表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/95

第82話 身内事情はまだまだ終わらない

お待たせ致しましたー

「あのね、柘榴(ざくろ)



 不知火(しらぬい)のこれからの処遇がひと通り進みそうになるのに、安心したところ。まだ、滞在許可が出ているのか母たちはそのまま狭間に居続けていた。おそらく、そろそろかと覚悟していたのだが。



「……お別れ?」



 これ以上泣かないために、出来るだけ明るく振る舞っていると。振り返ったあとに、その装甲が崩れていく感覚があった出来事が目の前に。何故なら、若い姿のままの両親が何故か恋したばかりの時間軸まで戻ったかのように。仲睦まじく腕を組んでいたのだ。何か報告があるにしては甘すぎる雰囲気で、正直驚きを通り越して変な感情が生まれてしまった。



「あ、うん。それは合っているんだけど」

「……実は、な」



 父の方まで照れているのは何故か。そして、この雰囲気には若干覚えがあった。そう、母が入院していたあの頃に別の個室で聴き取れた患者の会話。それは、たしか。



「あの頃。実は妊娠してたの。その命が……お父さんが獄卒になったことで認めてもらえて。けど、いきなりあの世で産むわけにはいかないし……閻魔様には許可をいただいたんだけど」

「け、ど?」

「……いきなり、お姉ちゃんとお母さん代わりに……なってもらえない?」

「なんで!?」



 戻ってきていた(いずる)も聞いていたために、あまりの内容に開いた口が塞がらないのは無理もない。しかし、まだいた彩葉(あやは)が母のところに行き、すぐに手を取って承諾をしてしまっていた。



「任せとき! うちもまだ息子しか育ててへんけど。事情持ちやったらうちんとこで育児のフォローはしたる!! 結婚とかはまだだいぶ先やけど、育児の経験にはちょうどええしな! ましてや、弟くんか妹ちゃんなら柘榴ちゃんも寂しない!!」

「……お袋」

「……彩葉、さん」

「なして? あのおじい様以外にも家族出来るねんで? 身内増えとくのはええことや! 独り立ち前に、不知火(しらぬい)様がそこんとこの世話もしてくれると思うで」

「おー! いいぞ~!!」



 少し離れたところで、詳細は届いていたのか不知火は承諾していた。


 楽観的なのか、単に孫がもうひとり増えることが嬉しいのか。どちらにしても、生き返ったら生き返ったらで大変な出来事がまたひとつ増えてしまうだけだ。しかし、本音は否定の感情が一切ない。忘れ形見になるかもしれないが、『弟妹』が出来るのは嬉しかった。ほとんど自分の子どもに近い存在だとしても、きちんと『血の繋がった家族』が出来るのは嬉しいものだと。


 母が亡くなったあの当時なら大いに否定していただろうに。感情を取り度した今では、こんなにも違う思いが芽生えるとは。ただ、貫が止めに入っても止まらない彩葉のマシンガントークで育児についての会話が弾むのは、流石に止めに入ろうと考えるのを中断したが。



「え~~? (もも)ちゃんともっと話したい~!」

「柘榴と一旦別離すんだから、親子水入らずの時間作れ!」

「……ちぇ」

「ガキか!?」

「ふふ。リアルのお義母さんは、賑やかな人ね?」

「……まだ、居候も正式に決まってないよ」



 とりあえず、性別はもうわかっているらしく。


 椿姫(つばき)と名付けられた妹が、二か月後には現世へと転送されることが決定したのだった。



次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