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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第一部 最終章 東京フロート
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第七十話 一家所有フロート

「ありがとうな、門番さん。じゃあぼちぼち行くわ。」


「お使いがんばりなよ。」


「門番さんもな!」


 少年は日が昇る頃に門番の家を出た。そして、リールへの接触のために必要な情報を集めるために走り出した。天気は雲一つない晴れだった。


 リールの家はおそらく、巨大だ。一帯で最も大きいだろう。とはいっても、ここ東京フロートは広い。闇雲に探すわけにはいかない。


 門番に釘を刺され、リールの家の場所については聞けなかったのだ。今考えてみれば、これはこの土地に住むものなら誰でも知っている情報であるため、聞いても問題はなかっただろう。


 少年は頭を抱えながらも、情報収集へと向かう。


 少年は船着場から小型艇に乗り込み、住宅が密集しているフロートを目指した。そこで観光客の振りをして聞き込みをし、リールの家を特定しようとしたのだ。


 21世紀初頭の一般的な服装と町並みがその住宅地には広がっていた。待ち行く人々の足はせわしなく見えた。そのため、少年は、比較的年配の女性に聞き込みのターゲットを絞った。


(おばちゃんは話好き。聞けばどんどん話してくれるはずや。なにより、捕まえやすそうなんがええ。)


 少年は近くでゴミ出しをしていた一人のおばちゃんに声をかけた。






 聞き込みの結果、リールの家がどこにあるかはあっさり、拍子抜けするほどあっさり分かった。だが、それは少年にとって都合の悪い事実だった。


 リールの家は、一つのフロートを占有している。一つの区を丸ごと。これは少年にとって非常に都合が悪かった。各フロートへの進入には、フロート同士をつなぐ橋か、フロート毎に最低一つは存在する船着場しか経路は無い。


 島全体が一族所有で、なおかつ今は物騒らしい。となれば、ガードは固くなる。進入経路がない等しい。通してもらうにしても、身分の提示が必須となる。フロートの入り口となる部分には例外なく、門番がいるということを少年は昨日聞いて知っていた。


 一見、一族の関係者でもなく、モンスターフィッシャーの証も使えそうにない今の状況ではもはや手詰まりだ。


 武力行使して突破したとしても、その広大なフロート内のどこに居るかも分からないリールを見つけ出せる確率は極めて低い。


 では、賄賂でも渡して通してもらうか。だが、少年は今回、必要最低限の現金しか持ち出していない。


 だが、うじうじしてはいられなかった少年は、一縷の望みをかけ、東京フロートの釣人協会日本本部へと向かった。






 門番からあらかじめ場所を聞いておいたため、スムーズに移動できた。港区フロート。その東部に釣人協会日本本部は存在していた。


 太陽がほぼ少年の真上にきており、今が昼だということを示していた。海上から協会を見つめる少年はその大きさに息を呑んだ。


(船長からあらかじめ話聞いてたけど、こりゃ、でっかいなあ。俺がいるこの海上からだいぶ距離あんのに、視界に全部が収まらへんねんけど……。)


 さすがに、少年が阿蘇山島で見た支部と比べ、格段に大きい。何せ、このフロートの右半分を占拠しているのだから。


 巨大な敷地内には、各種研究設備、協会の本部の役割をする石造りの建物、宿泊施設、モンスターフィッシュ用の巨大水槽や生簀などがあるそうである。


 入り口は、東側にある船着場のみである。なぜか、フロート西部からは進入できないようになっているらしい。


 船長によると、この本部を建てた日本本部長の意向らしい。釣人なら、入るときも海を通るべしということらしい。まだその者はまだ減益でここの長をやっているそうである。


 船長は、その長のことを、おもしろい奴と言っていたが、もう嫌な予感しかしなかった。長は間違いなく、曲者。


 船着場とはいっても、その規模は少年があの門番と会った船着場とは規模が違う。それは、船着場というよりは、港だった。


 釣人協会はモンスターフィッシュを扱う。また、そのために多くの船が出入りする。だから、そこが実質港となるのは何もおかしくはない。


 気を取り直して前を向き、小型艇を港へと停泊させ、上陸する。するとすぐにこのフロート担当の門番がやってきた。この港には何人も門番が居るようで、ところどころで上陸してくるモンスターフィッシャーたちの身分照会をしているようだった。


 少年は自身の身分を示す証とともに、船長に頼まれたお使いである、封書を提示し、口を開いた。


「今すぐここの長に会わせてもらえる?」

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