスに成れるのは正妻予定の人だけとか。


それは置いといて。私とウルシュ君はこれから、通常授業のクラスで一緒。錬金術科の授業の時は階は違うけど一緒。ずっと学院生活の間近くにいられるわけです。最高だね!!


しかし残念ながら、アリスちゃんクリス様ペア、マリエタ、ギースとはクラスがバラバラになりました。

でもマリエタとは錬金術科で会えるからね。


ちなみにマリエタから話がまだ聞けていない。と、いうのが……なんと。

マリエタ、何度もループしすぎたせいで、記憶があいまい過ぎて、もはや自分でも何が何だか状態。そのため説明が難しいらしい。

ループの内の何回かは、お婆ちゃんに成った事もあるらしく、逃げ回る生活をした何回かは、精神や脳にストレスがかかって精神状況が悪くなったり、生活環境が悪くて若年性の認知症みたいになった事もあるらしい。

多分、精神だけ百年以上生きていると思われる。

穏やかな人生だったなら記憶の混濁もそこまで無かったんだろうけど、マリエタは人生ハードモードだからね。どれだけの事件イベントに巻き込まれれば良いのだろうか、っていうレベルでトラブルが舞い込んで来るから、しょうがないと言えばしょうがない。

精神の防衛反応が起きて、脳の記憶容量とかがパンクしないように、自身を守るために沢山の記憶を捨てて来ているだろうから、マリエタに無理は言えない。

とりあえず、彼女の精神状態が少しでも安定する事を祈って、【クローゼット】に入っていたレモネードを全部。そして、私の料理練習を兼ねて、新たに創ったSAN値(正気度)回復レモネードを大量に渡して来た。


そう、皆さん。私、ヘドロにせずにレモネードを創れる様に成りました。

大きなウォーターボールをその場に浮かせて、その中で綺麗に洗ったレモンを何個も握りつぶし、清潔なバケツに入れたC級モンスターの蜂蜜を、新品のスコップで投入。塩を一掴み投げ込み魔力を込める。最後にウォーターボールを松明の火で炙りながら回転させて温めつつ混ぜる。

