爆笑してるでしょっ!!
しばらく撫でられ続けて、落ち着いたので、顔を上げて、ウルシュ君を真っ直ぐに見つめる。
「私、ウルシュ君の事が、好きです。大好きです。」
「うん。知ってる〜。」
知ってるのかぁ。そうかぁ。
その言葉に、ホッコリした気分になる。
今までの、ゲームキャラのウルシュ君に対する、妄信的な愛情も、すべて好意として受け取ってくれていたんだね。
「矛盾してるかもしれないけど、ずっとウルシュ君が好きだったんだけど、今ちゃんとウルシュ君の事が好きになったの。でも、信用は出来てないです。」
「そっかぁ〜。」
正直、ゲームでのウルシュ君も、徘徊してたり謎行動が多くて・・・・
いや、違うな。
それは、ゲームのウルシュ君で有って、今ここにいるウルシュ君では無いな。
ゲームについては忘れよう。
目の前に居るウルシュ君を、ちゃんと見る事にしたんだ。私は。
そして、ウルシュ君を生身の人間として、存在を感じられる様に成ったら、私の事を全部知ってもらおう。
「でも、ウルシュ君は、信頼にあたいする人だと思います。」
「ふふ。ありがとぉ。」
「さっきの、ウルシュ君の気持ちを聞いて、ウルシュ君は信じても良い人なんだと思ったの。」
だって、ウルシュ君は私の事を、信じてくれるって信じてくれたから。
私を信じてくれるウルシュ君を、信じれない訳がない!!
「そっかぁ。嬉しいなぁ〜。計画通りになって。」
「・・・・・・・。」
おい。
何か、良い感じの話が、急に台無しになりましたよ?ウルシュ君。
さっきの私の恋心を返して欲しい位に、台無しだよ?
「ウルシュ君。今の発言で、私の中のウルシュ君に対する信頼度が、とても下がったんですけど。」
むしろ"あまり信用しちゃいけない人"に成ったんですけど。
「ふふ。じゃあ、もう二度と、僕を盲目的に想わないでね。ちゃんと僕を見て。そして本当の僕を愛して。」
何か怖いよ?
怖いよ?ウルシュ君?
いつもの、癒しのスマイルなのに
今は何だか、凄く怖いよ?
いや、そのスマイルは好きなんだ。大好きなんだ。
でも、なんか震えて来るんだ!
未だに繋いだままの手から、冷や汗が止まらないんだけどっ!!
「どうしたのぉ?手、離したいの?」
「いえ。離したくないです。」
そこはキッパリと否定する。
性格が思っていたのと違う気がするけど、
そもそも、私、ゲームでも性格も良くわからないモブキャラのウルシュ君に、入れ込んでいた訳ですし。
ぶっちゃけよう。
私はウルシュ君の外見が好きだ!!
実際の性格が 、なんかちょっと悪そうだけど
それでも変わらず好きだっ!!
信用は出来ないけどっ!!
「ちょっと信用は出来ないけど、性格まで愛せるか分からないけど、ウルシュ君の見た目は好きなんで。」
信用は無いけど、正直に宣言する。
でも、妄信的に想っていた時とは違い
彼自身を真っ直ぐに見た結果、正直に思った事を言った。
なんか、隠してもこの人相手じゃ意味無さそうだし。
隠したら、なんだか後が怖そうだし!!
「あはは〜。正直だねぇ。まぁ、この見た目も僕自身には違いは無いからねぇ。好きになってくれて嬉しいよ〜。」
あ、見た目しか見てないのかって、怒らないんだ。
なんだか、そんなところは懐が広いと言うか、大物だね。
「ところで、またメイドさん、見失っちゃったね〜。どうする?正直、僕はイザベラ以外が怪我しようが、どうしようが、どうでも良いんだよねぇ。」
「なんか、さっきと対応が違う気がするんだけど・・・。」
「違わないよぉ?イザベラが心配するから探すだけで、僕はあの人、全然心配じゃないの。知らない人だし。」
そう言ってウルシュ君は、いつもの様にフニャりと笑う。
くっ!!発言は黒いが、その笑顔が可愛いっ!!
駄目だ、癒されちゃ駄目だっ!!
癒しのエンジェルスマイルだけど、中身は真っ黒だっ!!
騙されるな私っ!!
・・・っ駄目だ!!可愛いっ!!
仕方ないよっ!!
仕方ないんだよっ!!
だって、好きなんだもん!!
その見た目がっ!!
