??王
時計台の上に立ち、白銀の髪の人物が燃え盛る学院を見下ろしている。
中性的な容貌のその男は、薄い紫色の瞳を切なげに細めると、誰もいない空間に声をかけた。
「虚言王・・・。君が聖女に託した『100の世界』。その最後の一つが壊れ始めたよ」
『■■■、■■■■■■■■■』
「そうだね。でも、まだ諦めるには早い。君が創り、壊れてしまった99の世界から、どうやら思い出の欠片が集まって、一人の少女の手に渡ったみたいだよ」
『■■■■■■■■■? 』
「あぁ、変わるかもしれない。大賢者は毎回いらない事をしでかすけど、前回ばかりは良い仕事をしたね。彼にそんなつもりは無かっただろうけど・・・」
『■■■■■■■■■■■■? 』
「次元や世界を越えようと、無理やり世界線の壁をこじ開けたりすれば、想定外の物や力が一緒に流れて行ってしまうものさ。そして流れた物は元の世界に戻ってこようとする」
『■■■■■? 』
「そう、戻って来たよ。前の世界から、壊れてしまった98の世界と合わせて、99の世界の力が『彼女』に乗ってね。全て聖女と彼女の思い出の形を創って、彼女の心の収納の中に・・・」
『■■■■、■■■■■■■■』
「そうだね、99の世界からの持ち物だからね。彼女の収納はイッパイだろうね」
『■■■■■■■■■■■■』
「確かにね、要らない物も沢山あるだろうけど、この世界の大賢者は良い子みたいだからね、きっと彼が整理してくれるさ。自分の創り上げた負の遺産も、きっと彼が自分で責任を持って処分するよ」
『■■■■■■■■■■■■』
「あぁ、そうだ。だから安心して良いよ。安心してしばらく僕の中で休むと良い、疲れただろう? 」
『■■。■■■■■■■。■■■■』
「あぁ・・・オヤスミ」
「君が私の中に戻って来たのは、何百年ぶりかな・・・。君達が居なくなって私が空っぽになってから、随分と経つね・・・・・・」
「でも、それで良いんだ。私は後悔していないよ。」
「あの日、異世界から来たと言う彼に力を解体して貰ってから、私はずっと身軽で自由だ」
「ただ、私の君達が、誰かに迷惑をかけているのだけは、少し申し訳ないかな・・・」
「それでも、また取り戻して自分の中に収めようとは思わないのは、やっぱり自分勝手かな? 私はまだ、彼につけて貰った名前を名乗り続けていたいからね」
「全ての力を失いし空虚。無価値なる王。『無能王』」
「・・・彼って、やたらカッコイイ言い回しが好きだったね・・・。確か『厨二病』って言うんだっけ? 」
無能王 → 空虚、無価値 → べリアル のルビ。
七大罪とか十戒とか悪魔の名前とか、色々混ざっているのは、聖騎士の厨二病のせい。
単純に奴が「かっけぇぇぇ!!」と思っている物が集められている(異世界の人達には、元ネタとか知る由もない)