第3話 魔銃オルテアとゴブリン
俺と藍玉はミノアの街に向かってだだっ広い草原を歩きながらミノアの街について話していた。
「そもそも、ミノアってどんなとこなんだ?」
「うむ、我も行ったことはないから詳しくは知らぬが、なんでも街の中心に川が流れておりその川から捕れる川魚が有名らしいぞ。あと王都エリテアにも程近いこともあってけっこう大きな街らしい」
「へー、川魚か、食ってみたいな」
「そうだな、是非とも食いたいものだ」
「てか、藍玉はドラゴンなのに街に入れるのか?」
「恐らく大丈夫だ。魔物と契約して戦う者たちもおるからな」
「でもドラゴンと契約してるやつなんか居るのか?」
「そこまでは知らんよ。だかしかし、それしか手はあるまい」
「まぁ、良いけどね。サモン 魔弓オルテア」
「む、それはなんだ?」
俺は使用者の使いやすいように形を変える事ができるという魔弓オルテアの事を思いだし、それを呼び出した。藍玉は俺の左手に握られているそれを見ながら聞いてきた。
「これか?これはな魔弓オルテアって言って俺の武器だよ」
「剣だけでなく弓も使うのか」
「他にも、槍と魔法も使うぞ」
「多才だな……マスターは。魔法はどんなものが使えるんだ?」
「ロストマジック?っていうのが使えるらしい」
「ロストマジックだと?!マスター、それはむやみやたらと使わん方が良いぞ。その魔法は古代の魔法文明が栄えていた頃に開発されたものだ。その威力はすさまじく、発動するのに魔術師が50人程集まって全魔力を集中しなくてはならんが1度発動すれば1国の軍を1撃で全滅させるほどらしい」
「それは、穏やかじゃないな。分かった自重しよう」
「うむ、それが良いだろう」
「じゃあ、オルテアの形変えるのに取り組もうかなって言っても、どうすりゃ良いんだ?いや、まずとんな形にするか考えるか……弓は使ったこと無いから却下……俺でも使えるような使いやすいもの……とすると、やっぱり銃……か、じゃあどんな銃にするかな……よし、決めた。やっぱリボルバーだろ!どうやって形変えるんだろ」
「変えたい形を頭の中で思い描いてみればどうだ?」
「そうだな、それでいくか……変える形はスミス&ウェッソンのS&W M29……あれはグリップがこんな形で……バレルはこう……ハンマーはこんな形か……よし、できた!」
オルテアの形を変えるのに成功した俺の左手には6インチのリボルバー―――S&W M29―――が握られていた。俺はそれを右手に持ち換えグリップの感触などを確かめていた。
「マスター、その珍妙なものはなんだ?それも武器か?」
「あぁ、これは銃って言ってこの先についてる筒、バレルって言うんだが、ここから弾が発射されるんだよ。って言っても、この場合発射されるのは魔力の塊を弾丸状にしたものだろうけどな」
「ふむ、面白いな。試しにそこの岩に撃ってみてくれないか?」
「あぁ、いいぞ」
そう言い俺は近くにあった岩に向かってリボルバーになったオルテアを構えてその引き金を引いた。するとオルテアのバレルから魔力を弾丸状にしたものが打ち出された。その弾丸は岩に当たったかと思うと次の瞬間にはその岩は木っ端微塵になって跡形もなく吹き飛んだ。
「すごい威力だな」
「あぁ、そうだな。気を付けないと」
俺と藍玉が魔銃となったオルテアの威力について話しているとそれは現れた。
「ギギギィッ!」
「ギィッ、ギギィ!」
「ギギィ、ギギギギギ!」
「ギッ!ギギィ、ギギィ!」
4体の緑色の皮膚をした150㎝ほどの額に小さな角を生やした小鬼―――ゴブリン―――だった。
「ちょうどいいな、オルテアに慣れるのに生け贄になってもらうか」
「ギィッ!」
「ギギギ!」
ゴブリン達の方も俺を敵として認識したのか各々手に持っていた剣や斧を振り上げてこちらに向かってきた。
