ごめんなさい。
皆さん、こんにちわっ!!
私は、イザベラ・アリー・ロッテンシュタイン、6歳。忍者だよ☆
ただいま絶賛、天井に張り付き中なんだ♡
実はイザベラは今、と~ても困っているんだぉ↓↓
なんでって?だって、今、私の下で・・・・
「ショーン様、私は本気で言っているんです。子ども扱いして、私のこの想いを、一時の気の迷いにしないで下さい・・・・。」
「そうは言ってもマリー・・・私は見ての通り、おじさんなんだよ?君より年上の息子だっている。若くて、優しくて、とても魅力的な君には、もっと素敵な・・これから先、君と長い人生を一緒に歩んでくれる、同年代の男の子の方が、きっと」
「私はっ!!私は・・・・ショーン様が良いのです。ショーン様で無ければ嫌なのです・・・」
「マリー・・・」
「たとえ、傍に、共に居られる時間が短くても、私はショーン様と歩む日々しか、欲しくないのです。」
・・・・・・・・・・。やべぇ。降りられねぇ。
天井から降りられねぇよ。
いくら《気配遮断》使ったところで、天井から降りて、扉開けて、立ち去っていい空気感じゃ無い。
だからといって、天井を蜘蛛の様にカサカサ移動して、部屋の隅まで行くのも、雰囲気ぶち壊しだ。
公爵令嬢が天井に張り付いている時点で、雰囲気もへったくれも無いけどな!!
とにかく、動くのは無しで。
私はこの部屋に、存在しない。
そう、存在しないんだ。
いっさい身動きを取らずに、空気と化す。
でもさぁ・・・なんで、よりにもよって、私が密偵の練習してた部屋に入って来て、こんなやり取り始めちゃうかな?
意図せぬ感じに、実践練習になっているけど、気まずいわー。
あと、ショーンはもう諦めろ。
諦めてマリーと一緒になれ。
お前も本当は、マリーが好きなんだろぉ?
マリーは気苦労が絶えなかった子で、芯が強く、真っ直ぐとした信念を持った子だから
生半可な気持ちで、初老のショーンに想いを告げている訳では無いんだよ・・・・
まぁ、そんな事、当のショーン本人も理解しているだろうけどねっ!!
・・・・あぁもう、じれったいなぁ。
でも、ここで天井から降りて行って、ショーンを諭すわけには行かない。
天井から公爵令嬢が登場しちゃったら、台無しだ。台無し。
私は空気。そう空気。この部屋に存在しない。
もう少し、ジッとしたまま耐えるんだ。
───────────────・・・
「あいつら・・・・あの後30分やり取りして、結局なんの進展も無しか~い!!」
って、人の事を言える立場じゃ無かった。
私とウルシュ君の仲も、たいして進展して無いよ。
そもそも、ウルシュ君、初対面であっさり私のプロポーズを受けてくれたけど、
実際問題、私の事をどう思っているんだろう?
ウルシュ君的には、初めて会った、全く知らん子からプロポーズされた訳で・・・
何も考えずに、適当に勢いだけで、受け入れてくれたんじゃなかろうか。
それが、親も交えた話し合いで正式に、婚約者候補にされた事で、今頃困惑しているんじゃ・・・
私としては、出来る事なら、ウルシュ君と相思相愛で結婚したいと思っているのよ。
ウルシュ君に好きになって貰えるように、アピール出来る時間が欲しいんだけど・・・。
せっかく、忍者並みの隠密能力持っているんだから、屋敷を抜け出して会いに行ってみる?
公爵家の屋敷なんていう、ウルシュ君にとってアウェーな所で交流するより、
ウルシュ君にとって慣れ親しんだ場所の方が、気負わずに自然体で交流が出来るかも知れない。
でも、ウルシュ君の家ってどこだ?
スネイブル商会に行けば会えるのかな?
───────────はい。あれから3日経ちました。
私はただいま、《気配遮断》を駆使して、絶賛尾行中です。
誰を?メイドのマリーちゃんです。
今朝、マリーちゃんにウルシュ君あての手紙を預けました。
そして、その手紙をウルシュ君のお宅に届けに行くマリーちゃんを、コッソリ尾行し
ウルシュ君のお宅を把握しちゃおうってな作戦ですっ!!
上手く行けば、ウルシュ君に会えちゃうかもっ!!
私、頑張って頭使ったんですよ!!
問題が有るとすれば、マリーちゃんの足取りが重く、ため息をついては立ち止まり、遠くを見る事。
うん。3日前の、あの出来事から
ショーンさんはマリーちゃんの事を、それとなく避けているのです。
多分その事には、当のマリーちゃんと、私しか気づいていないけど。
そして、それによって日に日に元気を無くし、ため息が多くなっているマリーちゃん。
こうして歩いている間も、思いにふけっているのか、周りの様子が見えていない様だ。
「あんな風に、上の空で歩いてちゃ・・・危ないわね・・・大丈夫かしら?」
「そうだねぇ~。とくに午前中は、仕事で急いでいる人が多いからねぇ。危ないよねぇ。」
「確かに、以前に馬車の中から見た、昼間の町の賑やかさとは違って、慌ただしい感じね。」
あっ!!マリーちゃん、停めてあるリアカーに激突してるっ!!
