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第三話・推しの音楽 謎の人物

前言:「奇妙なことに、私たちが遠くにいるとき、残してきた人々が自分たちとは全く異なる人生を送っていると想像してしまう。実際には、彼らもまた私たちのことを想像しているのだ。」——パウロ・コエーリョ『ピエドラ川のほとりで私は座り、泣いた』

バンク村は思っていたよりずっと大きかった。


正確に言うと、思っていたより「文化村」らしかった——一棟の建物ではなく、何棟も連なった複合施設だ。


中村が先頭を歩き、ガイドのように説明してくれる。「あっちが劇場、こっちが美術館。俺たちが行く書店はあの方向——」


「わかったわかった」と薫が遮る。「来たことあるの?」


「ない。」


「じゃあなんで知ってるの?」


「来る前に調べた」中村は振り返らずに言う。「お前みたいに、頭なしで外出すると思ってるのか?」


薫が蹴ろうと足を上げると、中村は予想していたように横に跳びのいた。俺は二人を無視して後ろを歩いた。


入り口の自動ドアが開いた瞬間、冷房の冷気が襲ってきて、新しい本とコーヒーが混ざったような匂いがした。


「一時間」中村が腕時計を見る。「一時間後、入り口で集合」


「なんであなたが仕切るの?」薫が不満そうに言う。


「俺がお前の先輩だからだ」中村が言う。「それに生徒会委員でもある。お前がこっそり学校を抜け出してガムを買いに行ったことをバラされたくなければ、素直に従え」


「冗談ですよ、先輩」薫は笑いながら中村の腕に抱きついた。


それぞれ散開した。薫は漫画を見に行き(神様も彼女がいつそれにハマったか知らないだろう)、中村は哲学コーナーで難しい理論を読み漁っている。


俺はどこへ行けばいい?


正直に言うと、書店に来る前にそんなことは考えていなかった。俺は周りに流されるタイプで、最初はどちらかと一緒に歩こうと思っていたが、二人の好きなものには全然興味が持てなかった。


結局、店内を適当に歩き回って、どこかで居眠りすることにした。


店内の本棚はとても高かった。肩の高さまでの低い本棚ではなく、天井が見えないほどの高い本棚だ。


当てもなく歩きながら、本の背表紙に手を触れては離す。一冊抜き取っても、見もせずに戻す。


ピアノ曲が天井のどこかから流れてきた。


最初は気づかなかった——書店で音楽が流れるのは普通のことだ。邪魔にならず、耳に留まらないようなBGMだろうと思った。


本当に立ち止まって耳を澄ませるまでは。


俺はこういう人間だ。興味のないことは一分もいたくないし、好きなことには一歩も離れたくない。


神よ、あれはまさか『ワルツ・フォー・デビイ』じゃないか!