本来のレモネードの手順としては正しくないかもしれないけど、材料が最終的に混ざれば後は《料理スキル》が作用してなんとかなった。

とりあえず、『調理器具』さえ使用しなければ、ヘドロ化しないと言う事は証明された。

少しずつ作れる料理を増やしていこう。



にしても、どこのクラスも整列しないなぁ。

先生方が必死に生徒を並べようと駆け回っているけど、ふざけ回る生徒がどこのクラスにも何人かいて、中々学院の施設案内に出発できない。


とうとう、私達の学年主任の先生、私と同じ位の身長でポッチャリ体型のオバちゃん先生が切れた。


「静かに速やかに並びなさい!! いい加減にしないと、前歯と奥歯の位置を入れ替えるわよっ!!」


わぁ……。ご飯が食べづらく成りそう。

っていうかそんな脅し文句初めて聞いたわ。流石、魔法のある世界。脅し方が独特。

ちなみに教育委員会もPTAも居ないので、うるさく言われない分、本当にやるときはやると思われる。


でも、ウチのダイモン兄様よりは遥かにマシだな。頑張って生きてね。甥っ子、姪っ子達。

私は一足先に、ダイモンズ・ブートキャンプから抜けさせてもらうね。


この世界の教育方法と、我が家の兄夫婦の躾方法について思い起こし、遠い目をしていると、後ろからウルシュ君が声を上げた。


「あ、イザベラの好きなウサギさんだよぉ。フワフワだねぇ」


そう言いながらウルシュ君が指さす方向を見ると。隣のクラスの生徒が並んでいる廊下に、五匹のウサギがぴょこぴょこしていた。


か、可愛い!! え? なんだろう? ウサギが校舎に迷い込んじゃったのかな? お尻がまあるくて、跳ねるたびにポヨポヨしてて可愛い。


「本当だっ!! 可愛いね、ウルシュ君。あのウサギどこから来たのかな?」


「隣のクラスの子が何度注意されても、うるさくしゃべり続けるからぁ、担任の先生が、魔法でウサギに変えたんだよぉ」


「………ウサギは鳴かないから静かだもんね。鼻息がピィピィ鳴る事はあるけど……」


元隣クラスの生徒だったウサギを、遠い目で見つめていると、黒衣で左目に眼帯を付けた男子生徒が、列からはみ出してウサギを捕獲していた。


あの眼帯、黒衣のゴシックファッションの生徒はギースだね。ギース隣のクラスだったのか。

そう言えばギースは『隠れモフモフ狂い』の称号持っていたね。元クラスメイトだとしてもウサギが居たら飛びつくよね。親切心で運んであげようとしている風を装っているけど、もふもふしたかったんだろうね。

ギースは嬉しそうに他の生徒と分け合ってウサギを抱えている。もふもふ好きが隠しきれてないよギース。

嫌がるウサギに頬擦りしているけど、それ元はクラスメイトだよ? 分かってるのかなギース。


「ギースが無理やり頬擦りしているウサギ。元々は不良っぽいいかつい男子生徒だったんだけどぉ、元に戻った時、ギース殴られるんじゃないかなぁ…。まぁ、どうでも良いけどぉ」


ギーーース!! 今すぐその頬擦りを止めるんだっ!! 華奢で魔法特化な君は物理攻撃には勝てないっ!!

今、嬉しそうに受けているウサギパンチなんて目じゃ無いパンチが、魔法が解けたあとに飛んでくるよっ!!


そんな風にハラハラしているうちに、整列が完了したのか、それぞれのクラスは動き始めた。


ちなみに同じクラスの生徒7人が、奥歯と前歯の位置を入れ替えられていた。




学院の施設案内や、それぞれのクラスで行われた上半期の授業説明など、午前中の予定をすべて終えた。

自己紹介とかもあったけれど、お茶会などで見た事がある王都周辺の貴族令嬢や子息はともかく、地方から来た令嬢子息や、平民出身の生徒達は、キャラやファッションが独特で無い限り、覚えるのが大変だった。


ちなみにローブ受け取りの日に見かけた、拘束衣を着て大鎌を背負った女子生徒は同じクラスで伯爵令嬢だった。赤いローブだったから魔法戦士科のようだ。

赤いローブは全面に、黒糸で蔓薔薇が刺繍されている。この短期間で刺繍したにしては完成度が高い。


あと上半身裸で広範囲に入れ墨を入れて、謎のブルーの牙を使われたドリームキャッチャーみたいな首飾りを付けた、民族風の呪術師みたいな男子生徒とかも同じクラスなんだけど、話しかけづらい。

彼のローブは魔術師科の青。既にボロ布に変わって、沢山巻かれている腰巻の一枚に変わっていた。


私とウルシュ君は錬金術科のチョコレート色。金糸で刺繍された蔦模様でローブの端が縁取られている。

ウルシュ君のローブの内側には、亜空間ポケットが沢山付いている。それぞれのポケットには工具の模様だったり、植物の模様だったり、薬瓶の模様だったりが刺繍されていた。多分、中身が分かりやすい様にだと思われる。


私のローブの内側には、残念ながら龍虎図の刺繍は入っていなかった。【クローゼット】を持っているから亜空間ポケットも無し。

その代わり、大小さまざまな謎の魔法陣が大量に刺繍で描かれている。この緻密な魔法陣を刺繍で入れるって凄い。

ちなみに肩甲骨の間辺りに来る魔法陣を、《強欲王》で調べたら、空が飛べる機能が付いていた。


『これで、竜騎士の先輩とドラゴンに乗らなくても、空を飛べるでしょぉ?』


と、言う事らしい。いまだに私が魔法戦士科の先輩と、ドラゴン二人乗り(ベラも居た)したのを気にしているらしい。可愛いよジェラシーウルシュ君。大好きだよウルシュ君。

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