表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
これ、本当に乙女ゲームか?
105/145

悪い事はさせないよ!

とりあえず第一の目標が出来た。

まず『大賢者を探し出し、情報を集めよう』だ。やる事が多すぎて、どこから手を付けていいか分からないから、当面の目標を決めてそこを突き進めば、解決の糸口が見つかるかも知れない。

マリエタも、今までのループの間に『大賢者』と接触した事が無いようだから、問題解決に向けての、新たな角度からのアプローチになるんじゃないかな?


「と言っても、私が『大賢者』の存在に気が付いたのは、前回の人生の最後の方だったから、あまり具体的な情報を持っていないのよね。だから探し出す為の手掛かりは何も無くって・・・」


「そう。マリエタはどんなきっかけで『大賢者』の存在を知ったの?」


私の質問にマリエタは何かを思い出す様に首をかしげながら考え込んだ。


「そうねぇ・・・。世界が崩壊する直接的な原因は毎回微妙に違うんだけど、でも世界が崩壊する前には必ず、大陸中を巻き込む大戦が起きるの。大戦の名前は色々あったけど、一番使われていたのが『ガルファシア大戦』だったかな」


「う~ん、大陸全土で戦争が起こるのか。卒業後にウルシュ君と大陸中を行商して回る予定なのに、戦争が勃発するのは困るな~」


「ウルシュ君と行商? もしかしてウルシュ君って、スネイブル商会のウルシュ・スネイブルの事?」


その質問に肯定すると、マリエタはその場に足を止めソワソワと何かを悩み始めた。


一体なんだろう? そう言えばマリエタの家族に王都から離れた先の、ワイン工場という仕事先を紹介したのはウルシュ君だけど、人伝にそれとなく紹介しているから直接的な接点は無かった筈。

という事は、マリエタがウルシュ君について知っている事と、今こうして何か考えているのは、ループ中のウルシュ君の事だろうか?


マリエタが何についてソワソワと考えているのか分からないけど、とりあえず彼女の考えがまとまるまで、黙って待つ事にした。


しばらく挙動不審に考え込んでいたマリエタは、ようやく考えがまとまったのか、真剣な表情で私に向き直った。


「ねぇイザベラ、そのウルシュ君とどんな繋がりが有るのかは知らないけれど、余り彼には関わらない方が良いと思うわ。この学院にいる間に彼とは距離を置いて、近づかないようにして」


・・・私の婚約者が、ヒロインから触るな危険の要注意人物扱いされているでござる。


いや、関わるなって言われてもウルシュ君は私の婚約者だし、三年後には結婚して家族に成るんだけど。

そういえばマリエタには『婚約者が居る』とは言っていたけど、それが誰かは言って無かったわね。


でも感情のままに、『人の婚約者をそんな風に言うなんて酷い』とかは言いませんよ。

だって、これまでの間に『ゲームウルシュ君』のヤバさは何となく理解できているからね。

私と婚約するかしないかの分岐点で、ウルシュ君の性格や錬金術で創り出す物に大きな差があろう事は、何となく察しがついている。

多分マリエタは、私と『婚約していない人生を歩んだウルシュ君』つまり私の知る『ゲームウルシュ君』の事を言っているんだと予想。


ただ私は、ゲームで購入したウルシュ君が創ったアイテムと、ウルシュ君が過去に『暴食まりょくぐらいマスク』を創ろうとしていた話を聞いて、『ゲームウルシュ君』の人格を私なりに予想しただけなので、実際に分岐の先にいるウルシュ君を知るわけでは無い。


でも今ここに、分岐の先に居たであろうウルシュ君を知っているマリエタが居る。


「えーと。どうしてウルシュ君と関わらない方が良いの?」


ウルシュ君が私の婚約者だと伝えてしまうと、本音が聞けないかもしれないので、その事は言わずに質問だけする。ごめんマリエタ、肝心な事は言わずに情報だけ引き出そうとして。


「私もあまり詳しくは知らないんだけど、これまでの学院生活の中で彼の周囲には色々な噂があったの・・・。実際に憲兵に要注意人物としてマークされていたから、噂に信憑性が有ったし」


「噂? どんな噂があったの?」


「それが・・・学院内の規則に反して、生徒相手に授業で使った物や創った物を売っているとか」


ポイントで買えるアイテムの事ですね。分かります。


「さらには、まだ未承認の実験段階のアイテムの試作品を売り払っているとか」


課金アイテムの事ですね。分かります。


「一定価格で、何の商品が入っているのか分からない物を売っているとか」


課金ガチャの事ですね。分かります。


「そう言った商品のやり取りしていたんじゃないかと言われている生徒の一部が、行方不明になっているとか。彼と親しくなると行方知れずになるとか」


それは初耳だわ。行方不明ってかなり大事じゃないか?


「学院に慣れる事が出来なくて、学院から飛び出して行く生徒は毎年一定数はいるんだけど、学院側も生徒を預かっている訳だから、衛兵や憲兵に捜索願を出して探して貰うんだけど、私が学院に入学してからの三年間は例年より行方不明者が多くて問題になるの」


「それがウルシュ君が原因だと」


「はっきり彼が原因と証明された訳では無いのよ。あくまで疑わしいってだけで。でも行方不明者の中で、発見されない生徒の一部が、彼と一緒に居る姿を度々(たびたび)見かけられていたって言う事で、憲兵からマークされる一人になっていたの。学院に隠れて金銭のやり取りをしている噂もあったから余計に疑われたんじゃないかと思うんだけど。でも事実だとしたらイザベラが心配で。だから出来れば彼とは関わりを持たないで欲しいの」


なるほど。素行の悪さが裏目に出てしまったとも考えられなくも無いけど、ウルシュ君と一緒に居た人達が、次々と行方不明になれば警戒されるのも仕方が無いかも知れない。


でも、果たしてそれだけだろうか?


