サロンの町
「ふ~ん、ふふ~ん」
鼻歌混じりに歩くご機嫌な少女。その隣には、疲れた顔をした金髪の少年。
「なんで、そんなに元気ないの? 旅だよ、旅。楽しんでいかなきゃ!!」
「……はぁ~」
「もしかして疲れたの? だったら休む? ねぇねぇ、私、今軽く食べられるものなら持ってるよ? えーとね……」
「……休まねーし、食事もいらん」
「そう?」
そう言って、アンナは出そうとした軽い食事をバッグの中にしまった。
今日の朝から、ニ人はこんな感じである。
~昨日の晩~
「私も行くわ!」
アンナがそう言い放った。
当然、レイノスは反対する。
「なんで、お前がついて来るんだよ。さっき会ったばっかだぞ。初対面だぞ? 正体不明の男だぞ? なにが起きるか分からない、危ない旅だぞ。お前死ぬかもしれないぞ? てか、絶対死ぬ。断言する。だから、お前はついて来るな。分かったな!!」
レイノスはそうやって早口でまくしたてる。
はっきり言って、レイノスにとって女連れなど、とても恥ずかしい事なのだった。それに、レイノスは複数での行動に慣れていなかった。いつも、戦闘は自分一人でやっていた。だから、アンナが邪魔だと思ったので、必死に拒んでいるのだ。
いつもの、レイノスだったらすぐさま殺しているが、今は人間の体………。
どうしようもないのだ。。
「とにかく、ついてくるな! 俺はもう寝るから出てってくれ」
そう言ってレイノスは布団の中に入り、壁際の方を向いて寝た。
しばらくしても、アンナは出ていこうとせず座ったままだ。
「おい、出てけって言ってんだろ!!」
そう言って、レイノスはアンナの方に振り向いた。
「!?」
そこには、ぼけ~っとした顔をしたアンナがいた。時折笑いがらなにかを呟いている。
レイノスは布団を抜け出し、アンナの方に近づいた。
すると、アンナの呟きが、微かに聞こえる。
「外の世界……色々な物……王子様……」
アンナは王子様と呟くと、照れるように身をよじらせた。
「………」
レイノスは引いた。
完全に引いた。
レイノスはアンナの方から離れるように後ずさる。
しかし、後ずさるレイノスの肩をアンナは掴んだ。
「ひいっ!!」
レイノスは思わず間抜けな声を出してしまった。魔王といえど十五歳の少年である。ましてや今は力が無い。目の前の恐怖には素直に反応してしまうのであった。
「レイノス……」
「な、なんだ……?」
アンナはさっきよりも決意を持った目で
「危険な旅なら、なおさら連れてってよ。私の方があなたより強いし、危険から守れるわ。なにより、冒険は複数が基本なんだよ? だから、私も行くわ。……王子様~」
そう言って、アンナはまた、ぼけ~っとした顔になっていく。
「い、いやでも……」
「連れていきなさい」
「は、はい!!」
アンナの妙な迫力に、はい、と答えてしまったレイノスは自分が嫌になった。
それにレイノスは、自分の口調が少し幼くなっている事に気付いた。
そんな自分がとことん嫌になり、
「寝る……」
と言って寝てしまった。
「お休みなさ~い」
上機嫌なアンナは部屋を出て行く。
窓から刺す月明かりを浴びながら、レイノスはずっと、はい、と言ってしまった自分を恥じていた……。
そして今に至る。
「はぁ~……」
レイノスはいまだに落ち込んでいるのであった。
「ほらほら~、もうすぐサロンの町だよ? いい加減に元気だしなって~」
「うるせーな、誰のせいだと思ってんだよ……」
二人がそう言い合っている内に、道の端にあった木々が少しずつ無くなり、サロンの町が見えてきたのであった。
「ほらほら~、着いたよ。サロンの町にさ~」
「ここがサロンの町……」
レイノスは自分が魔物に戻る方法を探しに旅をするつもりであった。しかし、戻る方法を探すと言っても、なにをすればいいのかまったく分からなかった。
「レイノス~。早く早く~」
少し先にいるアンナは待ちきれない様子でレイノスを呼んでいる。
「まぁ、ここで考えててもしかたねーか」
そう思ったレイノスはアンナと共にサロンの町へと入った。
「なんか、騒がしいね~」
アンナが言うとおり、町は熱気に包まれており、町の人々が町の中央にある大通りに集まっているのである。人々はみんな手に旗を持っていた。旗の全てを人々は振っており、何かを歓迎するかのような光景だった。踊っているものもいれば、歌っている集団までいる。
「なんの騒ぎだ?」
「分からないよ」
アンナも分からない様子だった。
小さな町でこんな騒ぎになる事が人間にはあるのか? と、疑問に思うレイノスであった。
「ちょっと聞いてくるね」
そう言って、アンナは近くの人に何があったか尋ねに行った。
そして、五分程たち、アンナが帰ってきた。
「なんかね~、英雄さんがくるんだって~」
「英雄?」
まさかと、レイノスは思った。
すると、人々の歓声が強くなった。
「きゃー、こっち見てー!!」
女達は騒ぎ
「お前こそ男の鏡だー!!」
男達も騒ぐ。
そして、道の中央。
神輿のようなものに乗った一人の男がいた。
その男を見たレイノスは怒りが沸沸と湧き上がった。
「あ、あいつ!!」
「どうしたの? レイノス?」
そう。
あの男は……。
フェルメスに命令され、レイノスに光の球の魔法をかけた男なのだった。
第三話目です。
とても疲れました。小説書くのがこんなに疲れるとはしりませんでした。でも、とても楽しいです。
これからも書いて行きますので、どうか呼んでくださっている皆さん。飽きずに最後まで呼んで下さったら嬉しいです。