もう自分で当てたわっ!!
『最重要文書』って何だ?
いや待てよ。ここは『【虚言王】が【魔王の手記】とやらを隠している禁書庫』じゃなかったか?
と言う事は、『最重要文書』=【魔王の手記】の可能性が高い。
いまのナビィさんの発言によると、その『最重要文書』を閲覧する為には、七つのロックコードを解除するしかないようだ。
そのロックコードの一つが【日本語】
ここへ来るための呪文が日本語だった事からして、他のコードも日本語関連かもしれない。
残りの六個のコードを推理してみよう。
あの呪文はネット上でネタとしても使われている、RPGの有名なセリフだ。
もしかして、この禁書庫を創った人か関係者が、私みたいな異世界転生をした前世持ちなのでは?
そして、ゲームのセリフを呪文にしている事から考えて……。
「ナビィさん【ゲーム転生】もしくは【乙女ゲーム転生】と言うワードは、引っかかりますか?」
『【ゲーム転生】および【乙女ゲーム転生】を検索しましたが、該当書籍はございませんでした』
う~ん。駄目か。それじゃあ……。
「だったら【異世界転生】もしくは【異世界転移】はどうかな?」
『最重要文書の閲覧に関する七つのロックコードの一つ、【異世界転移】を確認しました。利用者イザベラに対しロックを一つ解除します』
異世界『転移』の方かっ!!
生まれ変わったんじゃ無くて、生身で異世界にやって来たパターンだっ!!
他にないかな。ゲーム、異世界転移、RPGのセリフ。他にヒントは……。
そう言えば、フェアリー像の所で唄を聞いたぞ。
ぶっちゃけあまり内容を覚えて無いんだよなぁ。どんな内容だったかなぁ。
確か、空から聖騎士が、魔王を退治にやって来る? いや助けに来るんだっけ?
魔王を退治に、RPG、ゲームと来れば…。『勇者』かな?
そこに異世界転移の要素を付け加えて……。
「ナビィさん【勇者召喚】は?」
『最重要文書の閲覧に関する七つのロックコードの一つ、【勇者召喚】を確認しました。利用者イザベラに対しロックを一つ解除します』
きたきたきた~っ!!
これで、【日本語】【異世界転移】【勇者召喚】の三つが揃った!!
残りの四つは何だ?!
あっ!! 一つ分かったかもしれない!! この三つが揃えば、これは外せない!!
「ナビィさんっ!! 【チート】【チート能力】【チートキャラ】【チートスキル】もしくは【俺tueeee】ではどうでしょう?」
『最重要文書の閲覧に関する七つのロックコードの一つ、【チート能力】を確認しました。利用者イザベラに対しロックを一つ解除します』
「よっしゃーーーーっ!! あと三っつ!!」
拳を突き上げ、禁書庫の真ん中で雄叫びをあげる。私、今日は冴えてるっ!!
順調順調!! このままサクサクとロックコードの解除しちゃうよ!!
………。と、上手く行ったのはここまでだった。
『────…を検索しましたが、該当書籍はございませんでした』
「うーーーーーん、じゃあ【ハーレム】【オッサン無双】【スローライフ】はっ?!」
『【ハーレム】【オッサン無双】【スローライフ】を検索しましたが、該当書籍はございませんでした』
ちなみに日本語で聞いたから該当しなかったけど、こちらの言語で『ハーレム』『オッサン無双』『スローライフ』を検索すると、結果は違うらしい。
この世界の言語で検索すると次の通りだった。
『ハーレム』:三十六冊の書籍と二十五冊の資料。
『オッサン無双』:六百三十三冊の書籍と、千八百四十二冊の資料。
『スローライフ』:四十五冊の指南書と十五の資料。
異世界にもオッサン無双の書籍があるんか……。と、思ってたら、昔の皇帝や英雄と言った歴史上に実際に存在した漢達の伝記だった。
異世界の伝記スゲェな。ファンタジーをガチで行ってるわ。
ふむふむ………オッと危ない。この世界の『オッサン無双』の伝記を読みふけってた。
今はそれどころじゃ無かった。ロックコードだよ。
「だけど、もうネタが付きたなぁ…【脱出ゲーム】【エターナルフォースブリザード】【ちくわ大明神】【無機物転生】【VRMMO】【異種婚姻譚】【ざまぁ】【成り上がり】【マヨネーズ無双】」
『最重要文書の閲覧に関する七つのロックコードの一つ、【ちくわ大明神】を確認しました。利用者イザベラに対しロックを一つ解除します』
「なんでだよっ!!」
当てさす気が無さ過ぎだろ!!
