絶対に改良が必要だわぁ・・・・。
消火活動(物理)の為に炎の中に突っ込んで行くのは良いけど、服が燃えるな。
自分は全属性耐性を持っているから、この程度の炎じゃ火傷しないけど服がなぁ。ドラゴンの着ぐるみはベラに着せちゃったから、もう無いし・・・。
他に炎に強い耐性がある衣装は、ザハール王国出身である王太子妃からの依頼イベント時の『灼熱の踊り子ガチャ』の衣装なんだよなぁ。
ただこの衣装、サンバの踊り子レベルの露出の激しさだから、これ着て消火活動を行うのには抵抗感が。
いや、この世界だとサンバの踊り子の衣装で街を闊歩していても誰も気にしないんだけど、元日本人の感性だと身に付けるのに勇気が要るんだよ。
街中でビキニアーマーの人を見ようが、サンバやアラブの踊り子みたいな恰好の人を見ようが、気にならないけど、自分が着るとなるとねぇ・・・。
スタイルは日本人の頃よりは遥かに良い。悪役とはいえ乙女ゲームの主要キャラをはるだけはあるよ。
でも公爵令嬢なのに、なぜか腹筋がわれているのがコンプレックスなんだ・・・。そういう物理方面の肉体美は要らん。
流石にシックスパックと呼ばれる六つにまではわれて無いとはいえ、特に筋トレした覚えも無いのに何故だ。
記憶を取り戻したばかりの子供時代は普通だったんだけど、成長と共に筋肉も育って来たのよね。
LvやHPに見合うよう、肉体も進化を遂げたのかしら? まさかね。
ドレスや今みたいにワンピース着てれば分かんないけど、ウルシュ君に腹筋がわれている女だと知られるのが嫌な乙女心。
もし私が冒険者や女騎士なら特に思う所はないだろうけど、現公爵令嬢が腹筋われてたら不自然でしょ。いや、この世界なら有り得なくもない?
まぁ、仕方が無いか。衣装系は前世でのアイテム交換で大放出したから、他のアイテムより数が少ないんだ。ほぼレアかSレアか真レア衣装しか残って無いから、こんな時に選択肢が限られて困るのよねぇ。
と、言う事で身に着けました。『灼熱の踊り子ガチャ』の真レア『紅蓮の乙女』。
金と赤のビキニっぽい衣装に用途不明の謎の飾りがジャラジャラとぶら下がってます。そして腕輪だとか足輪(?)だとかが沢山付いてシャラシャラと音をたてている。
そして頭には巨大な羽根飾りが何本もそびえ立つ。
ってかコレ、なんの羽根だよ。長さが1m以上あるんじゃないか? この飾りだけなんか原住民っぽいぞ。
頭の羽飾りだけでも外そうかと思ったんだけど、この頭の羽飾りが体温と周囲の空調管理をしてくれて、炎の中でも快適に過ごせるみたいなんだよね。火傷をしないとはいえ流石に暑くて汗を掻くから身に着けておく事にした。
ただ、こんな陽気な恰好で燃え盛る建物を解体するって、なんのフェスティバルだよ。
現に、私が解体作業を始めてから、火災の野次馬がショーの観客へと早変わりした。
本人は真面目に消火活動しているのに、周囲からは楽しそうに遊んでいる様に見えるジレンマ。
諦めて観客は気にせず、建物にあがり上から順に建物を殴る、蹴る、高く跳び上がっては体当たり。
足場が崩れればバク転や立体機動で転落を回避し、更に回転を付けラリアットやエルボーで粉砕しては、瓦礫を建物の土台から遠ざける様に学科棟前の広場に除けていく。
そんな作業を続けていると、野次馬の一部がどこからか樽やドラム缶を転がして来て、それをドラム代わりにパーカッションを始めた。
終いには、それに合わせて観客が手拍子や足踏みでリズムを取り出す。
いや、だからエンターテインメントじゃねぇからコレ!!
そして、それっぽい感じの民族調の歌を歌い出したの誰だよっ!! 上手いな、お前!!
