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モンスターフィッシュ  作者: 鯣 肴
第?部 第二章 禁忌跋扈す絶園の廃墟
217/493

---045/XXX--- 関門はエレベーター 前編

 スタタタタタ――

 スタタタタタ――


 リール。それに、少年とその背のシュトーレン。少年の手が、リールの肩に届く距離。それだけの距離を空け、保ちつつ、走り続ける。通路を抜け、もうすぐ、最大の関門へと差し掛かる。


 それは、エレベーター。


 手術室は数層下。それを通って移動するしか無い訳であり、そしてそこは、出入り口と中での待ち伏せ、乗る層と降りる層での出入り口での包囲、乗っているエレベーターごと落とす奇襲、等々、いくらでも相手に攻め手がある状態。


 そして、その上、この施設の機械。その多くをあのおじいさんが再び掌握しつつある訳で。シュトーレンはこうなる可能性も考慮していたようで、仕込みを行っていたと言うが、それがどこからどこまでかなんて分かりはしない。それはたとえ、時間を取ってシュトーレンに説明の時間を取ってもらったとしても変わりはしないのだ。


 トンッ。


 少年はシュトーレンに首筋中央を後ろから指で押された。


 それは、前を見ろ、という合図。すぐさまリールにその合図をする。通路前方には特に何も見え――


 カランコロン、

 

 突如、1メートル程度先の通路の天井、パイプや配線ぎっしりの太い細いまばらな線の集まりから落ちてきたボルト。


 ガシャァァンンン、ボッ、カバコンッ! トストストスン、ブンッ、


「ギィシュシャァアアアアアア!」


 太刀魚魚人が、その頭を刀の振り下しの如く、振るいながら、自身から見てリールの左横を抜けてその先にいる少年とシュトーレンに向かって切り込もうとしていたが、


 ボコォォンンンン! ブチュバキビキビキ、ボォゥオオオオオオンンン、ブチャッ!


 半ば置くように音もなくいつの間にか構えらえていたリールの右足が、タイミングを合わせてその腹を背を蹴り抜き、腹部中央辺りから背に掛けて潰し砕くような蹴りでぶっ飛ばされた魚人は、そのまま壁に激突し、頭を潰され、


 ボトン、ブチャリ。


 床に崩れ落ちた。


 シュトーレンがしているのは手で触れることによるサイン。声を出すことすら本来、消耗が激しい状態であるのだから。


 言い出したのはリールで、合図の仕方と少年―リール間の連絡方法を考えたのは少年。あっという間に決めたところで、最後、シュトーレンが無理して、少年たちに手早くこれから先の動きを説明して、走り出して、そこが、シュトーレンが関門と言った、最初の地点。


 エレベーター。






「最初の関門はエレベーターになるだろう。ゲホゲホッ」


「あそこは、奴らにこちらがやられ放題にならざるを得ない。一応保険は打っておいた。機械の制御関係においてな。今奴らからの正確な追撃が無いのも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ」


「武器であるレーザーもある程度は制御不能にしてある。だから奴は、あの人に至らぬ魚人共を使って私たちを追い詰めようとしている訳だが、ゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゴホッ」


「……。そんな目で見るな。君らは何も悪くない。全て私の責任だ。私の背負うべき責だ。失った筈の命を先祖の気まぐれと我が奇運で繋いだのだ。ならば、やるべきことはやらせてくれ。さもなくば、私が唯の重荷だ。枷だ。そんなものが現実では、私は耐えられない」


「ゲホゲホゲホッ、ゲホゲホゴホッ。……。気にするな。これらの血反吐は致命的ではない。続きを話そう」


「我が祖先のあの、半端な立場、姿勢。こうして私たちが生き永らえているのは、私の肉体を手中に納めていなかったからだ。私の体にその精神入れていたときさえ、だ。私をこの体に戻したのは、仕方無くであるのは間違い無い」


「だが、祖先にとって、この場で調達しなければならなかったのは、私の体だけではない。それが何かは私には分からない。君たちは何か心辺りはあるか?」


「……。成程。リールか。一理ある。ポン君、君は分かっておらんようだな。祖先の目的は、肉体の確保。そして、私の体では、祖先の望む水準には程遠く、せいぜい辛うじて妥協できる時点だとすれば? そして、私の体とリールの体の配合。定められた結婚。それが、計画的であり、金銭権力といった利ではなく潜在能力才能配合の理に沿ったものならば?」


「そんな顔をするな……。私もリールも互いに結婚相手として互いを選んでも一切の後悔が無い位には互いに好きあっていたとは自負しているよ。だが、君がいた。よりふさわしい、君がいた。私たち三人の感情的にも、理的にも、利的にも、君とリールの組み合わせは理想的だ。そうと判明したからこそ、リールの家は私の家との縁を切り、君を取った」


「おっと、これは裏側の話だったな。だが、君は未だ子供だ。全て裏側で進んでいるだなんて、納得いかないだろう? 君は正当に、リールといていいのだよ。私は認めている。透明なあの箱の中で、君を一殴りして、気持ちの整理はついた。そういうことだ、だから、リールも、今回のことで負い目を感じる必要などないのだよ」


「さて、これで溜まっていた血は抜けたらしい。そろそろ本題に戻るとしよう。」


「先ず、私の戦力化の為に手術室に向かう。関門はエレベータ。そこには確実に奴らが待ち構えているだろう。私を即捨てるという選択肢を取らなかった以上、治療するという選択は読まれているだろう。が、せいぜい応急処置程度までしか向こうは考えていないだろう。だからこその、手術室の訳だ。道具が揃っているのは自身の目で一度既に確認してあるどうしようもないということはまずない。辿り付けて、治療の間、君たちが耐えてくれるというなら」


「そして少しばかり私に休息が必要になる。仕込みの一つを動かし始めるためにはどうしても必要なのだ。理由は果て無いから説明はしない。納得してくれるというなら、即座に動き始めよう。手術室に入ってから、施術合わせて一時間程度確保してくれれば、何とかしてみせよう」


「二人共即答、か。ふはは、やはり、かなわんな」


 そうして、最後、少年の耳には、小さく聞こえた気がした。それは、シュトーレンの口の動きとは違う言葉。


(そうまで理想的なら、もう、心境的にも納得せざるを得ないではないか)


 少年にはその意味は分からない。だが、何だか、それは――


 その後、リールが合図決めの話をして、走り出して、エレベータの前。


 ポチッ。


「押したわよっ!」


 リールが今、スイッチを押したところ。






 エレベーターが来たら、中から出てくる魚人たちを全部始末して、天井を抜いてリールが上へ。そして、下へと向かう。少年はシュトーレンを下ろして、エレベーターの扉が開いたと同時に、外から押し寄せてくる魚人を迎撃。リールは上から来ないかと、何やらの干渉の警戒。特に、上からも魚人が来ての挟み撃ちなど。


 ガコンッ!


 ギシャァアアアア――

 グルルルルルルルル――

 ギィィギィィィイイイ――


「させないわよ!」


 リールが蹴りとナイフでそれらに何もさせず封殺。それらの死体を掴み、外に投げ飛ばしつつ、少年たちに手招きする。


 直ぐに乗り込み、リールが天井をぶち抜いて上へ。そして、


 ギィィ、ガコン! スゥゥゥ――


 下へと降りてゆく。

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