第94話 まだわからぬ将来のためにも
ブランコに並んで腰掛け、漕ぐこともあればたわいもない話をすることもある。
現実に戻っても、高校生の柘榴と刑事の貫とでは過ごす時間も生活も違いが多い。けれど、その生活の間で少しでも共有出来る時間が出来て嬉しくもある。
望んで望まれて、互いを尊重し合えるからこそ……歳の差はあっても、恋人になれたかもしれない。まだまだ柘榴は未成年だが、狭間で得た経験と知識は夢じゃない。
亡くなった実の両親からも、妹を受け取って今の生活がある。大変だが、不知火もいるからひとりじゃない。多くに助けられ、のびのびとした生活を送れるのだ。それでいいのだと、焦り過ぎた以前とは全く違う。
「いーずるっ」
ブランコの距離がもどかしくなると、ぴょんという感じに貫へ抱きつくのもいつものこと。夜手前だけど、警察官な彼氏がいるので多少いちゃついても抱き止めてくれる。懐が意外に暖かく、そろそろシチューやスープが恋しくなるシーズンだと浮かんでしまうほどだ。
「冷えてきたか」
「くっついていたいだけ」
「……公共の場で言うなよ」
「ちょっとだけだよ。貫の服装じゃ、刑事に見えないでしょー?」
「……まあ、わかりにくくしてきたが」
クールビズからのネクタイなし。あと動きやすい服装にジャケット。十歳くらい離れているが、柘榴も普段着に着替えているので外見だけなら歳の差カップルにしか見えないはず。
「椿姫、普通に大きくなるのかな?」
「死人同士の子どもでも……閻魔大王が補佐したならそうだろ」
「じゃあ、貫のとこへお嫁に行く時は……あの子小学生か」
「そんときゃ、お袋らが面倒引き継いでくれんだろ」
義理の妹よりは娘くらいの歳の差であれ、柘榴を独り占めしたい気持ちは人一倍以上あるようだ。それが嬉しく、さらに抱きつくと顎を軽く持ち上げられ……唇が重なる。やり過ぎるとセーブが効かないので数回程度。
いつも名残惜しく感じるが、誰もいなくてもこれくらいでいつも終わらせている。
それと、腹にはある程度と夕飯は食べたらしいが。まだこれから夜勤もあるので憂鬱だと愚痴をこぼしていた。
「うちで食べてく? 適当なのでよければ」
「お? 椿姫の顔も見てくか。泣かれなきゃいいが」
「基本、貫の顔怖いもんねー」
「……彼氏に言うことか?」
「初対面での感想だものー」
誘拐されかけた時の顔は朧げでしかなかったが、狭間であったときは震え上がったものだ。それが今では恋人同士など、最近はあまり連絡を取り合っていない夜光との出会いでは……誰が予想しただろうか。誰も予測してはいなかったはずだ。
夜光自身はそうでなかったにしても、だが。
次回は木曜日〜
最終回です