今テキトーにネタのつもりでぶっこんでたわっ!!
もしかして、残りの二つもこんな感じかな? だとしたら当てられる気が全くしない。
他に何かヒントに成りそうな物は無いかと、周囲をキョロキョロ見回して見る。
呪文や唄にヒントっぽいものが入っていたし、この禁書庫にも何かヒントがあるんじゃないか?
ふと自分が腰かけているソファに視線を落とす。
ソファの肘掛と座面の隙間から、何か紙切れみたいな物がはみ出ている。
それを摘まんで、隙間から紙を引き抜く。
出て来たのは二つ折りにされたカードだった。
なんだろう? と思ってカードを開くと、カードの真ん中には小さく日本語で、こう書かれていた。
『ちくわ大明神』
カードをフリスビーの様にぶん投げる。
「もう自分で当てたわっ!!」
なんか、おちょくられてるみたいで腹立つなぁ。分からなかった時の為のヒントなんだろうけどさ。
うん? って事は、他にもこんな風にヒントがあるのかな?
テーブルの上にも視線をやる。
テーブルにはコーヒーとお茶菓子。
お茶菓子の中に、ロゼリアル王国では見ないお菓子があった。
だけど、コーヒーと同じく前世では見た事がある。折りたたまれたクッキーの様な焼き菓子。
「フォーチューンクッキー」、またの名を「辻占煎餅」。中に占いの紙が入っている焼き菓子だ。
一つ一つ割って、中の占いの紙を取り出していく。
数は全部で七個。
中身は全て日本語で書かれていた。
一つ目:今日の貴女のラッキーカラーは『錆鉄御納戸色』です。
何色だよ。どんな色だよ。ってか読めねぇよ。
さ…さびてつごのうど? さびてつ…おなんど? どちらにしても、どんな色なのかサッパリだわ……。
二つ目:今日の貴女のラッキーパーソンは『4代目ザハール王国国王ムハメッド』です。
そう簡単に他国の国王に会えてたまるかよ。しかも今のザハール王国国王は三十五代目だよ。墓参りすればいいのか?
三つ目:今日の貴女のラッキースケベは『パンチラ』です。
帰ったら、ウルシュ君相手に試そう。今日中にだ。
四つ目:今日の貴女のラッキーアイテムは『十五段のくすんだ金色の梯子』です。
指定が細かくね?
五つ目:今日の貴女のラッキープレイスは『裏側』です。
どこのだよ。
六つ目:今日の貴女のラッキークライムは『スピード違反』です。
この世界、道路交通法ってあったっけ?
七つ目:今日の貴女のラッキーファーニチャーは『ゴシック調の一人掛けソファ』です。
ゴシック調の一人掛けソファは、今座ってるからOKだな。
………うん?
あれ? もしかして?
「ナビィさん。書籍の検索をお願いいたします」
『かしこまりました。何をお探しですか?』
「『四代目ザハール王国国王ムハメッド』に関する書籍、資料の全てです」
『「四代目ザハール王国国王ムハメッド」で検索した結果、四十五冊の書籍と五十冊の資料が見つかりました』
そう言ってナビィさんが用意してくれた九十五冊の本を、くまなく調べる。
そして、その内の一冊、『ザハール王国建国から、五代目国王までの歴史書』の背表紙の間から二つ折りのカードが出て来た。
カードの真ん中に小さく日本語でこう書かれていた。
『チート能力』
OK分かった。
他のロックコードも、この禁書庫のどこかに隠されている。
※錆鉄御納戸色:さびてつおなんどいろ。黒に近いグレーみたいな色。