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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第四部 第一章 囚われの御姫様

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第二百八十七話 反響定位

 何てことはない。それは、特別な準備も、何の道具も必要もない、簡素な方法。気づけば、思いつけば、それで凡そ問題が解決してしまうような、冴えた解決方法。


 ()()()()()()()()()()()()


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。


 ()()()()()()()()()()()()()()


 なら、そこから組み合わされて出てくる答えは――


「ここを、真っすぐやな。先へ続いとうと思う。出口っぽいのはそこしかない」


 少年は、確信でも持っているかのようにそう言って、ただ、前方を指差す。


「?」


 少年の突然の単音の叫びに加え、今しがたの大音量の叫びによって、耳がきぃぃんんと鳴り続いている儘でありながら、割と何とか少年の言葉を聞き取った豪快な男であったが、その意味を理解でできずにいたからこそ、首を傾げていた。


 じりっ、と一歩踏み出す音を鳴らしながら、踏みとどまったことからして、何だからの不満があることは明らかだった。


 意図を理解できていない。信じきれていない。


 無理もない。この場所の特性をある程度は知っているが故に。


 そして、考えても、まるで分からないから。こちらの認識を歪ませてくる空間にいる中、出口も順路も糞も無い。


「音ってさ、壁に当たったら跳ね返ってくるやん」


「まぁ……、そうだな」


「それ上手いこと使ったらな、距離とか周りの形とか、結構分かるんよ。目で追えへんようなモンスターフィッシュ相手にするときとかに便利なんよ」


「そうか」


 まだ、腑に落ちないらしい。


(実感沸かへんのかなぁ?)


「……。ん……?」


 と少年が思っていたら、何やら……?


「そういうことか! 最初叫んだときに気づいて、さっきので今度は意識して聞き取って、一帯の地形を把握したってことだな! いや、待てよ。けどそれなら、……ん……。解決策になって無ぇぞ! 片手落ちだ。周りの地形が形を変えないなんて保証がどこにある! それに、その返ってきた音は信じ切っていいもんなのか!」


 が、惜しいところで止まってしまった。


 少年は片手を額に添えて、溜息をついた。


(ここにおるんがお姉ちゃんやったなら、こんな面倒は無いんやけどなぁ……)


 それは仕方のないことだ。リールとは違って、その豪快な男はモンスターフィッシャーでは無い上、音の反響による空間認識、所謂いわゆる、エコーロケーションなどと言う技能も知見も経験則もありはしないのだから。


 無いのに、せまれた。それに、モンスターフィッシュを利用した、何でもありについては問題なく、理解し納得してみせたのだから人として愚かでも劣っている訳でもない。


「俺らの動きよりも、音ってずっと早いねんで。ほんで、()()()()()()()()()()()()()


「う~ん……」


 腕組して、うなるように考え始める豪快な男。


「あのクラゲが見せる幻覚って、海の中でやるもんやんか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。周りの地形は変わってへんよ。変える必要が無いんよ。だってそうやろう? じゃあ、俺らに幻覚見せてるん何のため?」


「っ!」


 成程、といった風な反応。少年はそのまま畳みかけに掛かる。


「ダメ押しや。あそこ」


 と、少年は自身の背後方向。遠くを指差す。天上を指差している訳ではなく、それは、遠くの砂の地面を指しているように見える。


「あそこにさ、俺らが降りてきたカプセルが落ちとる」


 そして、釣り竿をその地点へ向けて振るい、着弾。何か、こつんと当たる音が聞こえてきたが、目には飛沫した砂と、竿についた疑似餌くらいしか映らない。


 そして、少年は竿を軽々しく引いた。さっきやったように。そして、強い風圧が、迫ってくる。少年は竿から手を放し、不可視のそれを、ずっしりと、両手両足で、綺麗にずっしりと受け止めて、それを、寝かせて砂の上に置いた。


 ざすっと砂の動いた音はするのに、砂に凹みも何も見られない。


 少年は、早く、と目で合図する。


 伝わったようで、豪快な男は、さっと手をのばした。


 触れたそれ。ぐるりと手早く不可視のそれを掌でなぞり、その形を識別した。


「間違いね…―っ!」


 手取り足取りな説明ではない。ハリボテにハリボテを重ねていくような、断片的な説明であった。そんな不親切な説明ではあったが、豪快な男は、少年の説明に一先ずの納得を得た。一切合切、仔細に及ぶまで全て聞かずとも、その判断に間違いないかの判断を下せない程、愚鈍では無いし、ここで全てを聞いて問い質すなんてことは過剰であり、互いに無駄に疲れるだけだと解していたから。その辺の街の通行人や、その辺の村人とは明らかに違って、優秀ではあるのだ、この男。


 そしてというべきか、しかしと言うべきか。いや、だからこそ、()()()()()()()()()()()()()


 少年は知らない、立場と経験から来るそれ。豪快な男が言い掛けながらも、途切れ、止まったのは、それを伝え、理解して貰うことの難しさを知っているから。


(子供に言って、そうやすやすと解って貰えることじゃぁ、無ぇよなぁ……。こいつはすげえ奴ではあるが、子供なんだ。悪い意味で子供なんだ。きっと、これまで()()()()()()()()()()()()。だが、聞く耳持ってくれるつもりがこいつにあるなら、毛ほどでも解ってはもらえる……かもしれねぇ)

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