ドンドコドンドコドンドコ♪ ドゥドドドドド・・・
「テエィオーrrrrルァッ!! ツオルrrrrアっ!! トゥトゥーリナノ・ミッツァッ!! 」
パーカッションが激しくなると共に、謎の歌が盛り上がって良いく・・・。
巻き舌具合がヤベェな。でも、そんな言語聞いた事ないぞ。
私はウルシュ君と世界中を行商して回るつもりだから、せめてこの大陸の主な言語は覚えようと家庭教師を付けて貰っているけど、聞いた事が無い。
もしかして、造語で適当に歌っているんじゃないか?
ズドン!! ドンドンドッパッパッドン♪
「ファガナミティルィエーダ!! トゥトゥーリナノ・ミッツァッ!! 」
っていうか私の消火作業に、伴奏と歌を入れるの止めてぇぇぇ!!
私は掃除とか何かしらの作業中に音楽をかけられると、無意識に動作がリズムに合わせちゃうタイプなんだよっ!!
「トゥトゥーリナノ・ミッツァッ!! アァ~~アッアッ! トゥトゥーリナノ・ミッツァッ!! 」
トゥトゥーリナノ・ミッツァッはもう良いよっ!!
さっきから『イターリアの、ピッツァ!! 』って連呼されてる感じで、やけに耳に付くんだよっ!!
そんなトゥトゥーリナノ・ミッツァッを私一人で頑張っているなか、周囲の観客の熱気が最高潮に達している。まさに観客参加型のショーだ。
いや・・・。手拍子に観客一体になるんじゃなくて、消火活動の方に参加して頂けませんかね?
観客の中には集めた瓦礫の残り火を、何とか消そうとしてくれている人も居るけど、圧倒的に手拍子している人数のが多い。
盛り上がる観客を横目に解体作業を続けていると、離れた所に建つ錬金術科棟の前にある広場。そこの中央に設置された大きな噴水から噴き出していた水が止まり、波打つ水面が薄桃色に輝き出した。
一体なんの現象だろうと様子を窺っていると、光り輝く噴水の中央から水を押し上げる様にして、青銅色の大きなゴーレムがゆっくりと姿を現した。
ゴーレムは全身が噴水の中央に搬出されると、両目を青白く点灯させ、全身から水を滴らせながらゆったりとした動作で噴水から出て行く。
そして噴水から出ると、それまでのゆったりしていた動きから一転、綺麗なフォームで俊敏に走り出し、そのまま燃え盛る錬金術科の学科棟にタックルした。
やった!! 錬金術科のゴーレムが一体、消火活動に投入される!!
ありがとう錬金術科のゴーレム製作チームとウルシュ君!! そして、頼むよゴーレム君!!
ゴーレムのタックルを受けた学科棟は、そのまま地雷原と化している裏庭へと崩れて行き、作動した地雷で更に粉々に吹き飛んだ。
流石に大きいだけあるね。私の手足でチマチマと破壊作業するよりも、一撃で押し出せる瓦礫の量が多い。
ゴーレムが十回程タックルするだけで、一棟分の解体が完了出来る。コレで消火活動が一気に進むぞ!!
そう期待していると、更に噴水の中央からもう一体のゴーレムが姿を現す。
搬出された二体目のゴーレムは、頭部以外が赤みの強い赤銅色。
頭部は透明に成っていて、その中にルイス・ハント先輩がギュウギュウに詰め込まれていた。
うん・・・。まさに詰め込まれてますって感じ。
ルイス先輩がいくら合法ショタ枠の小柄な体型だと言っても、かなり無理がある・・・。
だって、ゴーレムの頭部部分に体操座りだぜ? そんな操縦席あるか?
しかも、どう見ても絶対その姿勢のまま動けない。頭が痒くなっても絶対に掻けない設計の操縦席。なんか切ない。
あの操作型ゴーレム、絶対に改良が必要だわぁ・・・・。
前回も言いましたが、H30.6.10に二巻が発売されました。
詳しくは活動報告にて(書影あり)。画像の張り方を教えて下さった方々、ありがとうございました!!