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13:鼻血ブー


その場を去った。

去ったのだが、まだ副会長は納得していなかったようだ。


「ちょっと待ちなさい」


待ちません。

遠くから響く副会長の声に聴こえない振りを貫き、黙々と足を動かす。

大体放っておけばいいじゃん、不快な奴の事なんてさ。

関わったって余計に不快になるだけでしょ。

物好きもいたもんだ、なんて呑気なことを考えている時だった。

ガッ、と肩を掴まれる。


「あれ?」


振り向けば肩で息をする副会長。


「副会長様? どうされたんですか?」


追いかけて来ていたのか。てっきり諦めたと思った。


「ハァ、ハァ、待ちなさいと言っているでしょう!!」


だから待ちませんって言ったでしょう、心の中で。


「まだ話は終わっていません!」


怒りからか走った為か、顔を赤くさせながら私に怒鳴りつける副会長。

明らかに純日本人ではないだろう白い肌は赤く染まりやすいらしい。


「お話? 一体なんのお話ですかぁ? キャプー?」


一度とぼけると決めたならば最後まで徹底しなきゃいけない。

あえて相手を苛立たせる口調で首を捻 る。


副会長は見事に苛々した様子で脚で地面をトントンと鳴らす。

私が副会長なら確実に殴っているだろうに、意外と我慢強い。


「まだとぼける気なのですね。本当のクズだ」


とぼけるとかの前に、あなたにはなんの関係もないでしょうが。

私の方も少し苛立つ。


何故ならここは人通りも普通にある外。

運良く誰もいないけれど、もし誰かに見られればヤバい。

副会長のファンクラブはキャンキャン五月蝿いからなぁ。

その五月蝿さったら、辞めた副隊長並み。


もう副隊長だか副会長だか知らないけどさ、めんどくさい。

副ってのは面倒くさい奴がなるって決まってるのかな?


「こうなれば、こちらにも考えがあります」


だーかーらー、私が二股していようがいまいがあなたには全っ然関係ないでしょ!?

そもそも二股なんかしないし、しかも相手が吾妻なんて絶対ないし。

早くどっか行ってよ!

と、私のイライラも募ったところに更なる打撃。


「会長にこの事を報告します」


吾妻にカズ君のことを報告?

嫌な予感しかしない。あーもー面倒くさいなぁ。


カズ君のことは吾妻には話していない。

普通に恋愛話が出来る間柄ではないし、絶対嫌味を言われるに決まっている。

私のことはまぁ、お世話になっている家の息子さんなんだから何を言われても笑って受け止められるが、カズ君の悪口なんか言われた日には言い返してしまいそうだから。

だから困るんだよなぁカズ君のこと喋られるとさ。


「会長に報告して貴女をクビにしてもらいます」


だからその話題は吾妻にはタブーなんだってば。

そんなに私の首を噛み千切られるのを見たいのか。


「えっと、それは、止めてくれると嬉しいです」


悪そうな表情の副会長に遠慮がちに頼むが、お綺麗な彼の顔は更に意地悪そうに歪む。


「いいえ。もう決めました。こんな悪事、見逃せませんね」


あああ、本当にうざいこの人。

全然関係ないくせにさ。私あなたに何かしましたっけ?


副会長はハーフらしく色素の薄い瞳と髪。

それと整った顔面が夢物語の王子様を彷彿とさせるのだが、性格は神経質で辛辣。

そのギャップがいいらしいんだけど私にはさっぱり理解出来ない。

いくら顔が綺麗でも性格最悪なら魅力なんてない。

今だって王子様とは言い難い表情だし。

なんかこの人イラッと来るんだよね。

あー苛々する………落ち着け私。


「なぜそこまで私を辞めさせたいのですか? 私はアナタのファンクラブではありませんが?」


暗にお前には関係ないだろ? というニュアンスの含んだ私の質問を、副会長は馬鹿にしたように鼻で笑った。


「イチカが妙に貴女の事を気に入っているからですよ。まったく何がいいのか理解しかねますが、このまま生徒会の周りをウロウロされたのでは邪魔で仕方ないんです」


イチカ? イチカって転入生、だよね。

何? 転入生と私の接点を消したいが為に吾妻にチクるっていうの?


「もう自分から転校生に近付く気はありません。会長様には知られたくないんです。お願いします」


最後の希望のつもりで副会長に頭を下げる。

しかし彼は蔑んだ目で見下ろしてくるばかり。


「それならば最初から浮気なんかしなければ良かったでしょう。そんな人間にイチカの側に居て欲しくないですね」

「………あーもういいや」

「ん?」


ポソリと呟きを漏らすと副会長が首を捻る。

別にどうしても吾妻に秘密にしてほしい訳でもないし、彼氏持ちで隊長失格の烙印押されてクビになれば儲けもんだし。

代わりに私の首は持ってかれるかもしれないけどね!


苛々がピークだった。

今副会長の側に居るのが馬鹿馬鹿しくて仕方ない。

もうこの人は無視しておこう。

そうと決めて再び歩き始めた。


「まだ話は終わってませんよ! いいんですね、このまま会長に報告しても」

「はいはい。もうそれでいいです」


やけくそになった私は未だ喚く副会長を軽くあしらい目も合わせず歩き続ける。


「待ちなさい!」


だから待ちませんっ!

しつこいわっ! もう良いって言ってるでしょ、まだ用事!?

腕を掴まれ、私は堪えきれずにそれを乱暴に払った。


「浮気なんかじゃないってば、この馬鹿王子がっ!」


ガッ―――――


「ギャフンッッ!!?」


やってしまった。

振り払った拍子に運悪く副会長の顔に肘鉄を食らわしてしまい、鼻血が吹き出た彼は更に運悪くよろめいて滑って転んで気に頭を打ち付け………完全に伸びてしまった。


王子様が、鼻血ブーで、倒れている。

え? これって、私のせい……だよね?


ど、ど、ど、ど、どーしよー!!







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