「僕、自分の見た目が嫌いになっていたんだけど、イザベラがそんなに気に入ってくれるなら、この見た目も悪くないねぇ。むしろ自分の見た目を愛せそうだよ〜。」
もしかして、さっきの笑顔はわざとかっ!!
黒い発言と笑顔で、私がどう反応するか試したんだなっ!!
発言の方と、笑顔の方の、どちらに意識が向くか観察してたんだなっ!!
自分の笑顔が、私にどの程度効果が有るのか試したんだなっ!!
あぁ、つられたさ!!
笑顔の方に、つられたさっ!!
黒い発言より、笑顔に思いっきりつられたさっ!!
ウルシュ君の笑顔に悶える私に、ウルシュ君は不思議そうに首を傾げる。
「そんなに、僕の見た目が好きなのぉ?」
「はい。一生、隣で見ていて居たいくらいには好きです。」
「そっかぁ~。その感じなら、僕がどんな性格だろうと知っても、丸ごと好きになってくれる日も、遠くなさそうだねぇ。」
「それじゃ、始めと何も変わらない気が・・・。」
そう言うと、ウルシュ君の笑顔はそのままで怖い気配が強くなった。
な、なんか・・・怒ってます?
「違うよぉ、全然、違うよぉ。僕じゃない僕を見て、好きになってくれるのとは、全然違うよぉ。」
あ、はい。
そう言う事ですね。
本当のウルシュ君を知って、それでも見た目が好きだからと、ウルシュ君を丸ごと受け入れる気になるのと
ウルシュ君の見た目だけで、天使のような可愛いウルシュ君の虚像を作り上げて、それが好きなのとは、違いますね。
そう言う事ですか。
「そう。だいたいは、そんな感じかなぁ~。」
私、今、口に出して言ってない。
「イザベラの顔を見てたら、分かるよぉ~。」
限度があるだろ。
表情で把握するにも限度があるだろっ!!
いやっ、ちょっと!!笑わないでっ!!可愛いから笑わないでっ!!
なんか可愛くて許しちゃうでしょっ!!流されちゃうでしょっ!!
か~わ~い~い~♡
「なんで爆笑するのっ!!」
「ば・・・・ばく、笑・・なんてぇ、・・・して、ない・・よ~」
「声が出なくなるまで笑ってるでしょっ!!サイレントで爆笑してるでしょっ!!」
爆笑してるウルシュ君も可愛いけど
見ていたら、このまま時間がただ過ぎて行くだけなので
笑い続けるウルシュ君を引っ張って、マリーちゃんの捜索を開始する。
始めから「傲慢」と「色欲」をフル活用だ。
上の空で無計画に歩くマリーちゃんだから、どんなコースを辿るのかは予想できないけど、少なくともあの調子じゃ、そこまで遠くに行っていない筈。
遠くに行ってるわ。
マリーちゃん、遠いわぁ~。
なんかもう、追いかける気、無くすくらいに遠いわぁ~。
自分が思っていたより、時間をロスしていたみたい。
夕食までに屋敷に戻ってくるのかな?マリーちゃん。
もう、ここまで来たら、意地だよね。
心配だからじゃなくて、こんな何時間も追いかけて来たんだから
今さら止めると、これまでの時間が無駄になる気がして、意地になるよね。
うん。私、今、意地でマリーちゃんを追いかけてる。
でも、さっきの様に急いではない。姿は確認できてるし。
「何であの人・・・あんなに上の空で歩いているのぉ?」
「なんか3日前に好きな人と色々あって、それからその人から微妙に避けられているからだと思う。マリーちゃん、芯の有る、しっかりした子だったから、あそこまで思い悩んで徘徊するとは思わなかった。」
「あの人が、しっかりした芯のある人に戻るには、必要な時間なんじゃないかなぁ。そっとしとこうよぉ。」
「ウルシュ君、いい感じの事言っているけど、尾行に飽きて止めたくなったんでしょ?」
「当然だよ~。あの人の恋の悩みなんて、心からどうでも良いよぉ。」
なんか、本当のウルシュ君について分かって来たわ。
ウルシュ君は自分の興味・関心がある物以外は、どうなろうと知ったこっちゃ無い人だ。
こっち見ないで。
笑顔でこっち見ないで!!あざといなぁ!!
可愛いじゃない!!怒るよっ!!
「もうっ!!笑いかけないで!!惚れちゃうでしょっ!!」
「今さらじゃないのぉ?」
「分かってるよっ!!もう惚れてるよっ!!でも見た目だけだからねっ!!」
だから笑うなって!!




