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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第?部 最終章 それはXXXの時間の檻
441/493

---158/XXX--- 先が為の依頼

「まっ、今回の調査は、下調べってとこだ。宝物庫の下、裏庭まで、だけどな。お前らが上がってきたルートとは多分違う。上との時間の流れの差も、せいぜい、二割り増しくらいの遅さで済むことは記録と、俺らが行えている調査の範囲からも分かっている」


 長い螺旋階段を二人は下っている。豪快な男に先導されて。


 認識をずらされて、隠されていた螺旋階段。それはあの物置部屋の地面に最初からあった。


「しかし、それだけなんだ。どれだけ人を投入しても意味は無ぇんだ。俺らにはこれ以上の調査はできねぇ。とびらが開けねぇんだ。おそらく、正規の資格持たない俺じゃあ、無理だ。俺は鍵もなしにあの、扉を開けることは今もできねぇ。もし座引か、あの紫ちゃんがここにいたなら何とかできたかもしれねぇが」


「扉?」


「必ず形が扉とは限らねぇよ。が、役割は変わらねぇ。資格を持つ者以外がその道を開くことを許さない。壊すこともできねぇし。お前たちも何か、そういうものを得て、通ってきたんだろう?」


「まぁ……そうやけど」

「……」


 少年は暗く答え、隣のリールは俯く。強く組み付くように握った少年の腕を一際ぎゅぅぅと抱いて。


「伝手は、無かったん? あんたは、座曳さんやったら開けれたかもって思っとる訳やろ? 頼めばよかったやん? それに、調査なら、そういうのに向いてそうな奴らを雇えばよかったんちゃう? 研究者でも。何処かの一族の一員にでもがむしゃらに訊いてみたら、開けれる奴の一人や二人、おったんちゃうん?」


 と少年は疑問を口にしてみる。


 が、答えたのは豪快な男ではなく、


「ダメよそれじゃあ」


 リールだった。


「どゆこと?」


「信頼できない、から。こんな技術、存在すら漏れちゃ、不味いわよ。知ったら、力あるものだったら誰だってそれの価値に気づく。そんなものを見せるってことは、奪いに来てくださいといっているようなものよ。それに、この人は代理というなら、経験と引き継いだものの差からきっと、守りきれない。一族総出で、あらゆる手段を使って、奪いに来るわよ」


「あぁ、たしかに」


「お嬢さんの言った通りさ。話を持って行くだけでも、人を選ばないといけねぇ。座曳がお前らの名前を挙げていたのはそういうことなのかと思っていた。少し違うのかも、とこうやって会って見て想いはしたが、それでもやっとつかんだわらだ。駄目元でも、この事態を打開できる可能性があるなら、試したい。それも、身内を危険に晒さずに、試せるんだ。試さない道理はない。が、無理強いはしない。お前らを乗せようとはしたが、それでも代価は払うつもりだった。今もそれは変わりない。先ほど提案したのは、たとえお前らが、今になって断っても渡すつもりだ」


「?」


 少年は気づけない。

 

「座曳から、貴方は何を託されたの……?」


 リールは察していた。きっとそれは、聞いたとたんに、こちらの気持ちを突き動かすであろう何か。相手は抱えているのだ、と。


 男は、ニヤリと笑い、足を止めて、二人の方を向いた。


「手段、さ。俺が掴んでる釣り人旅団の船員たちのおおよその所在地。そのうちのどれかへ向かう為の、座曳が遺していった、旅費と足。必要なら案内もつけよう。どうだ?」


 そして、その通りだった。


「改めて、引き受けさせて貰うわ。下見はやっぱりいいわ。体感したし、はっきり覚えているし」

「え……?」

「だって、もっと詳細な記録、貴方持ってるでしょ?」


 そう、リールは、少年の疑問に答えを用意する。これは、相手にとって最初から交渉であったといこと。そんな前提を、リールはあの沈んだ様子であっても、はっきりと掴んでいたから。後は、踏み込む覚悟だけが決まっておらず、いよいよとなったところで、足は結局前に出た。ただそれだけのこと。


「おぉ、怖い怖い。あんた、こういうの慣れてるってことか。怖いねぇ。では早速、部屋を用意しよう。頼もし過ぎて、怖いくらいだぜ」

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