第79話 あっけないのは、こちらも
お待たせ致しましたー
笑理は想像以上の呆気ない終わり方が、虚しくて仕方がなかった。結局は、紛い物の集合体。あの教祖とやらが、どれほど愚かでどれほど哀しい生き方しか歩んでこなかったのかを。
笑理を殺しかけ、柘榴を直接素材にしたあの男も。生き方が違えば、生まれ方を間違えなければ。素直に生きる道筋を歩めたかもしれない。最期だけ笑うだなんて卑怯過ぎる。一抹の想いを、そんな瞬間に芽生えさせるあざとい行為でしかなかったのに。
(難儀やんなぁ? わっちらの生き方……どこでズレまくったん?)
生まれ方。
魂魄の宿り先。
選べない生き方。
どれもがかみ合わなかった顛末でしかない。
なんて、なんて、世というものは無情で終わるしかないのか。それなりに長く生きてきた笑理ですら、そんな考え方が浮かぶほどだった。
利用して利用されてきた生き方しか出来なかったのに。はじめて、『ここがいい』と、夜光のところへ面白半分部下になりたいなどと告げたことがきっかけで。
急展開過ぎる勢いで、呆気なく終わってしまった。生き永らえるとは違うかもしれないが、存在し続けていい場所が出来。これまで利用していた彼らに、実はこちらが利用されていたことも。
あの愚かな元上司とやらが、どこまで性根が腐っていたのかを知った今。
叶わない恋とやらを、相手が死ぬ直前に自覚した己の心が虚しくて仕方がない。こんなにも虚しい気持ちを、笑理は自覚せず被害者たちにさせていたのか。こんなにも、無情でしかないのか。
叶わないことなど、ほとんど諦めてきた自分自身が。はじめて、『嫌だ』と思ったと言うのに。冥府に自分が逝けど、会える保証はない。あちらは笑理以上の罪を犯してきたのだ。ほとんど、躊躇いもなく。
「……きっちぃなあ?」
するんじゃないとか理屈ではない。柘榴や呉羽らに散々教わってもここまで感情が追い付かないとは。芽生えた感情の尊さと虚しさが綯い交ぜになった今を、どう受け止めていいのか。
二代目の管理人助手になっても、これから多くの罪人を導かねばならないのに。選択を誤ったかと思うくらい、感情が溢れて止まらない。
涙が止まらないでいると、頭をなにかで殴られた衝撃があった。
『なーに、悲観くれとるんすか? らしくないっす』
「……れ、お?」
魂魄でしかないが、チャラい口調と呆れた物言い。今にも消えそうなほど、形態を保っていないが。あの瘴気などは全て取り払われていて、笑理の前に浮いていた。衝撃はおそらく、残っていた魔力でなにかを操作したのか。
『まーったく。あの始祖様にこれくらいの時間もらったんすよ? 最後くらい、あんたらしい見送り方してほしいっす』
これから地獄でも最下層へ堕とされるだろうに、相変わらず軽い言い方。態とにしても、それくらいの感情をこの男が取り戻したのなら。
笑理も、今なら伝えられると声を上げることにした。
「わっち、あんさんのこと結構気に入ってたんやで? そりゃ、殺されそうになったけど……あんさん刺そうとしたときにわかったやろ? そーゆーことや。地の底にはどーせ逝く運命やし……気長に耐えや」
『……相変わらずぅ』
こんなやり取りを残せば、あちらでの苦痛も幾らか紛れて欲しい。その感情が伝わったのか、彼はいつ来たのか浅葱らによって送迎されていく。石の加護は既に受けていたのか、自分らが奪ってきたあの紅い煌めきを残して冥府へと送られたのだった。
次回はまた明日〜




