追跡の結果
ブルトンを追って洞窟の中に入ったレイノス達は、その簡単な構造に驚きを隠せないようだった。
一本道なのだ。
レイノスの思い描いていた洞窟は、分かれ道が幾数もあり簡単には最深部に辿りつけない構造なのだ。レイノスが魔物だったときにたくさんの洞窟や遺跡を見てきたが、そのどれもが侵入者を迷わせる仕掛けが施されていた。
しかし、この洞窟にはそれがない。
レイノスは得体の知れない恐怖に襲われた。なぜなら、この一本道は人工的に造られたものなのではないかと思ったからだ。
侵入者を最深部に早く辿りつかせることが目的に造られたもの。
レイノスにはそう感じてならなかった。
「……なぁ、ダニッシュ。お前はこの洞窟の構造、どう考える?」
「そうですね……普通といえば普通なんでしょうか。私はレイノス君とアンナさんに出会う前は、よくこのような洞窟や遺跡に入っていましたが、そのどれもが複雑な構造をしていまして。でもそれは、最深部に何かが隠されている場合だったのでそういう構造になっていたのでしょう。多分、この洞窟は自然にできたのか、はたまた人工的に造られたのかわかりませんが、多分は最深部にいちはやく着けるような構造になっているんでしょうね」
「そうか……」
やはりダニッシュも、レイノスと同じ考えだった。
その考えから、これは罠ではないかという疑念が浮かぶ。
なら、どうするのか。このまま危険そうだから引き返すのか。それともこのまま歩き進めるのか。
レイノスが選ぶ方は決まっていた。
「よし、このまま進もう」
レイノス達は、先に進んだ。
「なんで、魔物がいるのーー!!」
洞窟にアンナの叫び声が響き渡った。
「ひぃぃぃぃぃーー!!」
洞窟にダニッシュの絶叫も響き渡った。
「ちっ……やっぱり罠だったか」
洞窟の最深部にはすぐに着いた。それはもうあっけなく。
しかし、最深部にいたのは追っていたはずのブルトンではなく、一体の獣だった。
ぐるる、と低い唸り声を出しながら、レイノス達を睨みつけていた。その瞳には明らかな敵意が宿っている。肉体は薄茶色の毛で覆われており、口からは鋭い牙が二本飛び出ていた。
「……やるしかないか」
獣の様子を見て、レイノスは背中にさげている剣を手にする。
レイノスがあの夜空の下で決断した時から、レイノスは迷わないと決めた。自分の考えたとおりに行動し、自分の目的を果たすために。
裏切ったフェルメスを殺すために。弟だというソージアと向き合うために。そして、自分がもとの姿に戻るために。
「いくぞアンナ、ダニッシュ!」
「わかったよ!」
「え、私も戦うんですか!? こ、怖いです……」
レイノスの決意のときから、初めての戦いが始まる。