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どう調べても分からないんだよなぁ

まず、現状を整理しよう。

マリエタが帰って来るのを正門前(内側)の広場で待っていた。

マリエタが帰って来て、親子の対面を邪魔しないように見ていた。

何となく違和感を覚えて周囲を見渡すと、違和感の原因は正門前広場の噴水が変化していた事だった。

近づいて噴水の変化場所、実際はクリスタルが浮いているはずの場所に、フェアリーの石像があるのを観察していると、何故か周囲が無音に成り、周囲の人達と隔絶かくぜつされてしまった。

原因を探って、噴水とフェアリー像を調べていると、噴水に【日本語】が浮かび上がり、それを読み上げると噴水に突如として浮かび上がった魔法陣に吸い込まれた。

今、水が滴る謎の鍾乳洞みたいな洞窟に居る ← 今ココ。


現状を整理したけど、さっぱり分からん。

こういう謎解き系のイベントを、どちらかと言うと脳筋キャラの私にさせてはいけない。話がまったく進まなくなるから。


よし、脳筋は脳筋らしく、やみくもに前に進もう。


丁度良い事に、背後は壁なので一方通行だ。

そして私には《怠惰あんし》があるから、洞窟内でもよく目渡せる。

ついでに《強欲王かんてい》を洞窟に対して発動させてみよう。ここは何処の洞窟なのかな?


《真なる禁書庫に通じる鍾乳洞》

座標ナシ。条件(※)を満たし、制限時間内に異世界文字を解読、それを唱えると足を踏み入れる事が出来る。

【虚言王】が【魔王の手記】を隠している禁書庫へと通じている。


※条件

・ロゼリアル王国にある、王国立ロゼリアル魔術学院の禁書庫の存在を知っている。

・ロゼリアル魔術学院の敷地内で、輪になって踊った事がある。

・上記二つの条件を満たすと見つけられるように成る、学院内の水場にランダムで出現するフェアリーを、周囲の人間の中で一番初めに発見する。


制限時間内に異世界文字を解読できない場合、フェアリーは去り、再びランダム出現するのを持つ事に成る。



……………。

知らない間に、真の禁書庫のイベントの参加条件を満たしていたでござる。

禁書庫の存在を知っているって言うのは、マリエタから『忘れ去られた禁書庫の場所がある』って言う話を聞いた事があるからかな?

敷地内で輪になって踊るっていうのは、この前のキャンプファイヤー時にウルシュ君と踊った時の事だよね?

皆で燃える職員棟を囲んで、大きな輪になっていたからなぁ…。

異世界文字って言うのは、さっきの【日本語】だろうな。これ、異世界転移か異世界転生して無かったら解読無理じゃないか?

いや、考えれば確か『桜花列島連合国』の文字が日本語に近いんだよなぁ…。

『売主』って漢字で書いて『ウルシュ』って読むくらいだから、『桜花国語』を知っていれば解読できない事は無いのか?

日本刀みたいな刀を作っているみたいだし、どこかに日本と関連が? う~ん分からん。


まぁいいや。とりあえず進もう。

このまま進めば【魔王の手記】とやらが隠された真の禁書庫とやらがある筈だ。

そこに行けば出口の手掛かりがあるんじゃないかな?

