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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
これ、本当に乙女ゲームか?
113/148

どんな風になるのかな?

「・・・・・・・・」


「・・・・おーい。ウルシュ君? 」


「・・・・・・・・」


ウルシュ君から返答が無い。


事の発端は、パジャマのズボンだけ身に付けた恰好で、ウルシュ君が錬金術科に戻ろうとした事から始まった。

ウルシュ君の半裸姿を見た他の女子が、ウルシュ君にときめいたらどうするのだと、何か着るように言ったんだけど、ウルシュ君は『僕の半裸にときめくような女子なんて居ないよぉ』と、どこ吹く風でかっこうに頓着しないのだ。


着替えが入っている『亜空間ポーチ』を錬金術科の地下に置いて来ているから、そこまではこのまま行くというウルシュ君を全力で止める私に、ウルシュ君が笑いながら言ったのだ。


『じゃあ、イザベラが僕に引っ付いて、僕の上半身を隠してくれればいいよぉ』


なるほど。それは良い考えだと思った私は、ウルシュ君の素敵な上半身に前から引っ付き、ウルシュ君の首に腕を回すと、勢いを付けて両足をウルシュ君の腰に巻き付け、コアラの様にしがみ付いた。

ちっさい子供みたいで恥ずかしいけど、ウルシュ君の魅惑的な上半身を隠す為だと自分に言い聞かせる。決してウルシュ君の逞しい上半身を堪能したかった訳ではない。本当だよ?


しかし、そのままウルシュ君からの反応がない。声をかけても無言のままだ。


不審に思ってウルシュ君の首筋に持って来ていた顔をあげ、正面からウルシュ君の顔を見る。


・・・・・ウルシュ君は深紅に染まっていた。


いや、こんな言い方すると血まみれみたいに聞こえるけど、そうじゃ無い。でも普通の赤面を通り越している。

顔だけじゃ無い、見える範囲、上半身まで真っ赤だ。


「ウルシュ君・・・・・」


「─────っつぅ・・・」


覗き込むと、思いっきり顔ごと目をそらされた。これは・・・・。


「ウルシュ君、自分から言い出した事なのに、そんなに照れないでよ。こっちもなんだか恥ずかしくなってくる・・・」


「──────っは、・・・いや、この体位・・・ちがっ、体勢はちょっと・・・・も、もう降りてっ!! イザベラ降りてっ!! 早くっ!! 」


あ、あれか。『顔が近いと照れて頭突きしたくなる』って言うアレか。

照れるたびに頭突きの発作に見まわれるなんて、難儀な奴よのぅ。ふふふ、可愛い。


ニヤニヤしながらウルシュ君を眺めていると、青筋を立てたウルシュ君から振り落とされた。


「うひゃあっ!! ウルシュ君、流石に私もふざけ過ぎたけど、振り落とすのは酷いよっ!! 」


「振り落とされるだけで済んで、良かったって思ってよねぇ!! 僕の理性に感謝してよぉ?! 」


なんか怒られた。

声を張り上げるウルシュ君とか、激レア過ぎて感動す・・・・あ、いやスミマセン。反省します。だから、その漆黒のオーラを仕舞ってね、ウルシュ君。

どうやら思春期男子を虐め過ぎた様だ。反省してウルシュ君が慣れるまで、顔を近づけるのは止めておこう。


「分かったよウルシュ君。今度は顔を近づけないから」


そう言って、芝生の上に座ったままウルシュ君に向かって両手を差し伸べる。小さい子がよくやる『だっこ』をせがむポーズだ。

しかし、ウルシュ君からその両手をポイッと跳ね除けられた。解せん。


「イザベラ、なんで密着しようとするのぉ? 」


「いや、引っ付いて隠せって言ったのはウルシュ君だよ」


「・・・・うん、いや・・・そうだけどぉ、そ、そうだねぇ。でも方法は他にも有ったはずだよぉ。なんで前から来るのぉ? 」


「え? 後ろから? おんぶの体勢? それじゃウルシュ君の身体をちゃんと隠せないよ。背筋も大事だけど、やっぱり正面を隠す事を優先しなきゃ」


「・・・ま、前に来られるとぉ、その、前が見えづらくて大変だしぃ・・・。その、作業もしにくいからぁ・・・」


なるほど、確かに錬金術科の地下に行くまで、ドア開けたり階段降りたりとか有るからね。前にいたら危ないよね。

そこで私はウルシュ君の後ろからおぶさる体勢になる事で落ち着いた。


私を背負って歩くウルシュ君は、深紅では無くなったけど、ほんのりピンク色に染まったままなのが可愛かった。

あ、耳は深紅のままだね。

これ、かじったりしたら絶対怒られるパターンだよね。うぅ、この真っ赤な耳にイタズラしたいっ!!


