ゴーゴニャス大陸・・・どっかで聞いたな。
「なにその歌」
ベラをあやしながら歌っていたマリエタに声をかける。
「え? 今の歌? この歌は私の旦那さんがベラをあやす時に歌っていた歌なの。なんでもゴーゴニャス大陸の方の童謡なんですって」
今日はマリエタが錬金術科の入科届を貰いに行きたいと言うので、一緒に学院に向かっている。
私は既に入科届を提出しているので、授業が始まるまで学院に行かなくても良いんだけど、乳幼児連れのマリエタをあの学院内に行かせるのが心配だった。
そこで護衛するつもりでついてきたのだ。
現在私はマリエタとベラに防御魔法をこれでもかとかけている。
一応マリエタも防御魔法が使えるらしいのだが、ケルベロスやドラゴンが解き放たれ、爆撃による轟音が響き渡っている学院内で、幼児を連れて歩くには不安があったので、私が魔力量に物を言わせて強固に保護させてもらった。
「ゴーゴニャス大陸・・・どっかで聞いたな。あ、そう言えばウルシュ君が、メタリア王国からゴーゴニャス大陸に向けて、飛行船の定期便が始まるって言ってたね」
「そうなの! 今までは船でしか貿易が出来なかったんだけど、海には海獣が出るからあまり多く行き来が出来なかったんですって。これからは空から行き来が出来る様になるから、沢山の鉱石や魔宝石の取引が出来る様になるって、旦那さんも言っていたわ」
「へー。という事は、その歌はゴーゴニャス大陸から船で来た人達が、メタリア王国に持ち込んだ文化の一つなのかな」
「そうみたいね。確か今の歌は『王様の欠片』って言う唄よ」
・・・・・・『王様の欠片』ね。
なんだろう。私ってゲーム脳なのかな? なんか『大罪王の欠片スキル』に関連付けて考えそうに成ったよ。
だってなんかイベントクエストを受けるのに必要な情報っぽくない? この情報を持ってないとイベントクエストが発生しない的な。
まぁ、これはゲームじゃ無くて現実だから、関係無いんだろうけど。
いや、待てよ? 無関係と決めつけるのは早いかな?
でも他の大陸の唄だしなぁ。
「ねぇマリエタ。今の歌もう一度聞かせてくれる?」
「ん? 良いわよ」
お願いするとマリエタはこころよく引き受け、もう一度同じ歌を歌い出す。
「ヘルバンダーニャの山の上 悪い王様おりました
ヘルバンダーニャの山の上 独りで王様おりました
王様山から降りません それでも誰より物知りで
王様両手を組んだまま それでも誰より強かった
王様瞼を開けません それでも誰より見通して
王様声を出しません それでも誰より魅力的
ヘルバンダーニャの山の上 悪い王様おりました
何をしたかは知らないけれど 悪い王様おりました
ある日空から聖騎士が 王様退治にやって来て
王様十個に分けました
ヘルバンダーニャの山の上 強い聖騎士帰ったら
ヘルバンダーニャの山の上 十個の王様拾います
遠い遠い海の向こう 十個の王様捨てに行き
七個は捨てて 二個食べた
ヘルバンダーニャの山の上 悪い王様おりません
ヘルバンダーニャの山の上 独りの王様おりません」
う~ん。思い込みというか、先入観を持っている所為かもしれないけど、怪しい。
どうも『王様の欠片』と『大罪王の欠片』を関連付けようとしてしまう。
大罪王ってのは、言いかえれば悪い王様とも言えなくも無い訳で。
瞼を開けなくても見通すって《色欲》《傲慢》《強欲》に関連付けて考えられる気がするんだよなー。
《傲慢王》みたいな能力なら、山から降りなくても物知りだろうし。
両手を組んでも強いってのは何だろう? 《暴食王の両腕》かな? でも《暴食王の両腕》の能力って、結局何だったのか分からないままなんだよね。
でも十個に分かれてるなら、七大罪とは言えないよね。
七個捨てて、二個食べた。の捨てられた七個が七大罪と考えられなくも無いけど。って、うん?
七個捨てて 二個食べた?
ちょっ!! 残りの一個が行方不明!! 最後の一個どこ行ったんだよっ?!
「ねぇ、それ数が合わなくない?!」
「え? 何の数?」
私の疑問にマリエタが首をかしげる。
「いや、王様の欠片だよ。十個に分けて、七個捨てて、二個食べて、じゃあ残りの一個は?」
「う~ん? あ、本当。あんまり深く考えて無かった。でも古い童謡って意味が分からない物が多いし、そんなに深く考えなくても良いんじゃ無いかな?」
確かに童謡って意味が分からない物が多いけど、なんかモヤモヤする。
そう言えば日本の童謡も意味が分からなかったり、実は怖い意味が隠されている的な物も多かったけど、それと同じような感じでは流せないんだよね。
実際自分に《大罪王スキル》として、ステータスに実害が出ているからなぁ・・・。
えーー。何コレ怖い。
ゴーゴニャス大陸の童謡が怖い。
ギースが《魔道辞典》スキルで、ゴーゴニャス大陸の童謡についての詳しい情報持ってないかな?
でもなぁ・・・。最近のギース会話が成り立たないから、あまり話したくないんだよね。
なんかゲームと違って、ギースってば中二病こじらせたのか、言い回しが難しいというか詩的と言うか、とにかくブライアンが間に入って通訳してくれないと、何言っているかサッパリなんだよね。
なのにも関わらず、頼みの綱のブライアンはゲームと違って魔術学院に入学して無いし・・・。
やっぱり困った時のウルシュ君頼みになるかなぁ?