そして何より、『魔王』について何か分かるかも知れない。


そのまま鍾乳洞を進んで行く。洞窟内に分かれ道はなく、真っ直ぐの一本道だった。

ただただ真っ直ぐ進み続けて、時間の感覚が無くなってきた頃、ドーム状の広い空間に出た。

前世でスポーツ競技を観戦した事も、ライブを見に言った事も無いけど、多分そう言うのに使われるドーム位の広さはあるだろうな、とぼんやり考える。

ここが禁書庫かと思いきや何も無い空間だ。


何か無いか周囲に目を向けると、遥か先、広い空間の向こう側の壁にアーチ状の二枚扉を見つける。

他にも無いか探してみるが何もなさそうなので、その扉を調べる事にした。


扉はそこそこ大きいかな? って位のサイズで黒っぽい大理石の様な素材だった。

ノブに手をかけて押してみる。開かない。……あ、引き戸だった。


扉を引いて開けると、扉の内側、真上にあったランプに自動的に火が灯る。

それに連鎖するように扉から近いほうから順番にランプの火が灯って行く。

部屋をグルリと囲むように灯りが付くと、次に上へと並んでいるランプも順に灯っていく。

上のランプに火が灯るたびに姿を現す、壁一面の高い本棚を口を開けて眺める。

高い所の本は梯子で登って取るみたいだけど、それにしてもずいぶん高い。まるで巨大な塔の中みたいだ。

天井付近まで並んでいた全てのランプが灯り、天井中央からぶら下がる、長くて巨大な魔石製のシャンデリアが輝き出したのを確認して、視線を前に戻した。




目の前に、半透明の少女が居る。




今日はホラーの日かな?

心臓に悪い出来事が続きすぎる。今、一瞬心臓が跳び上がって止まりそうになったわっ!!

いつの間に現れたんだよっ!! 怖いよっ!!

だけど黙ったまま見つめ合う訳にもいかず、引きつりそうになりながら、声を絞り出す。


「こ、こんにちわ」


『ようこそ、「真の禁書庫」へ。私は禁書庫の案内人のナビィと申します。お探しの書籍はございますか?』


半透明の少女はプログラムされたような音声で返事をしてくれた。

どうやら彼女はナビィさんと言うようだ。ナビゲーターのナビィさんと覚えておこう。

彼女の見た目はフェアリー像にそっくりだが、可愛らしい笑顔のフェアリー像と比べて無表情だ。ちょっと怖い。

どうしよう。ここで正直に【魔王の手記】と答えても良いものなのだろうか?

判断が付かなくて黙って見つめ合う。

とりあえず自力で探して、見つからなかった場合に聞く事にした方が良いかな?

そう思考をまとめてナビィへと答える。


「え~と。探して居る物は沢山あるんだけど、タイトルとかはちょっと分からなくて。自分で探しても良いかな?」


『かしこまりました。フロア中央のテーブルにお茶とお菓子をご用意していますので、ゆっくりとお探しください。ご不明な点等ございましたらお声かけ下さいませ』


「ありがとう。聞きたい事が出来たら呼ぶね」


そうお礼を言うと、ナビィさんはゆっくりと頭を下げ、スウッと消えた。

いや、だから怖いって!!


とりあえず、ナビィさんが用意した(?)と思われるお茶とお菓子が置いてあるテーブルに向かってみる。

この禁書庫がいつからあるのか分からないから、お茶とかお菓子が干からびているんじゃないかと、ちょっと気になったのだ。


ザ・ゴシック調な調度品に囲まれたソファーとテーブルに近づき、テーブルの上に置いてあるティーセットを見下ろす。


瑞々しいフルーツの乗ったタルトだとか、焼き立てホカホカのスコーンとか、淹れたてのコーヒーが用意されていたので驚く。


コーヒーだとっ?! この場合紅茶じゃ無くて?!

ってかこの世界、コーヒーあったの?!

確かに調べものするには、コーヒーの方が良いかも知れないけど、なんか違う意味で驚かされて複雑!!


《強欲王》でコーヒーとお菓子の安全性を調べて、慌てて席に着く。

前世ぶりのコーヒーだぁ!!

コーヒー豆って、どこで手に入れられるんだろう。ウルシュ君はコーヒー飲むかなぁ?

いや、ウルシュ君にコーヒーを与えたら、今以上に不眠不休でアイテム製作しそうだから与えられないわ。


懐かし過ぎて涙目になりながら、コーヒーを飲む。

この世界、食材は前世と変わらない位の数がある。って言うか、魔獣や魔物といった食材や魔法植物とか有るから、前世より種類が有るかも知れない。だけど、コーヒーは見当たらなかったんだよ!!

味噌も醤油も米も、カカオもあるのに!!

私が調理すると全てヘドロに成るけどなっ!!


「そう言えば、私が調理すると全てヘドロに成るの何でだ? 料理人スキル持っているのに。どう調べても分からないんだよなぁ」


『「料理人スキル」についてお調べですか? 「料理」「ヘドロに成る」で検索した結果、三冊の資料が見つかりました』


真横からナビィさんが答えた。

跳び上がって、横を確認すると、三冊の本を抱えた半透明のナビィさんが立っていた。

お願いナビィさん、急に現れないで。心臓に悪いから。


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