俺は動けなくなった。口をわずかに開け、突然呆けてしまった人のようだった。表情は変わらなかったが、心の中では放送スタッフのセンスを絶賛しまくっていた。


どれくらい立っていたかわからない。五分、あるいは十分かもしれない。薫に頭を叩かれるまで。


「何してるの? もう五往復もしたよ。そんなところに突っ立って、まるで植物人間みたい」


「うっ」俺はうめくように声を出し、正気に戻った。


「何聴いてるの?」彼女も耳を立てて音楽を聴こうとする。


「ワルツ・フォー・デビイ。ビル・エヴァンスだ」と俺は説明した。


「ちっ、つまらないピアノね」彼女は首を振り、見下したように言う。「Smoke on the Water のほうがよっぽどいい」


「あらあら、うるさいロック音楽め」俺も言い返す。「イヤホンをつけてベッドから飛び降りて足首を捻った話、思い出すと笑えるよ」


「それが愛への捧げものってやつよ」薫は俺の肩を抱いて言う。「行こう、中村を探すよ。きっと今頃しかめっ面してる。今回は結構な出費になるからね」


ちょうど中村と鉢合わせた。彼の手には新品の本が一冊(何だか知らないが、彼の趣味はいつもすぐ変わる)握られていて、不満げな表情を浮かべている。


「まったくひどい話だ」俺たちを見るなり愚痴り始めた。「信じられない、考えてみろよ! たった一冊の本に三千円以上も取るだと? ここは皇居の図書室か!」


「それでも買ったんですね。先輩はいつも文句を言いながら素直にお金を払う。本当にわからないよ」


「この本はあまりにも素晴らしいんだ。美しい表紙、手触りも最高。惜しくてね」彼はそう言って本をバッグにしまった。


「二十分で一冊だけ?」薫が疑い深そうに尋ね、自分が持つビニール袋を掲げてみせる。中には少なくとも五冊の漫画が詰まっている。今季のものも、ちょっと前のものも。


「誠は一冊も買わなかったのか?」


私たちはさらに二時間バンク村をぶらついた。


中村は「選ぶのに意見を聞かせろ」と俺を呼び、薫は「漫画コーナーに付き合え」と絡んできた。


俺は二人のしつこい誘いを断った。本当に眠くて仕方なかったのだ。


「ふん、この意地悪。ゆっくり寝てなさいよ。私たちが帰っても起こさないから」


「そうだそうだ」中村もうなずく。二人が珍しく同じ意見で一致した。


三人がようやく入り口で再集合したのは、十二時半だった。


「おなか空いた」薫が言う。


「俺もだ」俺は眠そうな目で言った。


「いい先輩に付いて来な」中村が自信満々に言う。「渋谷で一番美味しいラーメン屋を知ってる」


店内で、薫は左、中村は右。湯気の立つラーメンが運ばれてくると、誰も話さず、すする音だけが響いた。


半分ほど食べたところで、中村が突然箸を置いた。


「なあ」声を潜める。「知ってるか? ビッグニュースがあるぞ!」


薫は顔も上げずにラーメンを食べ続ける。


「俺たちの学年に転校生が来るんだ」中村が言った。


俺たちは手を止めなかった。転校生なんてよくある話だ。


「京都の大きな私立学校からだぞ!」中村の口調には興奮が混じっていた。


「私立?」薫がようやく顔を上げた。口元にスープがついている。「あんなのめちゃくちゃ高いじゃん」


「そうなんだよ」中村が手を広げる。「詳しくは知らないけど、京都から転校してくるらしい。元の学校は何とか女子学院? 名前だけで結構怖い感じ。明治時代にできたらしい」


「私立のお嬢様がうちみたいな無名校へ? 笑わせるなよ」と俺。


「本当の話だ、坊や」中村が箸で俺の頭を軽く叩く。


「生徒会長から聞いたんだ。教えてやるよ、この転校生は普通じゃない。アメリカから来たんだぞ。しかも美人だって」


「ハーフ?」薫が笑う。「でたらめもいい加減にしてよ、先輩」


「もちろんでたらめじゃない、薫」中村は真面目な顔で言う。「もう先生に申請したんだ。彼女を読書部に入れてもらうように。そうすれば廃部を免れる!」


「へえ、アメリカ人?」俺は冷ややかに笑う。「ただ可愛い子と一緒にいたいだけだろう。お前の本性は見抜いてるよ」


「違う」中村が言う。


それは本当らしかった。こいつは本当のことを言うとき、決して理由をつけないのだ。


「彼女はアメリカ人だ」


「どうやって来たの? アメリカ市民でしょ」薫が尋ねる。


そうだ、それはほとんど不可能だ。アメリカ市民がもちろん公立学校を受験できるはずがない。うちの学校に海外クラスなんて高度なものはない。


「二重国籍だよ」中村がずるずるとスープを飲みながら言う。「なあ、父親がアメリカ人で、母親が日本人なら、二重国籍になる。国籍法では22歳まで二重国籍を認めているからな」


「じゃあ彼女は一体アメリカ人なのか、それとも日本人なのか?」


「さあな」中村は箸を置き、口を拭く。「彼女は月曜日の午後に部室に来る。午前中は手続きでいろいろあるんだ。お前が案内してやれよ、誠」


「なんで俺なんだ?」


「月曜日は俺は会議がある。薫はテニス部だ。担任の先生に行かせるのか?」


中村の言う通りだった。月曜日は彼は会議、薫はテニス部。先生が転校生の相手をするのは確かに適切ではない——面接みたいじゃないか。


「わかったよ」最後に絞り出すように二文字。


薫がようやく最後の一口を頬張り、もごもごと言う。「頑張ってね。良い印象を与えなさいよ。もし気に入られたら、彼女も好きになるかもね」


ラーメン屋を出た。渋谷の昼下がりの日差しは眩しくて目が開けられず、通りには朝よりも多くの人がうようよしていた。


「じゃあ、誠とは一緒に地下鉄に乗らない。まだ買い物があるから」と薫が言った。


「送ろうか?」中村が尋ねる。


「いいの、一人で大丈夫」薫は二歩ほど歩いてから振り返り手を振った。そして人混みに消えていった。


中村が俺の肩を叩く。「俺も行く。一人で大丈夫か?」


「うん」


「忘れるなよ。月曜日、部室だ」また強調する。「遅れるなよ」


「わかってる、先輩」と俺は答えた。


電車を待っている間も、頭の中ではそのことを考えていた。


ふん、転校生か。しかもアメリカ人。


面白いじゃないか。なんだか月曜日がちょっと楽しみになってきた。

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