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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
これ、本当に乙女ゲームか?
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大変じゃないの?

錬金術科で着替えたウルシュ君を連れて、ベラを預けていたバーバラの元に戻ると、バーバラは私の顔を見るなり怒りの雷を落とした。


「ちょっとアンタっ!! あんたってば本当に使えない女ねっ!! 」


顔を合わせたとたんに浴びせられた罵声に、ウルシュ君から不機嫌そうなオーラが噴き上がった。

それに気付いたバーバラは、たじろぎながらも私に怒りをぶつける。


「な、なによっ!! 言っておくけどイザベラが悪いのよっ!! 私に幼児を任せた時に置いて行った食べ物が、どれもこれも食べさせられた物じゃないのよ!! 」


なんだと・・・。そりゃ、怒りたくもなるわ。でも何が駄目だったんだろう・・・。

片手でウルシュ君の背中を撫でて落ち着かせながら、バーバラに詳しい事情を聞き出す。


「ごめんバーバラ・・・置いてったもの駄目だった? 」


「確かに私も何とか対応するとは言ったわよ!! でも、何かしら用意して置いて行ってくれれば期待しちゃうじゃない? でも蓋を開ければ、どれもこれも乳児に食べさせて安全なのか分からなかったり、食べさせたら駄目な物だったりで、置いてかれた食べ物は全滅っ!! 」


全滅かぁ・・・。私なにを置いて行ったっけなぁ・・・?


「流石に預けられた食べ物の中に、食べさせられる物が一つも無かったら、私だってあせるわよっ!! そして、そんなあせる私に変な奴が寄って来て更にパニックよっ!! 」


「変な奴? 」


「『私が気合で母乳を出してみせるから任せてっ!!』とか言いながら胸筋をさらけ出す、清楚系のワンピースを身に着けた、編み込み頭のマッチョな男とかよ!! 何なのよアレっ!! 思わず乳児背負ったまま条件反射でダブルラリアット喰らわせたわよっ!! 他にも変な奴らいっぱいいるし!! 」


ん? どっかで聞いたな、清楚系女装マッチョ。どこで聞いたんだっけ? まぁ良いや、とりあえずバーバラに落ち着いてもらおう。


「まぁまぁ、落ち着いて。そんなに怒鳴ると喉を傷めるよバーバラ・・・」


「誰のせいだと思ってんのよっ!! レモネードにプリンに灰汁の強い果物に、アケビとかの種ばっかの物にっ!! 更に更に素手では割れない様な硬い皮の果物にっ!! 私をアンタの様な魔石を素手で握り砕くような女と一緒にしないでよねっ!! 」


私はバーバラの前で魔石を握り砕いた事は無いよ・・・。出来るけど。


「レモネードとプリンも駄目だった? 」


「当ったり前でしょ?! 悪いけど全部私のスキル『成分分析』にかけさせて貰ったけど、レモネードに至ってはD級モンスターの『ハニービー』の蜂蜜・・が入っているじゃないのよっ!! ただでさえ乳幼児に蜂蜜を食べさせちゃ駄目なのに、ハニービーの蜂蜜って!! アンタ私に殴られたいのっ?! 」


あーー。蜂蜜って乳幼児に食べさせたら駄目だったのか・・・。それによく考えたら昆虫系モンスターが集めた蜂蜜とか、いよいよアウトよね・・・。

全然そんな事考えて無かった・・・。


「プ・・・プリンは・・・」


「脂肪分が多いと乳幼児は消化できないのよ!! アンタが置いて行ったプリンは、ちょっとした贅沢として大人が食べるような、生クリームが添えられた味の濃いコッテコテのプリン!! こういうのは二歳位から、それも子供用に作ったやつ!! あと、これはこっちの国ではまだ広まっていない知識だけどね、一部の食材が毒になるような体質の人がいるの。特に卵と乳製品は注意が必要だから、良く知らない子供に気軽に与えて良いものじゃないのよ。まずは食べさせても大丈夫か親に確認しなきゃ」


一部の食材が毒になる体質・・・。それってもしかして前世で言う『食物アレルギー』の事だろうか。

そこまでの知識がすでにディアナ王国では広がっているのか。さすが医療先進国の国だな。

っていうかファンタジー世界にもあるんだね。アレルギーって。


「ごめんねバーバラ・・・。迷惑をかけて」


「本当にね!! まったくアンタにこの子を任せてられないわ。私がマリエタに返すまで預かるからね。アンタはウッカリ変な物食べさせそうだし、ウッカリ力加減を間違えて捻り潰しそうだから心配なんてもんじゃないわ」


