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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第一部 第四章 船長の覚悟と新たなる目標
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第五十九話 かき集めろ、ウイングエラガントユニコーンフィッシュ! 釣人協会編 前編

 少年の脳裏に浮かんだ場所は三箇所。一つ目は、自身の釣り上げたウイングエラガントユニコーンフィッシュを預けた釣人協会。二つ目は、生簀にウイングエラガントユニコーンフィッシュがいた学校。三つ目は、さまざまなモンスターフィッシュ含む釣りの情報が集まる、自身が一時的に働かせてもらっている釣具店。


 まずは、確実にウイングエラガントユニコーンフィッシュを手に入れられる釣人協会へ少年は向かった。そこまで全速力で駆けて来た少年は息が上がっていた。


「はぁ、はぁ、すみません、はぁ、この、はぁ、前、預け、っ、た、ウイング、っはぁ、はぁ……。」


 そのまま用件を言おうとしたが、息が上がっているため言葉にならなかった。息と同様に絶え絶えの言葉。これにはその日の受付の女性も慌てる。その受付は、少年がこの前会った受付とは違う女性だった。まだ若い女性だった。


「そんなに、そんなに慌てなくても大丈夫ですから、ね。息を整えてくださいね。」


 そう宥められた少年はロビーの中央にある椅子へと移動していき、少し休むことにした。そして、息を整え、溢れてきた生唾を飲み込んで、再び用件を述べる。


「すみません、この前預けたウイングエラガントユニコーンフィッシュ。ちょっと必要になったんで返して欲しいんですが、大丈夫でしょうか。」


 受付の女性は、少年がここのところ協会で話題になっている釣一本であると分かっていた。そのため、幸い、時間の掛かる事務処理、個人確認の類の一切は省略された。

 そして、用件を話し終えた数分後、受付は少年に告げた。少年の釣り上げたウイングエラガントユニコーンフィッシュは、蜘蛛糸水槽ごと元気な状態で返却されることになったと。少年はそれを見て胸を撫で下ろした。どうやら、実験に使われてもう生きていないかもという疑念は杞憂に終わったようだと。


「少し時間が掛かるのでちょっと待っててくださいね。係の者が持ってくるはずですので。あ、そういえば、何に使うんですか、ウイングエラガントユニコーンフィッシュ? やっぱり観賞用ですか? それとも、角をへし折って飾るんですか?」


 モンスターフィッシャーレベルの知識であっても、ウイングエラガントユニコーンフィッシュの使い道はその程度しか知られていなかった。

 そこに、少年はウイングエラガントユニコーンフィッシュの用途を彼女に伝えてしまった。すると、

「え……。嘘でしょう……。あれ、そんなことに使えるんですか……。ちょっと! ちょっと待ってくださいね! 支部長呼んで来ますので。ウイングエラガントフィッシュのそんな活用法、聞いたことありませんよ! それが本当なら、何としても見せてもらわないと。」

彼女は騒ぎ出した。そして慌てて二階の支部長室へと駆け上がっていった。


 受付は少年に熱く迫る。少年は受付の慌てように少し動揺した。この前少年に応対した受付とは違って、非常に熱を持った若い女性であった。それに圧された少年はその場で支部長を待つこととなった。時間がないのだが、圧し負けて。


『あれ? そんな凄いことなんかなあ、』


 少年は眉を細めて、階段を駆け登っていく彼女を見つめた。ドクター由来のとんでもない知識なのだ、それは。迂闊に外で口に出してはいいものではないのだ、本来は。そのことに少年は当分気づくことはない。


 わずか数分足らずで支部長は姿を現した。その目からは、少年への期待が溢れていた。


「おお、久しぶりじゃな。聞いたぞ。ウイングエラガントユニコーンフィッシュの新用途があるとな。それも実証済みの。そんなの聞いたら出て来ないわけにはいかないのぉ! で、どうやるんじゃ?」


 支部長が直々に顔を出して、それも、相手はこの前ここを騒がせた釣一本であるということで野次馬がどんどんと集まってきていた。二人は特に野次馬に気を取られることもなく遣り取りを続ける。


「それなんやけど、支部長さん。その方法知ってるんは俺やなくて、Dr.Lime Soda なんです。通信機越しに連絡取り合ってるんで。……あ、通信機置いてきた! 取ってくるから少し待っててくださいや。」


 少年は先ほどそこへ来たときのごとく、一目散に走り出した。猛烈な勢いでその姿はどんどん小さくなっていくのだった。






「はぁ、はぁ……。」


 全身汗だくの少年。釣人協会へUターンしてきた後、そのまま仰向けになって大の字に体を横たえていた。その右手には、正方形の、少年の掌程度の大きさの真っ黒な機械が納まっていた。


 少年が息を整えたところで早速遣り取りが始まる。少年がその黒い四角を握ってみせる。すると、突然光の像が現れた。それは人の形をしており、突然のことに周囲に集まってきていた数層の円となっていた野次馬たちと、円の中央にいる当事者である支部長は大いに仰天させられた。

 ただその小さな黒い四角い掌サイズのものから突然像がでてきただけでも仰天物であるのだが、加えてその像が喋り始めたからだ。それも一方的に音を、声を出しているのではなく、明らかに意思相通、双方向コミュニケーションをとっているからだ。まるで意思があり、自律しているように。あまりに野次馬が増えすぎたため、支部長室で二人+一人? で話をする運びとなった。

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