第86話 『永遠(とわ)』のこれからを
お待たせ致しましたー
「じゃあ、マスター? 勝手に自己完結はしないでね?」
今後の生き方があらかた決定したとしても、柘榴は貫と今後過ごすことを決意はしても。夜光への申し出は忘れていなかったので、不思議そうにしている彼の前に立ってからすぐに腰を折った。
まだ感情の復活が曖昧だった、狭間に来たばかりの時のように。きちんと申し込みをした時のあれと同じだ。その所作に、貫が近くで苦笑いする気配は伝わってきた。一応彼には先に申告しているので、そこはわかってくれてはいるものの。本当に、この申し出をするのかとは念入りに説明を求められたからだ。
「うん? その行動は?」
「……今後も、現世とここを行き来させて。弟子の解任はやめてほしいの」
「……正気かな?」
「当然」
顔を上げても、その決意は変わらない。いずれ、肉体は滅ぶ期限はある。不知火と違って素材の完全体ではなくなるし。紅霊石の血筋は残っていても、貫が告白のときに言ってくれたように『長い不死』の生活が待っているのには変わりないのだ。
なら、今のうちに狭間との生活も慣れておくべきだ。妹となる椿姫もどれくらい長く生きるかも不明だ。その後見人に近い身内となるのなら、魔法の素質も残るとすれば『修行』を続けるしかない。
不知火も、もしかしたら肉体を得ることで『死ぬ』かもしれないのだ。万が一、があってからでは遅過ぎる。柘榴が貫との子どもを産んだとて同じだ。それなら、覚えたてのうちに鍛えておくべき。その決意を夜光に改めて伝えれば、何故か煙が彼を包んで『全く違う人物』の登場となった。
何回か見た『ロマンスグレー』の老人ではない。むしろ、不知火くらいに若々しく、何故かひな人形のお内裏様が着るような服装をしていた。当然、知らない呉羽も含めて、口が開いてしまう。
「……やれやれ。神のかけらにわざわざ申し込みとやらをするとは。弟子継続かい?」
「……だ、れ?」
「ま、すた……??」
声だけはそのままだが、どうも年齢詐欺に見えて仕方がない。態と声はそのままにしているにしても、他の誰も驚かないのを見る限り。笑理もその正体を知っていると言うこと。慌てて駆け寄って、スーツの襟を思いっきり掴んだ。
「誰!? あれ、誰!?」」
「そりゃ、柘榴には黙っとったんに? 今『神さん』言うたやろ? もともとは別の種族のままやけど、色々あって『かけら』取り込んだらしいんよ。柘榴と呉羽にわかりやすく言うんなら……『天神さん』?やっけ?」
「そーそー。本霊は京都や大宰府にある『天満宮』の御祭神やで~?」
「補足説明、ありがとう」
「「はぁあああああ!!?」」
なにが、どーして。著名人が『神格化』した一部を取り込んでいたのか。ツッコミ箇所は多々あるが、ここまで偉大な存在とやらに『馴れ馴れしい』真似を呉羽としてきた。今の申し込みも含めて、大それたことを仕出かしたのではと焦っていれば。頭に慣れ親しんだ大きな手が髪を撫でてくれたのだ。
「落ち着け。外見はあれだが、中身は『マスター』のままだ。いつもの感じでいーいんだよ。ふてぶてしい態度を今更改めても、あの人はあの人のままだ」
「………だいじょ、ぶ?」
「本霊の意識のままだったとしても、フランクだろ? なら、いーんだよ」
ほら、と夜光だった『天神様』に目線を戻せば。顔は美形のままでも、笑顔は『夜光』とよく似ていた。根本的なところが変わらないのならば、そこは貫のままでいいのかもしれない。
存在の大きさはともあれ、本人が許可しているのなら。柘榴の申し出も断るどころか『継続』と言ってくれたのなら。柘榴はまだ『夜光の弟子』のままである。助手は交代していても、陸翔の方も。
少数精鋭で、罪人を正しく冥府に送り届ける手助けは、『宝石料理』を作れる存在のみ。笑理はまだ一度も作れていないし、適応出来るかも不明だ。夜光ひとりで背負うには大きいために、この秘密を打ち明けてくれたのかもしれない。
そのため、柘榴は正気に戻っていた呉羽と目配せしてから。貫たちが唖然とする勢いで、『女子高生のやり方』で今の夜光へ悪戯をすることで驚きなどを許すことにした。
具体的には、柘榴が瞬時に創り出した『蒼のクリームパイ』をパイ投げの要領で夜光の顔面にぶつけたのだ。
ある程度予想していた彼なのか、それを甘んじて受け止めてくれていた。
明日はきちんと更新出来るように……