再びウルシュ君を怒らす訳にも行かないので、自分の気をそらす為に会話を振る事にする。


「さっきウルシュ君は、大型の魔道具マジックアイテム創るのに筋肉がついたんじゃないかって言ってたけど、例えばどんな物を創っているの? 」


「最近力を入れているのはぁ、荷馬車かなぁ? イザベラと行商するのに必要でしょ? 世界中を回るなら少しでも快適な荷馬車を創ろうと思ったんだぁ」


荷馬車かぁ。前世で読んだ異世界転生物の小説でも、馬車の改良は鉄板だったもんねぇ。

なんかよく分かんないけど、スプリングとかのバネだかコイルだかで振動をやわらげるんだよね。ウルシュ君なら前世知識が無くても、自分から考えつきそうだよね。


「へ~。完成が楽しみだね!! どんな風になるのかな? 」


「世界中だからねぇ。宿が無くて野宿する状況もあると思うんだけどぉ、僕達なら荷馬車に防御壁張れば見張りも無しで中で眠れるからねぇ。中を広く快適にしようかなぁって」


なるほど、商品は私の【クローゼット】やウルシュ君の『マジックバッグ』に入れられるから、荷馬車の中をテント代わりに使えるね。


そう考えていると、ウルシュ君は続けた。


「そこで、荷馬車の中に拡張魔法をかけてねぇ、外側は普通の荷馬車のままで、内側は二階建ての4LDKにする所までは出来たよぉ」


「は? 」


「キッチンにはイザベラが話してくれた、前世の世界にあるって言う『IH』とか言うのを、僕なりに想像して設計して創ってみたよぉ。荷馬車の中で火を扱うのは危ないからねぇ。ただ、水回りが上手く行かなくてぇ・・・」


「え? 」


「ほらぁ、水やお湯は魔法で出せるけどぉ、排水がねぇ・・・馬車だし。馬車の底でスライム飼うにも、馬車の振動に驚いたスライムが酸を吐いて馬車に穴を開けると大変でしょぉ? 」


やべぇ・・・・。ウルシュ君の場合、『馬車の改良』の次元が違った。

もはやバネが云々うんぬんとか言う問題じゃ無い。


ウルシュ君、自重じちょうして・・・。流石に、前世の小説で見たような、日本からの異世界転生者や転移者でも、そこまではしないからっ!!

どんなチート主人公でも、普通の広さの荷馬車に黙って乗ってるからっ!!


まさかウルシュ君が移動式のマイホームを創っているとは、思いもしていなかった。

一軒家創っているんだもん。そりゃ、筋肉もつくよね。錬金術と大工仕事の合わせ技だもんね。


でも、それなら旅の途中で家族が増えても安心だね。

・・・・スネイブル家の遺伝子を継いだ子供って、どんなのか想像つかなくて怖い。お義父様の方の家系に似るよう祈っておこう。お義父様の家系がどんな家系かは知らないけど。


そうして、ウルシュ君と話しながら学科棟が集まる場所まで戻ると、遠くから私達を呼ぶ声が聞こえた。


「ベラちゃ~ん。ウルシュく~ん。そこに居ましたのねぇ~」


そう言いながら長い髪を揺らしながら駆けて来たのは、アリスちゃんだった。

今日は騎士風の服だ。髪も少し宝塚風にセットしてある。


ただし、見た目が騎士服を着て、髪を宝塚風にセットしているからと言って、中身が凛々しくなったかと言うと、そうでもない。

王妃様からの王子妃教育に疑問と危機感を持った官僚達が、元王女である私のお母様に教育を依頼しに来た結果、なんだかフワフワした『爆滅妃』が出来上がった。


フワフワした『爆滅妃』ってなんだ。と言われそうだが、そうとしか言いようが無い。フワフワした『爆滅妃』なんだ。

教育の結果『ふえぇぇぇ』とか『ふわぁぁぁ』とか言わなくなっただけでも良しとして頂きたい。十五歳になってもまだ言っていたら問題だし。


王妃から『架空の騎士団(ペルソナナイツ)』のメンバーに引き入れられたアリスちゃんは、時々こうして騎士団と言うか、軍服の様な物を身に付けている。

理由としては、爆撃による爆風でスカートがなびく事を、クリス様がやんわりたしなめたからだ。

流石の優しい王子さまも、婚約者のスカートが爆風でまくれるのは許せなかったらしい。


架空の騎士団(ペルソナナイツ)』のメンバーの騎士団風の衣装は、元メンバーであるアリスちゃんのお母様が作っている。

アリスちゃんのお母様が王妃様と同じ冒険者チームの団員だと聞いた時には、耳を疑った。普通の貴婦人だと思っていたのに、裏切られた気分だ・・・。

他のメンバーも、全員貴族女性だと聞いたから、この国の淑女教育はどうなっているのかと問いたい。

ちなみにアリスちゃんがメンバー入りした事で、アリスちゃんのお母様は引退したそうだ。


しかし王子様よ。爆風でまくれはしないけど、この騎士団服も問題だよ。


上着が巨乳ではち切れそうになっているし、パンツ姿だとアリスちゃんのムッチリしたヒップが目立ってけしからん。

ゲームのキャラデザでも、けしからん感じのメリハリ我儘ボディだったけど、凸凹具合がそれよりもパワーアップしている。出て来るゲーム間違っているよコレ。乙女ゲーじゃ無くてギャルゲーだよ。


ちなみに王子の好みはフワフワなので、王子とゆっくりお茶会する時は、花の妖精みたいなドレスを着ている。どこまでも第二王子ファーストなアリスちゃんだった。相変わらず可愛いね。


いや、ウルシュ君(婚約者)ファーストでは私も負けてないよ?


そんなアリスちゃんが、私達の前に辿り着くと、フワフワと口を開いた。


「ベラちゃん。学科棟の消火は終わったのですけどぉ、職員棟がまだ燃えているそうなんですの。ですから今日はもう、入科届の提出は出来ないそうですわぁ。困りましたわね~。だけど、皆さんとキャンプファイヤーする事になりましたのよ。ベラちゃん達も一緒に参加なさらない? 」




あ、・・・・・・・・・職員棟の消火の事、忘れてた。




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