愛情が欲しい
『愛情が欲しい』
私は本気で人を愛した事がない。カッターは付属したもの。一番肩に近い所を切る。
今は彼氏がいる。
「何でガーゼ張っているの?」
「風邪引いちゃったので」
そう言いながら、少し心は満ち足りていく。身体を抱きしめられて、私は涙が出る。
高校二年で16才である。出逢ってすぐに付き合い始めた。かなりいい顔をしているし、身体もがっちりしている。
「家出したくならない?」
「いいんじゃない。ホテルで暮らした方がいい」
ホテルで私たちは寝ている。彼氏の祖父が経営するホテルだそうだ。
この彼氏とは何時までいられるか分からない。それからの道が重ねる法則なんていらないから。私たちは縁があって出逢った。でも、逆プロポーズをしようと思った。傷ついてもいいから。この人しかいないと孤独は癒えないな。
高校二年も後一ヶ月。私はきちんと言えるかなと思った。10人の彼氏を無駄に作った。でも、心までくるまで、愛した人は、あの日出逢った男だった。今の彼氏だった。
でも、別れがくるから、声をかけるのに躊躇った。でも、一緒の電車だから挨拶を交わした。それから、何となく話をするようになった。
そして夏休みに付き合う事になり、ホテルでカラオケを楽しんでいた。それでも、傷は心から痛んだ。そして、付き合って数ヶ月でした。もっと好きになった。
銀杏を見に行った。そして、肩の傷口がいつしか忘れていた。赤さが別れの切な。黄色が別れの苦痛。そう見えた。そう思い、写真を撮った。
私はスケートのリンクで元彼の事を思い出した。スケート代を私に押し付ける奴だったが、いつも割り勘で払っていた。女は金道具にしか思えねえと言っていた。
スケートをしていると嬉しさよりも優しい気持ちになった。今の彼氏よりも全て上だった。でも、気持ちは入らなかったけど。
どうして、今の彼氏じゃないとダメなんだろう。私は彼氏の前だけ明るく振舞った。それをしたのは今の彼氏しかいない。10人の彼氏と言うより、性体験だけかもしれない。燃えるものが無い人たちばかりと付き合った。
初めて、私に合う彼氏が来たからだ。
ホテルで告げた。
「同じ大学に行けたらいいね」
「それは確かに」
「私から二人とも受かったら、プレゼントがあるんだ」
「気にはなりそうだ。二人で受かるかな」
「受かるよ。きっと」
そして、傷口が見えないまま、私は深く、浅く切れていく。心と身体は彼氏が去ったら、きっと壊れる。それ程までに好きになった。
そして、高校を卒業する。その時に、私は彼氏にリングはないけど、でも、とってもいい事まで告げる気だ。
「結婚したい」
私は同じ場所で生活できる。断れたらどうしようという気持ちは無かった。ただ傷をつけるだけ。
「俺でよければ」
そして、二人はキスをした。ラムネの味がした。
心と身体の「キス」と言うものが今日から、止めるつもりはなさそうだ。傷つけるのも、癒されるのも。陽が「二人のキス」なら、陰は身体を痛めていく。その行為。二つとも私に欠けてはならない。