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無力な魔王と能天気娘  作者: 青空の約束
旅立ち編
2/82

助けてくれた少女

 サウスリア。

 それは昔、人間と魔物が共に暮らしていた大陸。人間と魔物はお互いに助け合い、それはとても幸せな光景だった。

 しかし、いつしか人間と魔物は争いが多くなり戦が起こり始めた。

 我々はその争いの醜さに、サウスリアの北にある小さな島へと移住する事になった。争いは長く続き、ずっと終わらないと我々は思っていた。

 しかし、我々の仲間の一人が魔物の王に話をしに行くため、サウスリアへと渡る。彼女が王の元へと足を運んだ数ヶ月後、魔物の人間に対する攻撃は少なくなり、争いは徐々に減っていった。

 我々は二度と同じ過ちが起こらぬように、高い塔を小さな島に建てた。

 そこで、我々は長年ずっと、サウスリアを見守っている。

 ずっと…………

 ずっと……




 レイノスが気絶してから、三時間程経とうとしていた。外は陽が沈み、空が暗くなっている。

 レイノスが目を覚まさないでいる間に、少女は料理を始めていた。

 火の魔法を使い、鍋の下に火をおこすと、中に入っているにんじんやじゃがいもを煮ていく。今日はシチューなのだった。

 シチューを煮ながら、少女はレイノスの事を考えていた。

 レイノスを見つけたのは、少女が山菜を取りに行った森の中にある、大きな杉の樹の下だった。その木の根元には沢山の山菜が、いつも生えているのである。その山菜を取りに行くのが少女のいつもの日課だった。

 少女がレイノスを見つけた時には、レイノスの体には無数の傷があった。少女は、急いでレイノスを魔法で家まで運び、部屋へ寝かせた。そして、レイノスは目覚めたのだが……すぐにまた気絶してしまったのであった。

 少女は最後にレイノスが言った、人間に見えるか、という言葉を不思議に思っていた。

 しかし、少女は考えるのが嫌になり、

「まぁ、いっか」

 と言って、料理に集中した。

「ふ~んふんふんふふ~ん」

 少女は鼻歌を歌いながら鍋をかき混ぜる。

 鍋の横には、お粥が盛られた皿が置いてある。

 さっき彼の部屋に持っていったのは、そのお粥であった。

 もったいないからと言って、少女が残しておいたのだった。

「なんか、元気そうだったし、シチュー……食べてくれるよね」

 少女はお玉でシチューを掬い、味見をする。

「うん。上出来~」

 そう言って、テーブルに皿を準備し、レイノスが寝ている部屋にいく。

 すると、レイノスは起きていた。

 しかし、表情は暗く、なにか思いつめたように窓の外を見ている。

「どうかしたの?」

 少女がそう尋ねても、レイノスは無視をする。

「お~い。ご飯ができたよ~。美味しいよ~」

 しかし、レイノスは、少女をまたも無視する。

 そんなレイノスの対応に、少女は不満だったのか、少女はレイノスの頬をつねり、少し怒ったように

「無視しないでよ~」

 と言った。

「いた、痛い痛い痛い痛い痛~~い!」

 レイノスは少女のいきなりの攻撃に、悶絶した。

「もう、無視しない?」

「分かった。分かったから! い、痛い、は、早く離せ」

 少女は満足したのか、レイノスの頬を離した。

「な、なにすんだよ、お前!」

 レイノスは何故つねられたのかわからなかったようで、とまどいの表情を浮かべながら少女を怒鳴った。

 しかし、少女は意にもかいさず答える。

「無視するからでしょ」

「なんで初対面のお前にここまでされなきゃいけないんだ!」

 そう言うと、レイノスは少女に掴みかかろうとした。

 少女は咄嗟に頭を庇った。

 しかし……

 レイノスは少女に何もしなかった。

 少女はレイノスの方をちらっと見た。そこには暗く重い表情をして、今にも泣きそうな少年の顔があった。

 そして、レイノスは呟く。

「……今の俺は人間と同じか。魔法も使えないなんて。……くそ」

 そう言って、またレイノスは布団の中に入ろうとする。

「ちょっと、ご飯だって言ってるでしょ!」

 そう言って少女は、レイノスを無理矢理布団から引き剥がした。

 そして、食事の席まで運ぶ。

 その間レイノスはずっと暗い顔のままだった。

「ほら、暗い顔してないでさ。ご飯食べれば元気出るって」

 そう言って、皿にシチューを盛る。

「……いらねーよ」

「いいから食べなって。食べれば元気――」

「いらねーって言ってんだろ! なんで、魔王の俺がこんなもの食わなきゃいけねーんだ!」

 レイノスはそう言って、シチューが盛られた皿を床に叩きつけた。

 室内に皿の割れる音が響き渡る。

 そして、床には無惨にシチューがこぼれた。

 レイノスはこぼれたシチューを見ながら、息を切らしていた。そんな中、アンナは割れた皿とこぼれたシチューを見つめうなだれていた。そして、

「……めでしょ」

「はぁっ、はぁっ……あっ?」

「食べ物粗末にしちゃだめでしょ!」

 そう言って、彼女の右手から風の刃がレイノスに向かって放たれる。

「うお!?」

 そうして、レイノスは壁まで吹き飛ばされ、気絶してしまった。



「落ち着いた?」

 少女は、レイノスが寝ているベッドの横に座っている。

「……お前魔法使えるんだな」

 すると、少女は少し怒ったような顔して

「お前じゃなくて、アンナって名前がちゃんとあるの。以後お前禁止ね」

 アンナはそう言いながら、レイノスの手当をしている。

「あなたの名前は?」

 アンナはタオルの水を絞りながら、レイノスにそう聞く。

「……レイノス」

「レイノスね。今度からそう呼ばせて貰うわ」

 アンナは傷口を消毒しながらそう言う。

 すると、アンナは何か思い出した顔をしてレイノスに聞いた。

「そういえばレイノス、さっき魔王とかなんとか言ってなかった?」

「……なんでもねーよ」

「ええ、気になるよ~」

「いいだろ、どうだって……。ところで、この近くになんか町みたいなところはないのか」

 レイノスはアンナが聞いてきた話題を避け、話題を変えた。

「町か~、あまり外行った事ないからな~。ここからだとサロンの町が近いかな?」

「そうか……」

 すると、アンナは傷の手当をやめた。話をしている間に傷の手当は終っていた。

「はい、終わり」

「お、おう」

 アンナは救急箱を片付けると、またレイノスに話しかけた。

「それで? サロンの町に行ってどうするの?」

 レイノスはその目的は言わずに、

「世話になったな。俺は明日出て行く。俺にここまでの事をして生きていられるなんて運が良かったな」

 すると、アンナは顔を輝かせて、

「私も行くわ」

 と言い出した。

「ふ、ふざけるな! 調子に乗るのもいい加減にしろよ!」

 すると、アンナは真顔になり

「怪我人を一人にさせるわけにいかないでしょ。それに……」

「それに……?」

「冒険でしょ? 私、旅に出るのが夢だったのよ!」

レイノスはこの言葉を聞いて、この女ばかだ、と心の中で呟いたのであった。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 ニ話目を書いて見ました。小説書くのは難しいと今感じております。まだまだ序盤で話が盛り上がっていませんが、どうか飽きずにお読みいただけたら嬉しいです。これからも頑張って書いていきますので、お読みになっている皆さん。どうか、よろしくお願いします。

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