ギリギリ踏ん張って、転倒は免れたっ!!
そのまま、上の空で歩いて行く・・・・。
「あらら、全然、周りが見えて無いわね。リアカーの持ち主のオジサンも苦笑いしてるじゃない・・・。」
「あんな状態で、ちゃんと目的地まで辿り着けるのかなぁ?あの人、どこに向かってるの?」
「ウルシュ君のお宅ですわ。ウルシュ君に、私の手紙を届けに向かっているんですの。」
あの様子じゃ、手紙届けて戻るまで、どれだけ時間を要するのか分かんないけど。
「そうなんだぁ~。でも、僕のウチ、とっくに通り過ぎてるよ?」
っなんですとーーー!!通り過ぎている、だと?!
「えっ!!それって本当ですのっ?!」
驚きの事実に、尾行中なのも忘れて、大きな声で横にいるウルシュ君に聞き返す。
突然大声を出した私に驚く様子も無く、ウルシュ君はフニャリと笑うと
私達が今まで歩いてきた道を指さし、説明をする。
「うん。この道を10分程戻った所に、青い看板の本屋さんが角に有ったでしょ?そこの十字路を左に曲がって・・・あ、こっち方面から見たら右かぁ。それでそこを・・・・」
ふむふむ、なるほど。
レンガ造りのスネイブル商会の倉庫を通り過ぎた
5軒先の緑の屋根の3階建てがウルシュ君のお宅なわけね。
大変分かりやすく教えて頂き、有難うございます。
これで、ウルシュ君のお宅に遊びに行けるねっ!!
──────────・・・ウルシュ君、いつから居たの?
いや、私さ《気配遮断》してたんだよ。
こんなお嬢様な恰好なまま、街中に出ていても誰も気付かなかったんだよ。
屋敷から出ていく時も、正面の門から堂々と出たけど、守衛さんも気付かなかったんだよ。
さらに《気配察知》と《魔力察知》もしてたの。
一応、公爵令嬢だから、誘拐犯とかの対策として。
なのに自然に横に居たね。
ずっと、ウルシュ君が横に居たと言うのに、気が付かないなんて・・・・
なんて勿体無い事をしたんだ私はっ!!
一体、何十分の幸せな時間を無駄にしてしまったんだーっ!!
ウルシュ君は《気配遮断》している私を見つけてくれたのにっ!!
私は《気配察知》していたのに、愛しのウルシュ君に気付かないなんてっ!!
なんて薄情者なんだっ!!なんて愚かなんだ私はっ!!
「どうして急に落ち込んでるのぉ?大丈夫?」
ウルシュ君・・・貴方に気付けない、こんな薄情者の私を心配してくれるなんて・・・。
くっ!!その傾げた頭が可愛いです。ウルシュ君にハグしたい。
違う。そうじゃない、まず謝るんだ、私。
「ウルシュ君は私にすぐ気づいてくれたのに、私は今の今まで横に居たウルシュ君に、気付けなかったのが、申し訳なくて・・・ごめんなさい。」
「なんだ~、そんな事かぁ。僕、他人の家で、その家の人に気付かれずに、家族団らんに混ざってご飯食べる特技が有るから、気にしなくて良いよ。」
ウルシュ君。それ、異世界で「ぬらりひょん」って言うんだよ。
あと、気付かれなかったんじゃ無くて、気付いているけど、ウルシュ君が可愛いから
一緒に、ご飯食べさせてくれたんだと思うの。
多分。きっと。そうに決まってる。
「でも、ウルシュ君は私に気付いてくれたのに・・・。」
「う~ん。僕、無くし物しないんだよねぇ。『自分の物』は、どこにあっても、すぐに分かるんだぁ。だからかなぁ?この、すぐに見つけられるのも特技かも。」
なるほど!ウルシュ君は持ち物の管理がちゃんと出来ているタイプで
さらに探し物が得意なんですねっ!!
凄いよウルシュ君!!
凄く、商人に向いているよっ!!
しっかり者で、将来頼りがいが有る男性になりそうですねっ!!素敵。
「ところで、あのメイドの人、真っ直ぐ歩いて行っちゃったけど・・・良いの?」
「あ・・・・・。」
マリーの事、忘れてた。
※ぬらりひょん:日本の妖怪。はげ頭の老人姿で、着物か袈裟を着ているとも言われている。俗説では、人の家に勝手に上がり込み、食事をしたり茶を飲むが、家主は身内だと錯覚し受け入れてしまう妖怪と言われている。
感想有難うございます。執事とメイドの恋模様は、時々様子を見せるくらいになります。興味を持って頂き嬉しいです(笑)
ステータスにSAN値が無いぞ、とのツッコミについてですが、SAN値は状態異常に混ぜちゃうつもりなので、細かく分類していません。
乙ゲー転生の物語上にSAN値まで入れちゃうと、収集つかなそうだったので(笑)
ゲームとの差異だと思って下さいませ。
皆さん応援、本当に有難うございます。これからも頑張ります。