第80話 解決はあっさりがいいか
お待たせ致しましたー
浅葱は、送迎を終えてからの感想が『これでいいか』と初めて抱いたものだった。宿敵だと、就職してから上司らに散々言い聞かせられていた相手を冥府へと送迎したと言うのに。
植え付けられていた『憎悪』は不思議と沸いてこず。あったのは、安堵でしかなかった。結局、内情を深く知らずしての調査だったなと己の愚かさを知るだけ。上は知っていたとしても、報告書にはどう記載すべきか。あとから浮かんできたのは事務的な処理問題の面倒さだけだ。
「悔しいねぇ、駿くん」
「……ええ。こんな感情を抱くとは思いもしませんでした」
送迎は常に作業であれ。そう指導され続けて、数十年幾度も送ってきたのだが。就任したての研修時代に、戻った頃の虚しさしか残らないとは。駿も同じとは、妻の宿敵でもあるのに、実際目にした光景を思うとその感情しか浮かばなかったのならば。互いに性質は違っても似た者同士と言うことか。
夜光にも、事実上はかなり利用されていたがそれについては今更だ。こちらも彼らをかなり利用し尽くしてきた。ギブアンドテイクとやらは今更でしかない。浅葱よりも、上司らが長年それを搾取してきたようなもの。
それを、浅葱らが模倣してたとしても、あの御人はそれを承知の上で実行していた。結局、神のかけらを取り込んでいる神霊に近い存在にかないっこないのは当然。後味は残るものの、予想していたよりは清々しいものだ。
ハッピーエンドの演目の一つであるのなら、浅葱には好ましい終わり方だったが。
「さて、上の連中の説得材料は少ない。向こうも後処理は相当だろうが……面倒だ、あれは任せておこうか?」
「同感です。俺たちが一辺に背負うのは酷く面倒です。彩葉さんの手料理でも食べて、あとはゆっくりしたいくらいですよ」
「ははは。それはいい。僕も久々に晩酌メニューをお願いしたいよ。……そうだ。せっかく、柘榴ちゃんが事実上貫くんの婚約者になったんだ。こういうときは保護者候補として、結納の日取りくらい決めていこうか?」
「……まあ、俺も挨拶してきます。まさか、閻魔大王のご厚意で席が叶うとは思わず」
「彩葉くんは、さすがに間に合」
「来たで!!」
「「わ!?」」
どこかで気配でも察知したのか、本当に彩葉が息切れながら転移してきていた。そして、夫の腕を掴んで急いで息子らのところへと駆けだす。とにかく、両家挨拶の時間がないのだからそれくらいしても不思議ではない。素材にされた極悪集団の壊滅を、魂魄の縁のみで察知したにしては速過ぎるが。もしや、と不知火に目線を投げてみると。
『当然や』
と言わんばかりに、浅葱へニヤついた視線を既に寄越していたのだった。してやられたとは、やはりこのことだろう。
どれだけ、優しい終焉を迎えることが出来たのだろうか。壊滅に追いやられた刻牙の末路とやらは。生き残りは笑理のみでも。正式な手続きと後任の助手がいなければ狭間は維持できない。
『罪人』がいる限り、仲介地点のここは無くてはならない異空間なのだから。
次回はまた明日〜