そんな噂が流れていたと言うだけで、マリエタ(・・・・)が関わるなと言うとは思えないのだ。

マリエタはそんな噂だけで、左右されるような人物ヒロインではないと思う。他にマリエタが近づくのをためらう様な何かが有るはず。


「それだけ? 本当にそれだけの理由で言っているの? 私は何度ループしても、強く前向きに生きようとしてきたマリエタが、聞いた噂だけで誰かの評価をする様な性格では無いと思っているんだけど」


そう言うと、マリエタは視線を左右に泳がせて黙り込む。

気を落ち着かせようとしているのか、腕に抱いたベラの頭を撫でたり、握りこんだ小さな手を包みこんだりしたマリエタは、暫くするとポツリポツリと語りだした。


「何度かループしている時にね、私のお父様が沢山の人を誘拐していた事が分かったの」


マリエタの父親と言う事は、ヒルソン子爵。『カラーズコレクター』の事か。


「私は愛人の子だから、一緒には住んでいなくて父親の事はあまり良く知らなかったんだけど、世間で騒がれている連続誘拐犯が自分の父親だと知ったループの時に、私はお父様に殺されたの」


成る程、確かに何度もループしているのなら、その事実に気が付いた人生も有ったかもしれない。

ゲームと同じかは分からないけど、マリエタは『カラーズコレクター編』でバッドエンドを迎えた事が有ったのか。


「その次の人生から、何度もお父様を止めようとしたんだけど、説得はおろか、そんな事をしている理由さえ知る事が出来なくて、何度も失敗したんだけど」


きっとマリエタがどんなに心を尽くして説得しようとしても、彼は止まらなかったのだろう。四代にわたって息子達に取りつき、ただひたすらに妻を甦らせようとしたのだ。

その為にマリエタが生まれる前から罪を重ねすぎて、説得して思いとどまらせる事が出来る時期なんてとっくに通り過ぎている。


「その、失敗する原因の一つがウルシュ・スネイブルの存在なの。彼とお父様は繋がりが有ったんじゃないかって、何かは分からないけど、お父様と彼の利害が一致して協力関係に有ったんじゃないかって思っているの。直接的な妨害をウルシュ君からされた訳では無いんだけど、妨害の影に彼の存在がちらついている事が多く有って。でも、何度やり直してもウルシュ君の関わりを証明する事は出来なかったの。それでもやっぱり、完全に無関係とは思えなくて」


もしもヒルソン子爵とウルシュ君に繋がりが有ったのだとすれば、それは『反魂の首飾り』関係だろう。

いくらウルシュ君が大商会の次男坊だとしても、そう簡単に人間の魂を材料にするアイテムの製作を、自由にさせて貰っていたとは考えにくい。

なら、どこで試作、研究、作成をしていたのかと考えると、材料や制作場所を提供してくれる協力者が居たと考えても不思議では無い。

同じ王都内に、ヒルソン子爵と言う百年以上研究してきた人物が居るなら、接点を持ってもおかしくない。


そこで、学院内の課金ガチャに放り込んでいた『反魂の首飾り』を製作していたのかも知れない。

では、『反魂の首飾り』が完成したのにも関わらず、なぜ大量に製作し続けたのかと考えると、やっぱりヒルソン子爵の奥さん、リンゼイさんの魂の状態が問題だったのだろう。

リンゼイさんの魂が分解されてエネルギー体に成ってしまっていたのと、そもそもの『反魂の首飾り』の発動条件が問題で反魂、完全復活させる事が出来なかった。だから改良の為に創り続けたんじゃないだろうか?


その時のウルシュ君が、ヒルソン子爵の奥さんを、本気で生き返らせる気があったかどうかは知れないけど。

下手するとリンゼイさんの復活をチラつかせて、ヒルソン子爵を利用だけしていた可能性も有り得ちゃうところが嫌だ。


そう考えると、生徒の行方不明にウルシュ君が関与している可能性だって、かなり大きくて何とも言えない。


現在のウルシュ君は、絶対にそんな事ないって自信もって言えるけどね!!


「大丈夫だよマリエタ!! 今回のウルシュ君にはそんな噂流れないから。だって婚約者の私がウルシュ君の傍にベッタリ引っ付いているから、悪い事はさせないよ!」


「婚約者の私?」


「うん。私に婚約者が居るって言ったでしょ? その婚約者がウルシュ君なんだよ」


「え・・・。どうして? どうして公爵令嬢のイザベラの婚約者がウルシュ・スネイブルなの?」


よろしい。私とウルシュ君の出会いからこれまでの出来事を、とくと聞かせてしんぜよう。

まずは私の前世から順番に説明するから、それ聞いて少しは安心してくれ。

今回のマリエタの人生は、私とウルシュ君で大体の問題を片付けておいたから、ループ問題と世界の崩壊問題に時間がさけるっていうものですよ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