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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第一部 最終章 東京フロート
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第九十二話 デザインフィッシュ 後編

 男がそう言ったところで、事態が動く。


 数人のやんごとなき人々が各々の執事に命を下し、男が人々が()()()()()()()()を口にしようとするのを止めようとした。


 だが、男はこの計画のために念入りに準備してきていた。男の手持ちは、マークス家の家令だけではない。今回に限り、島野家の家令の力も取り込んでいた。


 島野家で、リールに近い家令たちは今回の結婚に憂いを抱いていた。男はそのことを知り、利用することにしたのだ。


 男は初めからリールを自由にすると心に決めていた。だから、家令の中で大きな力を持っていた一人の老執事にこう持ち掛けたのだ。


『私はリールとの結婚を取りやめるつもりです。私が今から提示する条件を貴方方が飲んで頂ければ』


 男にとっては実質ノーリスク。しかし、老執事にとってはそうではない。そして、それはあっさり通った。


 男が条件提示において、貴方ではなく、貴方方。わざわざそう言ったこと。


 老執事が、男がわざわざ、貴方ではなく、貴方方、と言ったことに気付き、その意図を理解できるだけの器量があったこと。


 それが、僅かな期間での準備、つまり、緊急時の連携を可能にしたのだ。


 男に向かってあらゆる方向から、もはやオーハーツといっていいほどの貴重品となっていた拳銃による発砲がなされたが、執事たちはそれを簡単に防いだ。


 男が用意した道具によって。銃弾は男を中心に5メートルの地点へ迫った瞬間に消え去った。そして、その隙に不届き者たちを取り押さえた。


 男が用意した道具。それは、()()()モンスターフィッシュ、スケルトンプリズムタートル(仮称)の甲羅を利用して作った、一時的に絶対防御の不可視の壁を作り出す装置である。


 そのタイミングは大変シビアで、ゼロコンマゼロ数秒単位の精密操作が必要な装置である。


 そして、男は今回、全方位防御を行った。男を囲うようにして守るためには、この装置を10基用意する必要があった。


 そして、今回のような同時攻撃かつ波状攻撃を防ぐには、これらを同時に展開しなくてはならない。連続攻撃がどれくらいで終わるかも分からないため、無駄に壁を張ることも許されなかった。


 だが、二家の家令たちはそれを成功させたのだ。


 男は自身の家の家令の長と、島野家の老執事に視線でお礼の意思を示すに留め、続きを話し始めた。


 他のやんごとなき人々は騒ぐこともなく、続きを早くしてくれと、急かすような雰囲気を出している。貴族であれば誰でも知っているということではないのだ。


 男は銃撃が始まりそうになったとき、さっとウェイブスピーカーを泉から出していたため、その音が東京フロート全域に伝わることはなかったため、人々の聞きたいという意欲は薄れてはいない。


 それどころか、一時的にウェイブスピーカーによる演説が途切れたことで、人々のボルテージはぐんぐん上がっていたのだ。


 遠くのフロートから、大きく重なり合う人々の様々な声が強く強く伝わってきているのだから。


 男はその期待に応えるように、日記の最初のページを開き、順を追って話し始めた。かつて葬られた真実の記録を。


「2017年3月21日。どうやらこの日が全ての始まりらしい。」

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