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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第二部 第三章 ロード・メイカー
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第二百二十二話 メッセージ・スピリット・インサイド ~埋まり穴空く謎掛け~

『終わ……、り?』


 そう、視界が傾く。


 それは当然の疑問だ。あの過去の都市から、あの袋と危険な漁の島。その明白な繋がりが示されていないままなのだから。


 推測はできる。しかし、絞り消えない。当然だ。あれでは、実質何でもあり、と言われたようなものだ。さながら脳内当てのようなもので、だからこそ、思いついた答えはどれも大概、もっともらしく見えてしまう。


『終わりだとも。現実とは、そういうものだ。時に空想の斜め上をゆくこともある。憶えておくといい。外はこういう、不可思議に溢れている。それは何処でも起こり得るが、全く起こらないことも多分にある』


 声の主の言うことは最もである。そう、これが、母上への教育、という形を取っていないならば。


『続……き……』


 母上は敢えて、ここでねだらないようだ。ぼそりと独り言でも口にするかのように、俯きながら、そう言った。貰った権利を未だ使わずに抱えたのだ。


 しかし……下手だ……。ここは呟くべきではなかった。無言を貫く。これより後に言われたことを聞かない、何か尋ねられても答えない。それらを徹底するだけで、子供らしさを武器にできた。口にしたからそれが願いと受け取られる危険を回避できた。


 そして、


『……。多めに見るとしよう。ただし、次は無い、ぞ』


 甘い。


 視界が縦方向、上に下に、こく、こく。


 双方共に分かってやっていたということらしい。私は確かに、声の主が母上にこれほどまでに甘いかは、断定できなかった。先のこれより前の時間軸の一度の遣り取りだけでは、今一つ。


 納得はできる展開ではあるが。私も脳内当ての答えを知りたかった、()()()()()()()






 視界は停止し、薄暗くなる。


【では、あの光景の最後の場面から始めるとしよう】


 浮かんだ白い文字。読め、ということだろう。


 つまり、ここからは把握が面倒な話になるか、見せられない聞かせられない事項をごまかすが為の編集が入っているか。大体そんなところだと思う。


 じっくりとこの脳内当ての答えを検証したいところではあるし、聞かされて困り果てるような事柄で、それが結に関わらないことであるならば、聞かずに済んで欲しいと思っているのだから、どちらに転んでも構いはしない。


【幸か不幸か、あの都市は、全体の構造もそこに在る人も、あの出来事が起こる寸前までの凡そ20%程度であるが、残った。あの巨大な不定形による侵攻。それが無ければ、押し寄せてきた巨大津波で全滅していただろう】


【空中へと弾き上げられ、長い長い滞空時間によって、波に呑まれることを免れたあの都市は、とある海域の、V字状に、海から顔を出した場所に】


【表面に残っていたあの不定形の内容物が緩衝材となり、本来砕ける筈のその岩場も、都市の断片と残された人々も、その場で散るという結果には終わらなかった。それどころか、その岩場と都市は、癒合するようにくっ付いた。接着された、とでも言うべきかも知れない】


【くっきりと綺麗に嵌まるように。まるで、最初からそうであったかのように、あの過去から、あの未来の街の骨子は出来上がった】


【後は、簡単だ。人は環境によってその生き方を変える生き物だ。それができなければ死ぬだけ。そして、残された彼らは、それができる者たちだった】


【大津波が世界中を駆け巡ったのは、以前君に教えた通りだ。そしてそれは、常人の持つ共通の認識として、歴史的事実として、認められている】


【あの都市の者たちだけでは駄目だった。あの場所は、交易に依存した都市だった。つまり、ありとあらゆるものを、それによって賄っていたということだ。金銭を挟まず、自ら直接糧を手にする力も手法も、持ち併せてなどいない】


【そんな反応をせずとも、考えれば己ずと答えは見えてくるのではないか?】


 そこで、文字が、止まる。


 考えてみろ、ということだろうか? 考えているとも。さっきからずっと。どうやら、一度世界が壊滅状態に陥った原因は、偶然もしくは、自業自得に、引き金を引いたことからの、自然現象的な無差別なものでは決して無かったのだ、と。


 明らかに恣意があると感じずにはいられない。


 そもそも至極当然のことだが、偶然というのは続くものではない。不自然に綺麗に、あまりにもできすぎた、偏った、結果が後に残ったのならば、それは、人の都合、人の悪意。それも、特定の個人、から、小集団。せいぜいその範囲に収まる、一握りの者たちの思惑と都合だ。たとえ、線を引いたのが一人であったとしても、それに関わるのは、あやかるのは、更に数人いる。


 だから、凡そ、声の主の言うことは正しいだろう。仄めかされている通りだ。かの大津波という、見かけ上の滅びの理由の裏には、数多の作為が、埋もれているのだろう。


 再び、文字が、動き出した。

 

【纏まらぬのか、そもそも知識が足りぬのか頭が足りぬのか。まぁ、いい。それは後だ】


 てっきり、このときの母上の解答でも挟まれるのかと思ったが、そんなことはなかった。


 どうやら母上の返答などは省かれているらしい。それ以外は全て、母上に先ほどの景色を見せた者の口にしたそのまま、なのだろうか?


 決めるには、未だ早い。それに未だ未だ、話の終着点が見えない。脳内当ての答えだけで終わるような話にも思えない。


 思っていたよりも長い話になりそうだ。

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