「本当に申し訳ないです」


バーバラには頭が上がらない。そしてバーバラが居てくれて本当に良かった。

バーバラに謝罪をしつつ、感謝の気持ちを伝えていると、今まで黙っていたウルシュ君が口を挟んだ。


「そもそも何でイザベラがマリエタ嬢の子供をバーバラ嬢に預ける事になったのぉ? 」


「えっと・・・。話すと長くなるんだけどね」


そこでウルシュ君に図書棟でマリエタと話していた所から、バーバラに会ってベラを預ける所までの流れを簡単に説明する。


「ふーん。なんで他人の子供が、僕の子供より先にイザベラから面倒見られてるのか理解できないんだけどぉ・・・。それで実の母親であるマリエタ嬢は結局どこに行ったのぉ? 」


ウルシュ君・・・。謎の独占欲(?)は嬉しいけど、私は今回の事で子供の世話をする事に危機感を覚えたので、マリエタとバーバラに在学中にシッカリと子育てを学ぶから、ちょっと待って。

ウルシュ君の子供が可愛いのは間違いないだろうし、存在そのものが正義だろうけど、ぶっつけ本番の子育ては勘弁して。予習や練習をさせて。


そして肝心のマリエタなんだけど・・・。


「マリエタ・・・どこに行ったんだろうね」


「私も見て無いわよ。図書棟にも戻って来ていないか知り合いに頼んで見に行って貰ったけど、居なかったらしいわ。あの子、あんなに目立つピンク頭なのに見つかんないのよ」


珍しいからね、マリエタのピンク髪。バーバラの黄緑髪のツインテールも珍しいし目立つけど。


「もう完全に日が落ちちゃったからねぇ・・・。今から探すのは難しいかもよぉ? 明日の朝、明るくなってから探した方が良いんじゃないかなぁ? 」


「そうだねウルシュ君。あ、そうだバーバラ。私の友達からキャンプファイヤーに誘われたんだけど、バーバラも来る? 」


聖魔法科の地下が解放された事で、託児所の粉ミルクなどの配給も出来る様に成ったみたいだし、敷地内から出られなくても一晩ならどうにかやり過ごせそうな余裕が出て来たので、バーバラをキャンプファイヤーに誘ってみる。


「は? キャンプファイヤー? こんな時に? 」


「うん。いまだに燃えている職員棟で、マシュマロ焼いて食べたりバーベキューをするらしいよ」


「燃えている職員棟で? 」


「うん。職員棟でキャンプファイヤーしてるんだって」


「馬鹿じゃないの? 」


うん。そうだよね、そんな反応になるよね。私もアリスちゃんから聞いた時は耳を疑ったよ。

一体誰が職員棟でキャンプファイヤーしようと言い出したんだよ、おかしいだろって思いきや、まさかの学院長の発案だった。

半信半疑のバーバラに、ウルシュ君が追加情報を与える。


「流石に魔術学院の教職員だけあって皆無事だったらしくてぇ、炊き出しとかしてるらしいよぉ」


「炊き出ししてないで消火しなさいよ・・・」


「それがね、なんか災害対策用の魔術が発動したみたいで、職員棟の全部屋の次元が移動だか遮断だかしてるらしいよ。だから先生達も余裕みたい」


「全部屋の次元が移動か遮断って何よ・・・」


うん。理解が及ばないよね。私もサッパリだよ。


「私にも良く分からないけど、『そこに在ってそこに無い』って言う状況らしいよ」


バーバラと二人で首をかしげていると、ウルシュ君が解説してくれる。


「僕も詳しい事は分からないんだけどねぇ、『虚言王フラウロスの砦』って言われる、大掛かりな魔導らしいよぉ。現象や事実を『嘘にする』、つまり存在しなかった事にするんだってぇ。今、職員棟の全部屋が『存在していない』事になっていて、火災が収まれば『火災やそれ伴う結果』がなかった事に成るんだぁ」


「部屋の存在が消えたら大変じゃないの? 」


「火災が起きて無い事になるから、災害対策用の魔術が発動して部屋の存在が消えたっていう事実も無くなるんだよぉ。まぁ僕達の記憶には残るから完全になかった事になっているかは微妙だけどねぇ」


さっぱり分かんないよ・・・。どういう事よ・・・。


8月3日にコミックが発売されます。詳しくは活動報告にて。

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