「藍玉は手出さないでくれ」
「分かった、我は見ているとしよう」
俺はオルテアを構え、一足飛びに一番左端に居たゴブリンの懐に向かって飛び込み、回し蹴りを喰らわせて吹き飛ばすと吹き飛んでいる途中のゴブリンに向かってオルテアの引き金を2回引いた。1発はゴブリンの右手に当たってその腕を消し飛ばし、もう1発は左足の付け根に当たってその足を千切れ飛ばした。
俺はそのゴブリンが動かなくなったのを確認し、左側から降り下ろされた剣を半身になって避けるとオルテアの弾を打ち込んだ。その弾はゴブリンの頭に当たるとパンッ!と破裂音を立ててその頭が破裂した。
脳漿や脳髄をバックステップで避けると今まで俺が立っていたところに斧が叩きつけられた。俺はその斧を左足で踏んで押さえつけ、右足でそのゴブリンの側頭部を蹴り抜くとその勢いのままに1回転し、オルテアの引き金を引いた。オルテアから発射された弾は湾曲して飛び、斧を押さえつけられたゴブリンの後ろから近づいていたゴブリンの胴体部分に吸い込まれるようにして当たった。そのゴブリンは胴体を撃ち抜かれて上半身と下半身に別れてその場に血を撒き散らしながら倒れた。
斧を押さえつけられたゴブリンは怒ったように叫び、やたらめったら斧を振り回してきた。
右側から俺の頭を狙って振り抜かれる斧をしゃがんで避けるとゴブリンに足払いをかけ倒し、その胸に向かってオルテアの引き金を引いた。弾はゴブリンの左胸に当たると、左腕を根本から千切りその息の根を止めた。
「ふぅ、終わったか」
「お疲れさま」
「おう、ってかこのゴブリンどうしようか」
「普通であれば素材などを剥ぎ取るのであろうが、そのためのナイフなどもないし入れておくところもないしな」
「あ、あるぞ入れておくところ」
「は?」
「いや、俺のスキル 。アイテムボックス。物を収納したりするスキル」
「アイテムボックス持ちか、便利で良いな」
「うん、まぁ、ね。取り敢えずどこをどう剥ぎ取れば良いのか分からないから全部しまっとこう」
「そうだなそれが良いだろう」
俺はゴブリンの死体に触れると収納と小さく呟くと光の粒子になって消えていった。
それをあと3回繰り返し、全ての死体を収納すると吹き飛ばされていった腕や脚も収納し、ゴブリン達の使っていた剣や斧も収納した。
全て収納し終わると、俺はオルテアを宙に放った。するとオルテアは光の粒子となって消えていった。
「よし、じゃあ、行くか」
「うむ、行くとしよう」
それから2、3時間程歩くと壁に囲まれた街が見えてきた。
「あ、あれがミノアの街か?」
「うむ、のようだな」
そうして近づいていくと門が見えてきた。その門の前には二人の門番が立っており、俺たちが近づくと槍を向けてきた。
「止まれ!」
「貴様、何奴だ!」
「俺は、旅人だよ。通っても良いか?」
「ダメに決まっているだろう!そもそも、なぜドラゴンが人間の頭に乗っかっているんだ!」
「あぁ、こいつ?こいつは藍玉って言って、俺が契約した魔物だよ。だからほら、俺の頭に乗っかっているんだよ」
「ドラゴンと主従の契約だと?!信じられるかそんな話!」
「いや、信じるもなにも目の前にいるんだからしょうがないじゃん。バカなの?」
「なっ、言うに事欠いてバッ、バカとはなんだ!バカとは!」
「いや、バカはバカでしょ」
「クッ、貴様。こちらが下手に出ていればいい気になりおって!」
「おい、やめろよ。いくら信じられなくともこうやってドラゴンがおとなしく人の頭に乗っかっているんだ、信じるしかないだろ」
「だ、だがなぁ」
「おい、お前、身分を証明できるようなものあるか?あ、あと一応そのドラゴン、藍玉だったか?については領主さまに報告はしておくからな」
「あぁ、報告することに関しては構わないが、身分を証明できるようなものってなんだ?」
「は?」