プロローグ
社会人1年生23歳 浜中潤
普通の4年生大学卒業 の肩書き有り
資格無し
特技無し
彼女無し
書店に就職は出来たものの 仕事の目標無し
人生の目標 何となく 無難に過ごせたら良いな と言う感じで とりわけ 目標無し
そんな彼も 魔法が使えたら良いな とか お金持ちだったらな などと 思ったりする もう妄想と言うべきものである
そんな彼が 思わぬ所で 思わぬ相手に遭遇する
その相手から 説教?とでも 思うことを 受けてしまう
さて そして どうなる?
警報機のブザーが 突然鳴った
ここは 比較的大きな 駅にも近い 書店である
毎日 夕方になると 学校帰りの学生や 仕事帰りの社会人で ごった返す店内である
今 出入り口にある万引き防止の ゲートが けたたましく鳴り響き ランプが点滅している
僕浜中潤は そこの ゲートを通り過ぎようとしている 高校生2人の手を つかみ
「君たち ちょっと良いかな?」と強く言った
僕とほぼ同時に 同僚の佐野あかねも そこを通り過ぎようとした 品の良さそうな 女の人の手を 捕まえていた そして あかねは 僕に向かって
「そっち違う!!」と言い 「この 人押さえといて!」と言った 僕は言われたとおり そのご婦人の手をつかんだ あかねは 高校生に
「ごめんな 帰って良いよ 又 本買いに来てな」と言い 頭を下げた
すると 今まで品を良く振舞っていた ご婦人は
「何をするんです 放して下さい!!やらしい!!止めて!!」とわめいて 僕の手を 振り払い その場を立ち去ろうとした
先ほどまでの 上品そうな態度は もう無くなっており わめき散らす 手を振り回す 段々と口調も荒々しくなってきた
あかねは そんなご婦人に対して 冷静に
「かばんの 中確認させてもらえませんか?」 と言った その婦人は その言葉に耳も貸さず
「この人 触って来た チカン!チカン!」と叫び 手を振り払おうと 暴れていた 僕も 顔を殴られたりした
それでもあかねは 冷静に
「今 ここで お荷物を 調べさせて頂いても 構いませんが 人通りも多い場所ですし 奥のほうへ お願いいたします」と 事務的に言った それでも ご婦人は
「何するの!! いい加減放して 痛い!痛い!」と叫んでいた
その頃になると 店の入り口では 野次馬が2重3重に 取り囲んであり そのご婦人も もう逃げられない事態になっていた それでも そのご婦人は叫び 暴れていた ようやく店長も駆けつけてきて 僕と共に その婦人を取り押さえるのを 手伝ってくれた そんなご婦人に あかねは一言
「おばはん いい加減に しーや!! なめとったらあかんで!!」と どすの効いた言葉を 浴びせかけた
それには 流石のご婦人も 少しビビッて黙って振りまわしていた手を止めた そしてあかねは
「店長 奥連れて行きましょ!!」と言って 3人でそのご婦人を 連れて行った
僕は ただとにかく ついて行くだけしか 出来なかったので 一緒に行った
僕は 自分の退社時間が 過ぎているので 帰りたかったが「帰って 良いですか」と言うことも出来ず ただ 部屋に立っていた
そして 店長とあかねは 慣れた手つきと慣れた口調で そのご婦人の 荷物を調べていった
そのご婦人は何やら 文句を付けていたが そんなことはお構いにしに 調べると
文庫本 新刊本 週刊誌まで 合計5冊が かばんに入っていた
さらに 明らかに 精算が行われていない コンビニコスメやサプリメント 万引き防止タグが付いた靴下やストッキングなども入っていた
さらに 荷物を調べると どこで手に入れたのか解らないが 万引き防止タグを外す道具まで出てきた
店長は 頭を抱えながら
「あんた これどういう事か 解ってるやろな!」と低めの声で言うと ご婦人は
「そんなん 知りません」と開き直った 店長は
「あんたの カバンに 本やら化粧品やらが 勝手に入った 言うんか!!」と 怒鳴った それでも そのご婦人は
「さーね どないなことでっしゃろ」と言った 店長は
「常習犯 確信犯や 佐野君 警察呼んでるか?」と言った あかねは
「さっき レジの○○さんに 警察呼んでもらうように 頼んどきました」と言った
すると 先ほどまで 暴言を吐いていたご婦人は 態度を変えて
「店長さん 警察には 言わんとって下さい お願いします お金は有ります 払います」と 店長に擦り寄ってきた 店長は
「これ お金払って済む事や無いでしょ!」と強く言った
すると ご婦人は 店長の手を握って 自分の胸にその手をもってきて
「私 警察沙汰になったら 困ります それに主人にばれても困ります」と甘えるような口ぶりで 下から甘える目線を送りながら言った
