表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰羽  作者: 学無
第八章
34/36

8-1

 翌日は、ベッドに縫いつけられた感覚で目が覚めた。

 そもそも昨日は、自分の部屋に帰ってくるなりベッドに倒れ込んで、ほとんど気でつするように眠った。朝起きたらなぜか布団の中にいて、布団から這い出るのもやっとなくらいには体全身がだるかった。……左手の痛みも、後から付随してきたって感じだ。

 リビングに下りて来たところで、素直に休みなさいと姉に言われ、母さんに言われて。なんか逆に反抗心が沸いてきて私は学校に行くことにした。

「おっはよー。……。アキ……?」

 いつもの曲がり角で、陽子は出会うなり眉をひそめた。相当やつれてるであろう私の顔をじっくりと眺めて、数秒間悩むように首をかしげて、最後はニカっと笑った。

「なんだよ……」

「なーんでも」

 端が下がった目を向けても、陽子は含むように笑って、腕を絡めながら寄り添う。

「なんか、憑き物が取れたみたいっ」

「代わりに、うつ病一歩手前くらいには、精神的疲労が大きいがな」

 私は呆れた溜め息をついて、けれど半ば陽子に寄りかかるようにして学校までの道を歩いていった。陽子のやわらかい感触とは裏腹に、体重を預けてもつぶれる事はなかった。ありがと。と呟くように言った。

 校門をくぐった辺りで、なにやら黄色い歓声が聞こえた気がしたが……命斗か葵でも通ったんだろうか。隣で陽子も、照れるように笑ってるように見えた。

 それから志刀や西貴と挨拶を交わし、須磨に一声かけて……全校集会に参加して。その後が記憶は実に曖昧だ。

 多分二時間目くらいに限界が来て、急に意識を失った。


 結局、今回の件は生徒会によるでっち上げと言うことで誤魔化された。

 早朝の全校集会で、命斗は〝クロハネ〟の顛末として次のように語った。

 学祭で『新・三獄話』なる物を企画していて、生徒会が三つの愉快で新しい怪談話を作り交付すると言うものだ。当日は、それにちなんだ衣装をまとった生徒が校内と歩いて回るといったものだという。それぞれの生徒にスタンプかシールを持たせて、スランプラリー的なものにしたいとも説明した。それで、考えていた一つが〝クロハネ〟で、事前に漏れたからついでにデモンストレーションにしてしまおうとかなんとか。

 そんな他愛ごとで誤魔化されるかと顔をしかめていたら、日ごろの善良のせいか、集まった全校生徒は拍子抜けという感じに破顔していた。今更だが、不公平だと思う。

 命斗は最後に、当日まで楽しみにしていてとちゃっかり宣伝をして会を締めくくった。

 若干の緊張も砕けていく帰り道、

『後二人は誰なんだ?』

『何言ってんだ、一人だろ』

『いや無理だろ、普通。誰があの二人に肩並べれるんだって』

『黒歴史だな、はは。女子じゃなくてよかったぁ~』

『けど、今朝の子とかは、結構いい線行くんじゃねえの?』

 などと、意味のわからないことで盛り上がる声を聞いて、後で痛い目見るんじゃないかと溜め息を漏らした。

 後日会長様に問いただしてみれば、嘘は実現しない時初めて嘘になる――らしい。だったら私を巻き込むな。とは、体育祭があけて、『あなたたちの衣装よ』と葵ともども呼び出された時の私が言ったセリフ。つまり命斗がぐちぐち言っていたのは始めから私を巻き込む気だったってことで。

 全く……迷惑な話だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