ジャックの受験
田舎から上京し、魔法学園の試験を受けるジャック。しかし、あまりに火力が強すぎたため、職員室へ呼ばれてしまう。
受験生たちの声が静まり、しばらく経った頃。ジャックは暇でしかたなかった。
昼寝もしたし、本も読んだし、外の景色も見れた。もうやることはなかった。ジャックが暇だなぁと思っていると、ついに、教師のマグナスさんが戻ってきた。
「準備が整った。」
ジャックは本を片付け、マグナス先生についていった。
職員室を通り過ぎ、体育館への連絡通路。先生は靴を履き、運動場へ向かうが、ジャックの靴は職員出口(学校の先生が使う玄関)の方にあった。
先生は黙ってジャックを見つめている…。やがて。
マグナス先生 「靴は下駄箱か?」
ジャック 「はい。」
マグナス先生 「じゃあ、取ってきて。」
ジャック 「はい。」
俺は急いで職員室の方へ向かった。職員出口はその正面にあったはずだ。
俺は靴を取って、マグナス先生の方へ行く。(途中、まちがえて反対方向へ向かった。)
そして、体育館と校舎の連絡通路へとたどり着いた。
マグナス先生 「よし。」
ジャック 「すみません、おそくなってしまいました。」
マグナス先生は無言でこちらを見つめている。おそらく、早く靴を履けということだろう。俺は、急いで靴を履いた。
マグナス先生はゆっくり歩き出し、グランドへ向かう。俺は遅くなってしまった罪悪感で、なんとなく早く走って行きたい気分だった。
そこには5人の先生が居た。
さっきの教頭先生ともう一人の男性教諭、それに加えて三人。
教師の一人が言った。
「では私が。」
「ジャック君の特待措置。アース王国国立魔術学園技能試験をこれより始める。」
ジャックはなんとなく恥ずかしい気分になりかけていたが、すぐに女性の先生が言った。
ルネ先生 「ではジャック君、こちらへ」
俺は的の前に立たされた。俺がルネ先生の方をチラリと見ると、ルネ先生は微笑んだ。
ジャックはなんとなく気恥ずかしいような気持ちになりながらも、試験に集中した。
的との距離は15メートルくらいか?だとすればウォーターボールでも効果はある。しかし的を破壊するクラスの魔法なら、ウォーター・ジェットが適当だろう。
「水よ集え。ウォーター・ジェット」
空気中の水の粒子が集まり、一本の流れを作り出す。まるで炎から煙が上空にのびるかのように、スッとそれは的へと行く。
一瞬で的に窪みができ、みるみる深くなって、小さく光が見えだす、向こう側に貫通したらしい。
ジャックはそのタイミングで魔法を中止した。俺は教師の方を見るが、なんとなく呆れ顔に見える。なぜだろうか。
やがて、一人の教師が言った。
「えー、新しい的を用意しましょう。」
教師陣は、さっきとは一転、なんとなく楽しげに倉庫へと向かっていった。
なぜか取り残されたジャックだったが、試験中なのもあり、動いていいのかわからなかった。
こうして取り残されると、遠くから響いてくる部活動の声がよりはっきりと聞こえてくる。
教師陣が戻ってくる。何か雑談をしながら戻ってきているようだったが、内容は良くわからない。動けないこっちの身にもなってほしい気持ちは山々だったが、今は試験に集中しなければ…。
的が用意されると、一人の男性教諭が俺の横に立った。
ソラン先生 「私はソランです。岩魔法の試験をはじめましょう。では、どうぞ。」
ジャック 「もう撃っていいんですか?」
ソラン先生 「はい。」
俺は岩魔法を詠唱し、的を破壊した。今度は指向性が高い攻撃魔術ではなかったので、的は粉々になった。(水魔術などの場合は穴が開く。)
ソラン先生 「これで試験は終了です。」
教頭先生が近づいてきた。
「もう帰っていいよ。」
「えっと、合格なんでしょうか。」
「うーん、それは今はなんとも言えないかな。でも期待して待つことをお勧めするよ。」
教頭先生はじっとこっちを見ていた。ジャックは何も言わず、トコトコと歩き出し、手を振った。
先生陣は手を振り替えした。
教師陣 「また会えることをお祈りします。」