店長は その手を振り払い ご婦人を遠ざけて
「あんたがやった事は 立派な盗みです これが警察沙汰にならなかったら 警察は仕事 無くなりますな」と 言った それでもご婦人は
「うちの主人は 仕事で部下もいっぱいいてます 名前も通ってます 主人の名前や名誉に傷が付くことのなれば 私困ります 店長さんも解りますやろ 自分の奥さんが警察沙汰になること 困りますやろ 嫌ですやろ」と 泣きついてきた それでも店長は
「もうすぐ 警官が来ます 後のことは 警察で話して下さい」と言った
丁度警官が到着した
店長は 警官にお礼を言い そのご婦人を警官に引き渡した その時 そのご婦人は 警官に連行されながらも 捨て台詞の様に
「私の 主人は○×大学の教授やねんで 偉いさんも 沢山知り合いがいてる 良い弁護士さんも知り合いにいてる 国会議員も知り合いがいてるし 大臣にも顔が効くんや おぼえときや!!」と 私たちを 罵ってきた
その後 警官はこの場で 私たちにご婦人を捕まえた時の 状況を聞いてきた
まず警官は あかねに質問をした
あかねは 捕まえた時の おおよその時刻と状況を詳しく説明した 警官も良くわかる 見事な説明であった
次に 僕が質問をされたが「はい」とか「そうだったと思います・・・」としか答えられず あかねがその度にフォローをしてくれた
最後に 店長が 質問をされ 詳しく説明を行い 警官は 私たちに
「ご協力ありがとうございました 又 後日うかがいますので よろしくお願いいたします」と 頭を下げて 帰っていった
店長は
「疲れたな 久々に あんな柄が悪いの 見たなー!」と言い 「佐野さん 又 お見事 感謝するよ」と 労いの言葉をかけた すると あかねは
「いやー 捕まえられたんは 偶然かもしれないです でもあれは 相当やってますね 常習 確信犯ですよ」と言い切った
私は その場で無言でいると 店長は僕に
「こんな仕事やってると 何回も遭遇することだから 段々と覚えることやね」と言った そして「それにしても 佐野君は万引き確保のスペシャリストやね」と感心していた
気が付くと 時間は10時30分を過ぎていた 店長は
「2人とも ご苦労さん 明日は又朝から 仕事だけど 頑張って下さいね」と 言って スタッフ通用口まできてくれた
僕は(今日の僕の勤務は6時30までなので 4時間分は残業代に付くんでしょうか?)と 聞きたかったが 聞けなかった
あかね とも通用口を出てすぐに解れ 一人で帰ることになった
空腹は 頂点に達しており 駅に行くまでに 食事をすることにした
定食を注文して 嫌な気分を吹き飛ばすために 生ビールを注文した
1杯で気分転換は出来ず 2杯目を飲んでみたが あまり気分は変わらなかった
3杯目を 注文しようと思ったが 嫌な気分の時の酒は 美味くないと思ったので 止めた
店を出て 嫌な気分は晴れないまま 駅まで だらだら 歩いた
駅の近くの通路に 居るホームレスも もう就寝している様だ
いつもの様に 駅の改札口を通った
気が付くと 駅のホームにいた
あたりを見回すと 今このホームにいるのは 僕だけの様だった
アレッ! と思って辺りを確認すると ここはいつもの乗りなれた ホームでは無いことに気が付いた
このホームは 駅の一番端にあり 長距離電車専用のホームになっている
もうかなり遅いこの時間 長距離電車も無い 昔は 夜行電車も多かったが 今は利用客も減り 毎日は運行していない
そんなこともあり ここのホームは 人が居ない時間帯も有るのだ
この時間は まさにその時間である
電車が来ることも しばらくは無い このホームに佇み
学生時代に長距離電車に乗って 旅行したことなどを 思い出して 線路を見ながら歩いていた
ふと前を見ると ホームの端で 茶色い何かが動いている
毛が有るものの感じである 犬?猫? いや 動きが違う
気になって 近づいてみる 途中にロープが張られていたが またいで 茶色いものが居た 周辺まで来てみた
そこには 茶色い毛の動物は居なくなっていたが 端に 1mも無い 小さい階段があった
僕は 好奇心から その階段を下りてみた
下っていくと 階段入り口の扉は開けっ放しになっており 左に曲がる廊下が続いていた
その廊下を 少し進むと 又右に曲がる様になっていた
薄暗い 廊下を右に曲がると 暗い廊下はまだ続く様であった
ここで 帰ろうかと 思っていると 先ほど右に曲がったところに 扉があり 中から オレンジ色をおびた 光が漏れていた
僕は 外に通じてるのか?と思い その扉を 開けてみた