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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第一部 第三章 本拠地阿蘇山島
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第二十四話 本拠地(ホーム)

 トンネルをくぐったその先は、巨大な食堂だった。縦長の机が複数。それが数列並び、椅子がぎっしりと並んでいる。けっこうな数の椅子が埋まり、そこで食事をしている船員たち。


 ぱっと見、船員ではない、部外者もかなり紛れている。いろいろ自由なところなのだろう。この団の所有物なのだから。


「びっくりしたでしょ。入ってすぐの部屋が食堂なのよね。本拠地(ホーム)にいる間は、みんなここで好きなだけご飯が食べられるわ。今は夜だから夕ご飯ね。朝・昼・夜のいつでも開放しているわ。私たちがここにいる間はね。」


 少年に真っ先にここを案内したのは当然だった。ここさえ知っていれば行き倒れることはないからだ。


 基本的に、団は、島にいる間は召集かからない限り自由行動である。寝床の準備からご飯の確保まで全て自力で行わなくてはならない。


 リールが少年について、団としての基本事項と、生きていく上での世間の常識を教え込むことになった。船長が丸投げしたからだ。


「じゃあ、せっかくやし何か食べたいんやけど、どうすればいいの?」


「右を見て。」


 食べ物の山。様々な、肉、魚、野菜、その他、よくわからないもの、が並んでいる。


「セルフサービスだから、好きに取って、好きに食べたらいいのよ。でも、お残しはダメよ。」


 少年は、よくわからないものの皿からいろいろ取ってみた。肉、魚、野菜はスルー。リールは魚と野菜。少年の皿を見て苦笑する。


「ポンちゃん、どうなっても知らないわよ、私は……。」






 テーブルについた二人は皿の上の食べ物を味わいながら、今後のことを決める。


「ご飯食べ終わったら、次は宿ね。今日はとりあえずここに泊まるけど、明日は、町のどこかで宿取ってもらうわよ、ポンちゃんに。」


「わかったで。それって、船長が言ってた、団としての基本事項ってやつ? あれ、このもじゃもじゃな糸みたいなのいけるわ!」


「そうよ、でも、一般常識でもあるわね。旅する者なら絶対に知っておかないといけないことだから。」


「ポンちゃん、お金については分かってるわよね。」


「……俺田舎者やけどさ、さすがに大丈夫やで、お姉ちゃん……。うへぇ、まじい、真っ白な謎キノコくっそまじい……、腐った雑巾の味がするわ、これ……。触感も、べとべとってするし……。」


 常識なんて全くないようにリールにみられていると知って少年はこれまでの元気を失った。ちょっと後ろ向きに。


「でも、大概のことはわかってないやろうから、悪いけどお願いするで、お姉ちゃん……。風船みたいな一口サイズの玉。これは、まあまあかな。」


「大丈夫よ。ポンちゃん賢いからすぐに常識なんて身につけられるわ。ね、だから、元気出して、ね。」


 頭を撫でるリール。撫でられる少年。


「わかったわ。明日からがんばるから、よろしくな、リールお姉ちゃん。」


「お、もう大丈夫そうねえ。じゃあ、明日に備えてそろそろ寝ましょうか。お、この黄土色のジュースなんかいける! でも何の液なんやろこれ?」


 少年を撫でてすっかりご機嫌なリールさん。食事を完食した二人は、左側の、フロントへと向かう。ここで記帳に名前を記入することで、宿泊することができる。


「私が書くから見ておいてね。」


日付  宿泊者       部屋   ベット数

xx/yy 島野リール 釣一本 二人部屋   1


「え?……」


『一緒の部屋、一緒のベット。何かの間違えですよね、きっと……。』


 少年、戸惑う。


「どうしたのポンくん?」


 ご機嫌なリール。ちょっと顔が火照っている。


「さあ、行きましょ!」


 少年は言葉を発する間もなく、リールとともに一緒のベットで寝ることになるのだった。






 部屋に着く。ベットは……ひとつだけ。幸い?か、でかいベット。少年からすると、リールと一緒に寝るのは嫌ではないが恥ずかしい。この前恥ずかしい寝言を聞かれている。


 さて、どうこの難局を乗り切ろうかと少年は必死に考える。これ以上、恥は重ねられない!


「ポンちゃん、まずは、お風呂ね。いっしょに入りましょうね。」


「え……。」


『まずい。リールさんきれいやし、ずっと顔近くにあったら落ち着かんわ! 風呂は一人で入りたいんや、俺は!』


「ちょ、ちょっとリールお姉ちゃん、風呂は一人で入るわ。俺ガキちゃうし。風呂は一人で落ち着いて入るもんやろ、な。」


 笑顔で、冷たい汗をかきながら少年は必死に説得、どうなる?


「まあ、まあ、そうよね。お風呂いっしょには、だめよね、さすがに、だめよね、あはは……。」


 なんとかなった。


「でも、寝るのは一緒に、ね。ベット一つしなないんだから。」


 とりあえずたったと風呂に入る少年。いつもよりすぐのぼせて、すぐに上がった。着替えは、ベットの上に置いてあった。2セットあるが、自分の分を間違えることは当然ない。


「ポンくんの分の着替え、前の町で私が買っておいたのよ。どうかしら、サイズ合ってる?」


 リールは頬を赤く染めてまじまじと少年を見る。少年としては、視線がいつもより少しベトベトする気がしたので、さっさと着替えてしまうことにした。


「ポンちゃん、すぐ寝たらだめよ。もう少し話しておくことがあるからね、ね。」


 すごく機嫌がよさそうだが、何か怖い。そう思った少年はリールに素直に従うことにした。


 しばらくして、風呂から上がってきたリール。傷一つない、綺麗に日焼けした肌。日焼けと服で焼けていない部分とのコントラストがすごい。腕と足には、釣り人らしい筋肉がしっかりとついている。腹筋も割れているようだった。


「リールお姉ちゃん、すっげええええええ! 足や腹筋まで、釣りに向けてしっかり作りこんでるな! 触ってええか?」


 しっぽを振る少年。目を輝かせている。相変わらず釣りしか頭にないらしい。釣り>女体。少年は、そんな男だった。


「ポ、ポ、ポンちゃん、ちょっと恥ずかしいから、お触りはちょ、ちょっと待ってね、私が服着て、着てからから、ねっ、ねっ!」


 顔を真っ赤にするリール。ちょっとうれしそうだ。そして恥ずかしそうだ。リールは走ってベットの上のネグリジェをさっと取り、即座に着替えるのだった。


 その晩、少年はリールさんの二の腕と太腿と腹筋を満足するまで触らせてもらい、満足したところで疲れに負けてぐっすり眠った。その晩なぜかリールは一睡もできなかったらしい。

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