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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
これ、本当に乙女ゲームか?
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私、良い事考えた

童謡に動揺しながら学院内を迷わず進んで行くマリエタについて行く。


「マリエタ、よくこんなに静かな通り道を知っていたね」


遠くに聞こえている、騒動の音を聞きながらマリエタに声をかける。

学院の敷地に入ってから、マリエタは暴動に巻き込まれない安全な道を選んで突き進んでいた。


「だって何十回も学院生活をやり直しているんだもの。この入学式にも慣れてるわ。他にも隠し通路だとか、隠されたまま忘れ去られていた禁書庫の場所とかも知っているから、なにか学院内で困った事や知りたいことがあれば私に聞いてね」


隠されて忘れ去られた禁書庫か。ウルシュ君とギースが喜びそうだね。

でもゲームのどのルートにも出て来なかったから、ゲームルートで紹介されていた未来以外のループ知識なんだろう。

一体マリエタは、何度この世界を繰り返して来たんだろう。


「やっぱりマリエタはループを抜け出したい? ・・・よね」


「うん。やっぱり、もう疲れちゃったかな。前の人生で死に別れたりした人ともう一度会えて嬉しかったり、別の人生では助けられたりするけれど、やっぱり前の人生で出会ったその人とは違うの。苦楽を共にした思い出も、相手からは失われてしまうし。そんな時は本当に悲しくて悲しくて、どうしようもなく泣きたくなるの」


確かに、ゲームで見たシナリオだけでも、カラーズコレクターだとか、ブラッディメイデン事件だとか、牙楼帝国の第二皇子の護衛だとか、かなりの量の事件を皆の好感度を上げつつ協力し合って乗り越えて来たのに、ループで戻ってその思い出や信頼を、初対面からやり直しって成ったらやるせない。

自分は覚えているのに他の皆は覚えていないなんて、想像しただけでも辛いのに、実際それを繰り返してきたマリエタはどれほど苦しんだだろう。


聞いてはみたものの、マリエタの返答に言葉を返せずにいると、マリエタは私を振り返ると少しバツが悪そうな笑顔を私に向けた。


「でも、その度に可愛い我が子のベラだとか、新しい旦那様だとかに会える幸せもあるの。辛い事ばかりじゃないわ。今回はイザベラとだって出会えた。私はこんな新しい出会いや新しい幸せがあるから、辛い繰り返しの中でも強く生きて行けるの。辛い事ばかりじゃないって知っているから、心折れずに今までやって来れたの。だから繰り返しが終わる最後の人生まで、私は一生懸命生きあがくわ」


そう言ってマリエタは私の正面に戻ると、私の額に自分の額をそっと寄せる。


「だからイザベラ。今回で私をループから外す方法が分からなくても、気にはしないで。確かにこのループから抜け出したいわ。でも理由や原因は分からないけど、これは私の事情や私の戦いでもあるのよ。諦めずにいたら今回のいつもとは違うイザベラと出会えたし、学院開始前から沢山の事が変わっている。あなたはようやく見つけた私の希望の光。今回貴女と出会えたそれだけで、まだまだ私は頑張れるわ」


そうして今回が駄目なら、マリエタは次からも一人で戦うのだろうか。

何度も絆を結び直して、終わりの見えない出口を探して、違う結果を求めて一人で繰り返すのだろうか。

そこに再び私の人格が居るのかは分からない。

マリエタの今までの人生で、私が前世の記憶を持っていなかった事を考えると、次もマリエタがと出会えるか分からないし、たとえ次の人生でも私が前世の記憶を持っていたとしても、今のこの瞬間の思い出を持っているかは分からない。


覚えているのはマリエタだけ。


「マリエタ。私も協力するから。一緒に学院に通える間もループについて沢山調べるし、卒業して世界中を行商の旅に出ている間も、新しい土地で何か情報が無いか調べ続ける。それと、マリエタが心配していた、世界の崩壊に関係していると思われる大賢者についても」


ミッションが多すぎる気がするけれど、マリエタは今までそれを一人で頑張って来たんだ。

手分けしたら、もっと情報を集められるかも知れない。


「ありがとう、イザベラ。もし今回が駄目で、また繰り返す事に成っても、今回の貴女の事はずっと忘れないわ」


「今からそんな事を言ったら駄目だよマリエタ。私はクエストを受注したからには、一生かけてでもクエスト達成するつもりで行くから。マリエタも疲れただろうけど、まだ次の事は考えずにいて」


「そうね。始めから次を考えていたら、上手く行くものも上手く行かないわね」


ゲーム風に軽く『クエスト受注しました』なんて言ったけど、セーブは利かない上に攻略情報皆無の現実世界で、どう挑んで行けば良いだろう?

失敗したら、私じゃ無くてマリエタが『はじめから』を強制選択させられる訳で。

これ本当に乙女ゲームじゃ無いよ。ジャンル詐欺だよ。いや、異世界とはいえゲームじゃ無くて現実なんだけど。


さて、真剣に考えると気が重くなるから、ゲーム風で考えよう。

現在、私が受注しているクエストは


・大賢者が関わるとされる世界の崩壊を調べよう

・世界の崩壊を止めよう

・マリエタのループの原因を解明し、マリエタをループから解放しよう


の三つかな。

私の個別クエストとして、


・ウルシュ君と無事に卒業して結婚する

・大罪王スキルを何とかして、魔王化を防ぐ


だね。『ラブ☆マジカル』のヒロインであったマリエタが、こんな状況だから、乙女ゲームのVer1のイザベラ公開断罪イベントは既に回避できたと思って良いだろう。


あれ? 私気付いちゃったんだけど。


『大賢者』ってさ。『大賢者』って呼ばれるだけあって、物知りなんじゃ無い?

だって賢い者で『賢者』でしょ。しかも『大』って言うだけ有って、かなり知識があると思うんだけど。


つまり『大賢者』さえ見つける事が出来れば、世界崩壊に関わっているのか? とか、マリエタのループについて何か情報を持っていないか、とか、大罪王スキルについて聞いた事は無いか? とか、私を魔王にしようと企んでいる誰かさんの話を聞いた事は無いかとか、色々聞き出せるんじゃないだろうか?

全部が全部を『大賢者』が知らなくても、手掛かりは掴めるんじゃない?


「マリエタ。私、良い事考えた」


「え? なぁに? 」


「『大賢者』を生け捕りにしよう!!」


「え?」


「だから『大賢者』を生け捕りにするんだよ!! そうすれば、大体の悩みを解決するのに、状況が前進するよ!!」


「え・・・あ、うん。そうね・・・。うんっ!! そうだわ! 確かにそうよ。イザベラ『大賢者』を捕まえましょう!!」 





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