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2:計画

計画は完璧であった。



生徒会全員転校生に夢中。

それは腹黒王子と秘かに私が呼んでいる、副会長も例外ではない。

そんな彼は昼休みの半ばに必ず校舎裏の花壇スペースを散歩する。

これは協力者から得た有力な情報だ。



だから昼休み半ば、ファンクラブ隊長として彼女を花壇近くの茂みへと呼び出すのだ。

実に簡単なお仕事である。





そして現在、計画通りノコノコと呑気に現れた転校生と二人きりで対峙している。


「もう皆様に付き纏うのは止めて。皆様とても迷惑してるのよ」


違うよね、付き纏っているのは生徒会の方だって知ってるよ。


「皆様の品位を落としかねないわ」


一人の女子生徒の尻を動物みたいに情けなく追い回す彼らに品位なんて元々ない。


「貴女みたいな不細工な淫乱が皆様に近寄らないでよ」


スミマセンスミマセンスミマセン。

こんな美少女に向かってなんてことを。

不細工は私です本当スミマセン。


心の中ではヘコヘコ土下座しながらも、まだ私はこの醜悪な悪口を止める訳にはいかない。


王子な副会長がまだ来ないから。

早く来てよ馬鹿。

王子の大切な姫が敵の親玉もといファンクラブ隊長に捕まってるぞ!!



「ねぇ、分かってくれるよね?」


一言も発さず俯く転校生の唇をそっと指先で触れる。

うわぁ柔かっ!

リップすら付けてないのになんでこんなにプルプルなんだ?

吸い付きたくなる唇……


って、違う。

興奮している場合じゃなかった。



「貴女が分かってくれないって言うなら私にも考えがあるわ」


唇に添わせていた指をツツツと移動させ、彼女の顎を上げさせる。

俯いて隠れていた彼女の瞳はウルウルと潤み頬は真っ赤に染まり微かに震えていた。


恐怖からの表情だと分かっていても扇情的で思わず息を呑む。

これは男なら誰でも落ちるわ。


狼狽に気付かれぬよう唇が触れ合うほど近づき、あくどい顔で笑ってみせる。


「私ね、少し怖い人達とも知り合いなの。貴女みたいな下品な人は彼等ととっても仲良くなれると思うんだけど。ねぇ彼等に可愛がって貰いたいの?」


より一層瞳は潤むが、ここまで脅しても涙は零れそうにない。

泣き出してくれれば楽なんだけど。

だが確実に追い込んでいるらしく、彼女の吐く吐息は熱く私の顔を何度も撫でる。


「あなたは……」


転校生の震える唇がゆっくりと動き出した時であった。



「イチカっっ!!」


慌てた様子で駆けて来る副会長にこっそり安堵の息を漏らす。


遅いよまったく!

危うく危険な道にクラッと走ってしまうところだったよ。


「会長のファンクラブ隊長の嘉川はるですね。イチカに一体何をしていたのですか?」


私から転校生を引き剥がし腕にしっかりと抱き締めると、こちらを鋭い眼差しで睨む。


「ふ、副会長様。私は別に何も……」


口ごもる私を馬鹿にしたように鼻で笑う副会長。


「現行犯で言い逃れなど出来るはずないでしょう」

「あの、私なら別に大丈夫、だよ?」

「まったくイチカは優し過ぎます。こんな輩を庇うことはありません」


転校生にデレッと鼻の下を暫く伸ばしていたかと思うと、私の方へと向き直り凍てつく視線を下さる。


「一緒に生徒会室へと来て貰いましょうか」






ハイ。

というわけで、やって参りました生徒会室。

しかも生徒会メンバー勢揃いで私のことを睨み付けている。

針の筵でかなり辛いがこれからの成り行きを思うと心は軽い。



「ファンクラブは生徒会の認可の元に成り立っているのは知っていますね。そしてそのトップを決める決定権は生徒会にある」


んなこと知ってますよ。

だからこんな胸糞悪いことしたんじゃないですか。


副会長の回りくどい言い方にイライラしつつも俯いたまま時が来るのを待つ。


「だからさぁ、俺達にはあんたをファンクラブから降ろす権利がありまーす。つーか降ろしまーす」


マジですか? ヤッタねウッホォ!

チャラ男な会計がチャラチャラしながら言い放った言葉に思わず興奮してドラミングしそうになる。


いかん、冷静になれ私よ。

悲しそうな顔をしろ………ふへっ、ダメだ。笑いが止まらん。


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